グラデーション 41





(何でこんなことになったんスかねー...)

黄瀬は窓の外を流れる景色を眺めながらそんなことを思っていた。


海常高校バスケ部。

彼らはこの夏2度の敗北を喫している。

ひとつは、ナンパで。もうひとつは合コンで。

事の起こりはSGの森山が夏の三大要素に欠かせないのは可愛い女の子と言い出したことだった。

I・Hの桐皇戦で、勝てば可愛い女の子を紹介するように黄瀬に言ったが、その試合で敗退し、その言葉はとりあえず、なかったことになった。

ケジメだそうだ。

そして、自力で可愛い女の子をハントしようとして最初にナンパ。

勿論、なぜかスタメン揃ってナンパすることになった。人数が多いほうが楽しいという情報をネットで拾ったのが原因らしい。

そのときは、結局黄瀬のお陰で何とか5人の女の子達とお茶をする機会は得られた。

だが、その後は酷い有様だった。

次に、黄瀬がセッティングした合コン。

これは、バスケバカがたたり、女の子達を放ったらかしにしてしまったことが原因で敗北した。

そして、本日。これまた森山が言い出した。

「東京の方が女の子多くね?」

「やめてほしいっス」

自分の地元だ。

(知り合いにでも会ったら何て言い訳したら良いんスか...)

黄瀬は、特にある人を頭に浮かべて即行反対したが、さすがに負けっぱなしと言うのも、ということでスタメン4人が東京でナンパを決めたので決行することになった。

東京は黄瀬の地元だから、黄瀬の案内で、と。

体育会系の縦社会に逆らえる筈もなく、黄瀬は同行する羽目に陥った。

(どうか、ちゃんには会いませんように...!)

人生で一番熱心に神様にお願いした黄瀬だった。

「そういや、黄瀬って何で彼女いないんだ?」

残念なイケメンこと、森山が問う。

「はい?」

「や、お前腹立つくらいに女の子にモテてるからさ」

「まあ、その気になれば不自由はないと思うっスけど」

「自慢すんな!」

ゴツンと笠松に頭を殴られた。

「痛いっス」

涙目で頭を擦る黄瀬が「好きな子がいるからっスよ」と返す。

「何?!黄瀬の好きな女?年上か?女優か!!」

「同じ年の一般人ス。先輩達も会ったことあるっスよ」

黄瀬の言葉に彼らは彼らの思う超可愛い女の子をそれぞれ浮かべた。

が、思い当たる節がない。

「本当か?」

そんな会話をしていると目的地に着いた。


ナンパは駅前が鉄則と言う森山の、ネットから拾った情報をとりあえず採用した。

作戦会議をする。

「この間はランクの高い子を狙ったから、今度は中の中くらいの子でいいんじゃないだろうか」

本人が聞いたら確実に気分を害されそうなことを口走る森山に

「それ、相手本人に言ったらダメっスよ?」

と黄瀬が念を押す。

「大丈夫だ。どんなにまあまあでも最上級の褒め言葉を相手に贈ってやる」

(すごく不安っス)

と、いうわけで。

全会一致の『中の中の女の子』に狙いを定めてナンパすることにした。

「てか、『可愛い女の子』が不可欠要素ってのが最初だったような...」

黄瀬が呟いたが、先輩達に黙殺された。


「喉が渇いたな...」

炎天下の中、『中の中の女の子』を探す彼らにも太陽は容赦なく照りつける。

「あ、オレ、コンビニで何か買って来るっス」

そう言って黄瀬がその場を離れた。

離れて振り返って、その光景に溜息をつく。

大男4人が物陰から駅前広場を歩いている女の子達を品定めしている。

「オレ、さっきまであの中にいたんスね」

とりあえず、逃げるように黄瀬は近くのコンビニへと向かった。


「あれ、森山先輩は?」

「特攻を仕掛けた。もうあの子で良いかとなってな」

小堀が申し訳なさそうに言う。

「へー、そうっスかー」

気のない返事をしながら黄瀬は人ごみの中の森山を探した。

見つけた途端、彼は「あーーーーーー!!!」と思わず声をあげてしまった。









桜風
12.8.10


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