| 翌日、全体練習が終わって一旦家に帰り、また学校に向かう。 「黒子くん」 体育館の入り口から声を掛ける。靴を脱ぐのが面倒くさい。意外とものぐさなのだ。 「あれ、さん。帰ったんじゃないんですか?」 そういいながら練習の手を止めて黒子がやってくる。 「これ、アイロン掛け終わったから」 そう言って少し大きめの袋を渡す。 不思議そうに黒子がそれを受け取った。 「お礼も入ってますので」 そう言っては笑い、「じゃあ、またあした」と体育館を後にした。 黒子のTシャツの下にチラッと保冷バッグが見える。 先ほど彼女が言った『お礼』なのだろう。 「あれ、また来たの?」 リコが黒子に声を掛ける。今、の声が聞こえた気がした。 「この間貸していたTシャツを持ってきてくれたんです」 「練習のついでに持って来ればいいのにねー」 そう言って居残り練習に付き合うために彼女はコートの中に向かった。 はその足で少し遠い学校に向かった。 自転車でも結構掛かる。 来客用の自転車置き場に自転車を置いて体育館を目指す。 他校の制服を着ているに興味を示す人が何人かいた。 体育館入り口付近で、何とも珍しい光景を目にした。 「あー、そうなんだー...」 感心したようには呟く。 中学時代の黄色い声の大半と言うか9割9分が「黄瀬くーん!」だった。 ここでは結構「緑間くーん」がある。 面白いな、と思った。 体育館入り口から体育館の中を見学する。淡々と練習をしているのは秀徳高校バスケ部。 面白そうなので、も混ざってみることにした。 「緑間くーん!」 が他の女子と同じように声を上げてみると、ボールは緑間の手からすっぽ抜けてゴール手前でぽとりと落ちていく。 (あ、まずいかも...) 今日だけは逃げるわけにもいかず、は大人しく体育館入り口に直立不動となった。 「?!」 振り返った緑間はすぐに彼女の姿を見つけた。 スタスタと近寄ってきて、 「どうしてこんなところにいるのだよ」 と心底驚いたように問うて来る。 「あ、一昨日の借り物を返しに」 「いつでもよかったのだよ。前みたいに郵送でも」 「うん、気になるから。それに、お礼も持ってきたかったし。あと、大坪さんが物凄く睨んでる」 緑間の背後から鋭い眼光のキャプテンの姿が見える。 「あ、ああ。この後、時間はあるのか?」 「うん」 「じゃあ、終わるまで待っているのだよ」 そう言って緑間は練習に戻った。 (痛い痛い...) 自分で撒いた種とはいえ、周囲の視線がいたい。 とりあえず、体育館の中が見えないところで待たせてもらおうと思っていると 「誠凛のマネージャーの子じゃないか」 と声を掛けられて振り返る。 監督だ。 「こんにちは。先日はお世話になりました」 「偵察かね」 「いいえ。緑間くんへの借り物を返しに来たんです」 「そうか。とりあえず、入って待っていればいい」 そういわれては驚いた。 (ウチと秀徳は秋のW・C予選で当たるチームなんだから、招き入れると言うことは、間違いなく偵察をするってのに繋がるとは思わないのかな?秀徳に来た目的はそれじゃないけど、チャンスがあればそれを生かすに決まっているのに) 「偵察されても良いと思っているからな」 驚いては顔を上げた。 「W・Cの予選まであと3ヶ月弱。それだけあればウチもまだ成長する。今ならそんなに気にすることはない。この間の合同練習からそんなに経ってないしな」 (...なるほど?) は納得して体育館の中に入らせてもらった。 緑間のシュート練習まで付き合って、体育館を後にする。 「悪いな、」 「ううん。良く練習するね」 「誠凛はそうでもないのか?」 緑間に聞かれて考える。 「全体練習がそっちよりは多いかなー?」 (あと、量にムラがある) リコの気分次第で3倍とか4倍とかに増えたり増えたりだ。 「そういえば」 緑間が呟いた。 「なに?」 「一緒の中学に通っていても、家の方角が違うから一緒に帰ったことはなかったな」 ふと、そんな風に言われては頷いた。 「そうだね」 後にキセキの世代と呼ばれる彼らがまだ仲が良かった頃、彼らは良く一緒にいた。 は基本的に家の方向が違ったので、正門まで一緒に帰ってそこからはひとりで帰っていた。 てくてくと歩いてが足を止める。 「わたし、こっち曲がった方が道が楽だから」 「...そうか」 「緑間くん、またね」 はそう言って手を振った。 「ああ、またな」 緑間も軽く手を上げて返す。 そういえば、から返してもらったTシャツが入っている袋が少し重い。 良く見ると保冷バッグが入っている。 家に帰って開けてみると、昔自分が好きだといった彼女お手製の菓子が入っていた。 |
桜風
12.7.25
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