| 黄瀬が思わず声を上げる少し前。 は日陰に腰掛けて本を読んでいた。 一緒に出かけている人がいたのだが、買いたい物があったのを忘れていたから、待っててもらいたいといわれていたので大人しく待っていた。 外に出るときは必ず本を持ち歩いているので、バッグからそれを取り出して読み始めたところだった。 「ねえ、君」 面倒だなー、と思いながら顔を上げて既視感に戸惑う。 そんなの戸惑いを全く感じ取れていない彼は突然彼女を褒め始めた。 の耳にその言葉は入らず、彼女は考えている。 (わたしの記憶力は頗る良い。だから、この既視感は間違いなく見たことがある人と言うこと。リンクしないのは、きっと服装のせい。背の高さから、バスケをしてても...って) 「あ!」 声を上げたと同時には立ち上がる。 「海常の森山さん!」 思わず指差してしまった。 「え、俺のことを知ってるの?へー、俺ってそんなに人気があるんだー」 そういいながら彼は仲間を振り返って親指をビシッと立てた。 「おお〜、あいつやったって!」 小堀が黄瀬を振り返ると「そんなぁ...」とこの世の終わりのような声を漏らしていた。 「黄瀬?」 「で、さ。これから俺とお茶しない?友達も来てるんだけど、一緒に。君は1人?」 「...いいえ、友人と一緒ですよ」 そう言ってはにこりと微笑み、彼が振り返った先の『仲間』を見つけた。 スタスタと歩き出す彼女を森山は慌てて追う。 「そういえば、名前を教えてもらってもいいかな?」 「ジェーン・スミスです」 「へー。外国の人だったんだねー。日本語上手だねー」 このとき、森山はやっと何か変だと思ったらしい。 「黄瀬くん、何やってんの」 心底呆れた表情を浮かべてが言う。 「ちゃん、嘘っスよね!森山先輩なんかのナンパに引っかかったりしてないスよね」 ガシッと抱きついて黄瀬が言う。 「重い、暑い。てか、海常のスタメンが揃って何やってるんですか!」 笠松を見て言うと彼を庇うように小堀が前に出てくる。 「や、うん。そうだね...君、黄瀬の知り合いかい?」 「へ?」と黄瀬がきょとんとする。 もにわかに驚いたように眉を上げた。 「さん」 「わっ!黒子っち!!」 にしがみついたまま黄瀬が驚きの声を上げる。 「暑い、黄瀬くん。ホントどいて」 「びっくりしました。さっき、そこにいるって言ってたのにいなくなっていたので」 黄瀬に「こんにちは」と挨拶をしたあと、に向き直って黒子が言う。 「うん、ごめんねー。黄瀬くんを見つけたから思わず説教するためにここに移動しちゃった」 「え、あの。ちゃん?」 「だから、暑いし、重いからどいて」 「黒子っちと一緒だったんスか?」 「うん、そうよ。ね、重い」 の訴えは一向に聞いてもらえそうにない。 「海常の皆さんが揃って、何をしていたんですか?」 黒子が不思議そうに彼らを見上げて問う。 「えーと...」 彼らは突然現れた彼が黒子テツヤという誠凛高校バスケ部の選手と言うことは分かった。私服だが、わかった。 そして、ゆっくりを見た。 「君も、誠凛かな?」 森山が問う。 「女の子は私服と制服では随分印象が変わったりしますからね」 黒子が言う。 「誠凛高校バスケ部マネージャー、です。4ヶ月ぶりですね、海常高校さん?」 ((((やべぇ...)))) 皆が心の中で同じことを思った。 「何しにここに来たんですか?」 「...ナンパ?」 疑問系で早川が返した。 「馬鹿!」「正直に言うな!」 それぞれが止める。 「ナンパぁ?」 が声を上げて自分にしがみついている黄瀬を見上げた。 「オレは止めたっス!けど、ほら。体育会系の縦社会には逆らえないって言うか...」 「海常の皆さんは、何で黄瀬くんにナンパさせないんですか?てか、何で態々東京まで来て...」 が心底不思議そうに問い返す。 「ちゃん?!」 黄瀬が悲鳴に近い声を上げた。 「効率的だと思いますよ。黄瀬くんがパッと見イケメンということについて、わたしも異論はありません。この意見に大反対する人は少ないと思います。好みか好みではないかの違いはあると思いますけど。だったら、黄瀬くんを投入してさっさと終わらせればいいじゃないですか」 「や、今回はレベルの高い子じゃなくて『中の中』で良いって話で。で、全員の意見で君に...」 そこまで言って森山が固まった。自分の発言が何を意味するのかに気付いた。 もう遅いが。 「あ、全会一致の『中の中』がわたしですか」 「や、違うっス!オレはその場にいなかったっス!」 「黄瀬君、さっきから言い訳に必死ですね」 冷ややかな声で黒子が言う。 「黒子っちー!や、ホントっスよ。ちゃん。ね、信じてほしいっス!!」 「言い訳に必死ね」 冷ややかな声音でが言う。 「ホント違うっスーーー!!」 本気で泣きたくなった黄瀬だった。 |
桜風
12.8.10
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