| 神社に向かうと、夜店がずらっと並んでいる。 火神が買ってはバクバクと食べている。見ているだけでお腹一杯になりそうだ。 「黒子くんは食べないの?」 が問うと 「僕は..見ただけでお腹いっぱいです」 と少し呆れたように火神を見た。 「まあ、彼は食べただけカロリーを消費してそうだしね」 も苦笑した。 「さんは食べないんですか?」 「わたし、買い食いが苦手だから。買い食いって言うか、歩きながら食べるの」 言われて黒子は思い出した。 中学のときも、学校帰りにコンビニに寄るのも彼女は断っていた。 元々家の方角がみんなとは違ったが、少し頑なにさえ思えた。 「じゃあ、座って食べるならいいんですか?」 黒子が問う。 「うん。まあ...」 (元々、屋外で食べるのが苦手なだけなんだけど...) だから、遠足もあまり好きではなかった。学校の屋上はなぜか気にならない。その空間にいる人が『学校関係者』というように限定されているからだろうか。 「じゃあ」 そう言って黒子はテツヤ2号にのボディガードを任せてその場を去っていく。 人ごみをすいすいと歩いていく彼の姿は『達人』と呼ぶに相応しい。 「黒子くんは相変わらず凄いねー」 テツヤ2号を見下ろしては声を掛けた。 「わん!」 誇らしげにテツヤ2号が返事をする。 少しして黒子が戻ってきた。 手に持っているのは、りんご飴と、たこ焼きだ。 「こっちです」 そういう黒子についていくと、薄暗がりではあるが、ベンチがあった。 「気付いてたの?」 「ええ、さっき目に入ったので。どうぞ」 そう言って黒子はハンカチを広げてベンチの上におく。 躊躇っているをその上に座らせ、たこ焼きを渡した。 は財布を出そうとしたが、「冷めないうちに」と促されて先に食べることにした。 「黒子くんは?」 「僕は、お腹いっぱいです」 「練習の後なのに?半分こにしようよ」 そう言って徹は黒子の口元にたこ焼きのひとつを持って行く。 「え...」 躊躇う黒子に「はい、あーん」とが促した。 が引きそうにないことを察した黒子はおずおずと口をあけた。 「もう食べやすい熱さでしょう?」 黒子はたしか猫舌ではなかったと記憶している。先日のお好み焼きもそんなに苦労していなかった。 「美味しいね」 とが笑う。 「はい」と黒子は困ったように笑った。 「わん!」 足元のテツヤ2号が声を上げる。 「たこやき、大丈夫なのかな?」 「たまねぎはダメって言うのを聞いたことありますけど...」 「犬の飼い方の本は読んだことないからなぁ...」 が困ったように呟いた。 (そもそも、人が食べるものと同じものをあげてもいいのかな...) 黒子とは暫く悩み、 「ごめんね、テツヤ2号。わたし、わかんないから...テツヤ2号の元気がなくなる方がイヤだから、我慢してもらえる?」 膝を折ってテツヤ2号の前脚を持ち上げて視線を合わせたが問う。 「わん...」 しょんぼりとテツヤ2号は返事をした。 「ありがとう」 頭を撫でると嬉しそうに鳴く。 (今度、ちゃんと本を読んでおこう) 固い決意を胸に、はまたベンチに座りなおした。 2人でたこ焼きを半分こにして、黒子がりんご飴をに渡した。 「誰が考えたんだろうね、りんご飴」 普段こういうのを食べないは難しそうに食べている。 「すみません、これは苦手だったみたいですね」 「お祭って言ったら、りんご飴って言うのは聞くから。それに、体験していて損することじゃないもん。自分だったら絶対に買わないから、黒子くんに感謝だよ」 りんご飴を食べている様子のを眺めながら (さん、リスみたい...) などと思い、黒子はクスリと笑う。 「なに?」 首を傾げるに 「いいえ」 と黒子は首を振る。 携帯のバイブレーションの音が聞こえた。 「わたしじゃない」 「僕ですね」 そう言って黒子がポケットから携帯を取り出して通話ボタンを押した。 「何処にいるの?!」 リコからの電話らしい。 「そういえば、はぐれたね」 が呟き、黒子が頷く。 今いる場所を話すと 「も一緒ね?!」 とリコが確認する。 「代わります?」 「怒られそうだから、パス」 「遅かれ早かれだと思いますけど...」 そう言って黒子はと一緒にいる旨を答え、リコに指定された場所に向かうことになった。 「そういえば、花火を見に来たんだったね。忘れてた」 がベンチから立ち上がる。 「そうですね」 黒子はからハンカチを受け取り、それをポケットに入れながら頷いた。 「黒子くん」 「なんですか?」 くいくいとに袖を引っ張られた黒子が視線を向けると、彼女はべっと舌を出された。 「ね、あかい?」 舌を出したまま言うため、少し舌足らずだ。 黒子は思わず溜息を吐いた。 「あ、ごめん...」 子供っぽすぎた行動だった。 が反省して俯くと 「いえ、僕もそういえば子供のときに良くやったなと思って」 と黒子が気にしていないと言う。 ホッと胸をなでおろすを見下ろしながら黒子はもう一度溜息を吐いた。 (さんは、本当にタチが悪い...) 無自覚なのがなお更だと思いながら、黒子は彼女の手を引いてリコたちが待つ境内へと向かった。 |
桜風
12.7.29
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