| 「緑間っち、さっきの何スか?」 洗い物が終わって黄瀬が問う。 玄関の方をチラチラと気にしているのは、に早く帰ってきてもらいたいからだ。 今回は、黒子がボディガードで出て行った。 「さっきの、とは何なのだよ」 「青峰っちの話っス。誠凛さんが青峰っちの名前を聞いてピリピリするのは分かるっスけど。何で緑間っちまで」 黒子から解放された火神は、が作ってくれているから揚げをつまみ食いしてチームメイトに非難を浴びている。 つまり、この会話を聞いているのは高尾だけだった。彼は興味津々だ。 「別に」 素っ気無くそう言うが、『別に』ではないことは明白だ。 「何かあったんスか?」 「さあな?」 絶対に何かあったのは確実だ。 (黒子っちほどじゃないスけど、人間観察は得意な方っスよ) 黄瀬はそう思ったが、じゃあ、おそらく当事者の1人のに聞けば教えてくれるかと言えば、それはまずない。 あちらの方が手ごわい。 チラッと誠凛高校バスケ部員達を見た。 彼らはワイワイ賑やかに、結局全員でつまみ食いしている。 「はぁ...」 溜息を吐いた黄瀬を見て緑間は少しだけ安心した。諦めたということなのだろう。 先ほどは思わず自分の推測で辿り着いた結論を口にしてしまったが、そうではない可能性だって残っていた。 しかし、のあの青峰への評価を聞けば間違いではなかったと確信出来た。 「緑間君は知っているんですか?」 アイスを人数分購入して火神のマンションへと戻る。 「何を?」 「この間の、青峰君のことです」 「桃井と喧嘩して追いかけてたってやつ?」 「...正直それはどうでも良いんですけど。わかりました、聞きません」 態とはぐらかされているのに気付いた黒子は溜息交じりにそういった。 「ありがと。やさしーねー」 が笑いながら言う。 「さんは、いつ帰るんですか?」 「アイス食べたら。だって、わたしが帰らなきゃ黄瀬くんも帰らないでしょう?宿題がたくさん残ってるはずなのに...」 困ったように笑ったから黒子は視線を外した。 (正直、面白くないんですよね...) マンションのエントランスのインターホンを鳴らす。 「はい」と出たのは黄瀬だった。 「ただいまー」 が言うと 「お帰りっス!わー、新婚さんみたいっスね!!」 と黄瀬が盛り上がる。独りで。 「いいから開けて」 冷ややかにがそう言うとドアが開いた。 「行こ?」 そう言ってが促し、黒子は頷く。 エレベーターに乗って「黄瀬くんってさ」とが話し始める。 「はい」 「わんこみたいじゃない?」 黒子は思わず噴出した。 「テツヤ2号の方が、もうちょっと、こう..落ち着きがある気もするんだよね」 「あの子は賢いですからね」 「...黄瀬くんの前でこの会話してみようか」 が笑いを堪えながら言うと 「それは、ちょっと...」 と黒子も笑いを堪えた。 結局2人はエレベーターを降りたところで我慢できずに笑い出す。 火神の部屋のインターホンを鳴らすと黄瀬が出てきた。 「「ぶっ!」」 と黒子は思わず噴出す。 「な、何スか?」 先ほどの話題が頭を過ぎったのと同時に、やっぱりわんこみたいだと思ってしまったのだ。 「ううん、何でもない。ね、黒子くん」 「ええ、何でもありませんよ」 「え、何スか!黒子っち、教えてほしいっス!!」 黄瀬がそう訴えるが黒子は「内緒です」と言って答えない。 アイスを皆に配る。緑間と黄瀬の好みは黒子が知っていたので、それを買い、あとは適当だった。 「、それ珍しいな」 火神が言う。 「うん、一番近いコンビニにこれがなかったから、黒子くんにお願いして、ちょっと離れたコンビニまで足を伸ばさせてもらったんだー。昔、桃井にもらってお気に入り」 そういいながらが満足そうに食べている。 「くれ」 そう言って火神がの食べているアイスをカプリと食べた。 「「ああーーー!!」」 黄瀬と緑間が同時に声を上げる。 「半分以上も食べた!」 が悲鳴のような声を上げた。 ソフトクリームタイプのそれを、火神は一口で半分以上食べたのだ。 「え、ちゃん。声を上げるのはそこっスか?」 「火神君。人のものを勝手に食べるなんて、いけません」 黒子が指摘する。 「それでもないのだ」 緑間が言う。 黄瀬と緑間が指摘したいのは、所謂間接キスをされたことについてだ。 (オレたちは、警戒されてるスから出来ないのに...) (くそっ、火神め...!) ある意味自業自得で、2人はしょんぼりするしかなかった。 先ほど黒子に言った通り、はアイスを食べ終わったら黄瀬と緑間、高尾を促して帰ることにした。 駅まで行くと、まず黄瀬が神奈川に帰らなくてはいけない。 「はい、黄瀬くん。ちゃんと宿題済ますのよ」 そう言って渡されたものは、火神たちの夜食と同じものがタッパーに詰まっている。 「これ、いいんスか?」 「うん、今日から徹夜でしょ?」 真顔でが指摘する。 たぶん、そうなる。 「頑張るっス!」 そう言って黄瀬はホームに向かった。 「んで、緑間くんと高尾くん」 「俺の宿題は済んでいるのだよ」 「まあ、今日のお礼かな?」 「このためだったんだねー」 スーパーに食材を買いに言ったときに、が日用品の方へ足を向けた。 高尾はそのまま大人しく付いていく。 「何買うの?」 「タッパーを3つほど」 「ふーん」 に対してそんなに興味ないからそれだけで済ましたものだったのだが、やっと繋がった。 「ちゃん、いい奥さんになるよ」 「当然だ、俺の嫁だ」 高尾の言葉に緑間が反応し、は溜息を吐く。 そんなを見て高尾は笑った。 途中まで同じ電車に乗り、の方が先に降りる。 「じゃあな」 「またね」 挨拶を交わすとドアが閉まる。 窓越しに彼女の背を見送る緑間の横顔が視界に入った高尾は 「真ちゃん、本気なんだねー」 と、ポツリと呟いた。 |
桜風
12.8.12
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