| リコが手帳を付けている様子がふと視界に入った。 「花火?」 「あ?ああ、ビックリした」 「すみません、見えたので。花火大会ですか?」 態々手帳につけるということはそうなのだろう。 「そう。みんなで行こっか?」 リコが声を弾ませる。 「練習の後に、ですね?」 「トーゼン」 リコが笑って応じる。 「んちはウチからそんなに遠くないのに、何で知らないの?」 リコがふとした疑問を口にする。 「そういうのって、神社ごとですよね?だったら、地区が違ったら知らないものですよ」 「そっか」とリコは相槌を打ち、そして、暫く沈黙した後に 「って、浴衣の着付け、できる?」 と遠慮がちに問うてきた。 「今は出来ません」 「『今は』?」 「取説があれば出来ます」 「ある!この間新しい浴衣を買ったのよ。で、1人で着られないかなって頑張ったんだけど。...無理だった」 うな垂れてリコが言う。 「誰のための浴衣ですかねー」 がからかうように言う。 「別に、自分が着たいと思ったからよ」 プイと視線を逸らせてリコが言う。 「がそんな意地悪を言うんだったら、黄瀬君と緑間君に連絡入れるわよー」 「どうやってですか。あと、その2人が来るなら行きません。第一、黄瀬くんを人ごみに投下したら大変なことになりますよ?」 冷たく返されてリコは「ちぇー」と呟く。 「で、は浴衣持ってるの?」 「さあ?」 「だったら、私のを貸してあげる。お古の方で悪いけど」 「ありがとうございます」 花火大会の前日と当日はリコの家に泊まることになった。 一旦家に帰って荷物を置いて、としたら面倒だろうといってくれたのだ。 まあ、着付けの時間とかそういうのでリコが気を遣ってくれたのだろうが... 花火大会の前日にリコの部屋でお互い学校の宿題をする。しかし、の前には原稿用紙が置いてあるだけだ。 「もしかして、もう終わってる?」 「読書感想文がまだです。高校生にもなって読書感想文って何を考えてるんでしょうねー。文科省の要綱を改正すべきだー」 やる気なさげにが呟く。 「あー、読書感想文は記憶じゃ無理だもんねー」 リコが満足そうに頷いた。 「全文を書き写せの方がよっぽど楽です」 「それって著作権的に拙いでしょう」 呆れたようにリコが返す。 「しかも、今時手書き。これ、絶対に火神くんはギブアップしてますよ」 が言うとリコは苦笑する。 「あのバカガミなら、殆どギブアップでしょ」 翌日、練習が終わって、再集合となる。 「さすが...!」 リコが声を上げた。 完璧な着付けだ。 「お役に立てたようで」 そう言いながらは自分の浴衣も鮮やかな手際で着付ける。 「さ、行きましょうか」 下駄は毎年夏に近所に出るときは履いているので、在り処を知っているため、持参した。 待ち合わせ場所に行くと男子は誰も浴衣を着ていない。 「お待たせ」 (あれ、浴衣でっていうルールだったのでは?) そう思ったが、どうもそんなルールはなかったらしい。 「なんだ。に着付けてもらったのかよ」 日向が言う。 「そうよ」 少し拗ねたようにリコが言った。 「やっぱりなー、カントクがそんなに器用なはずないもんな」 「...カントク、足元は気をつけてください。着付け本通りに着付けているので大丈夫かと思いますが、着崩れの可能性は否定できません」 日向を鎮めたリコに対してが静かに言う。 「わかってるわよ!」 そう言って彼女はズンズンと進んでいった。 「さん」 ひょっこり黒子が顔を覗きこむ。足元にはテツヤ2号。 「良く似合っていますよ。今回はさんも浴衣なんですね」 中学時代、部活の仲間と一緒に夏祭りにいったことがある。そのときは、彼女は浴衣ではなかった。 「ありがとう。カントクのお古を借りてるの。和服は体系とかそこまで反映しないものだからね」 そう言ってプリプリ怒って歩いているリコの背に視線を向ける。 「可愛いですよ」 黒子の言葉に驚いては苦笑し、 「ありがと」 と返した。 |
桜風
12.7.29
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