| 夏休み明けに早速実力テストが実施された。 そして、その翌日。 校内に衝撃が走る。 全教科満点を取った人物が居たのだ。 。 入試のときも上位ではあったが首席ではなく、今日に至るテストも上位ではあったがトップは取ってなかった。 それが、夏休みが明けるとこの結果。 当然、夏休みはどうやって過ごしたのかと聞いてくる者もいたが、彼女は「部活」としか答えなかったと言う。 きっといい塾に通っているのだ、とか、凄いカテキョがついているんだとか噂が流れなくもなかった。 「すげー...俺、全教科満点って初めて見た」 そう言いながら小金井が拍手を打って手を合わせる。 何だか、ありがたいもののように思えたらしい。 「...面倒くさそうだから、トップ取るのやめてたんじゃないの?」 リコが問う。 「そうですね」 が頷いた。 視線を感じて振り返る。黒子がこちらを見ていた。 彼にだけは宣言している。『針を振り切らせてみる』と。 は笑った。少しだけ挑発的に。 そして、リコは次の人の結果を見た。 「やっぱりバカガミだった...」 の答案用紙を見た後のこれだと余計に力が抜ける。 「ま、今回は補習の日は、試合があるわけじゃないから、みっちり補習を受けなさい」 リコが投げやりに言う。 2年に囲まれて、テストの結果をからかわれていた火神が突然振り返る。 「ずりーぞ」 火神が言う。 「...はい?」 「だって、全部覚えられるんだろう?ずりーよ」 「じゃあ...火神くんずるいよ!背が高い!体力がある!!...他に何処褒めとこうか」 ネタが尽きたらしいが黒子を振り返って言う。 「そうですねー...」 黒子が悩み始める。 「んなこと言っても、そりゃ、俺のせいじゃないだろう」 「同じことでしょ。そんなのわたしのせいじゃない。第一、全部覚えるにしても、授業中は寝てないし、教科書と参考書は目を通してる」 ビシッとに指摘されて火神はぐぅと言葉に詰まった。 言い返す言葉がない。 「てか、緑間くんお手製のコロコロ鉛筆は使わなかったの?選択問題はそれだけで点数稼げるじゃない」 「あいつに頼るみたいで嫌だろう、普通」 「そう?変な意地ー」 そう言っては笑って、解答用紙をバッグに仕舞いにいった。 「何か、ちょっと変わった?」 リコが顔を覗きこんできた。 「そうですか?」 「うん、吹っ切れたみたいな感じがする。元々悶々とした感じはないんだけどね」 「やっぱり。青峰くんには、わたしを怒らせたらどうなるか思い知ってもらおうと思って」 おどけてが言う。 「大変危険な子を敵に回したわね、彼」 リコは反応に困りつつも軽口で返す。 「そこで、カントクにお願いがあります」 「なに?」 「わたしも体力づくりがしたいんです」 の言葉にリコは悩む。 「うん、そうか...」 「メモリの増設は無理なので、稼働時間を伸ばしたいんです」 夏休み中、家でDVDを見ながら練習はした。 リコが入手したI・Hの準決勝の試合や決勝。過去の試合も見た。 大会で、1試合全部録画できる試合は少ない。 集中力も勿論だが、疲れが大きい。 「私ね、。には無理をして欲しくない」 リコが言う。 「青峰君は、あれ、本心じゃないよ?だって、が帰っていった後、凄く後悔した顔してたもん」 「でしょうね。いい人ですから」 は苦笑して言う。 「だったら...」 「桐皇に負けたとき、わたしも凄く悔しかったです。桃井は、データから選手の過去と未来が分かるっていうんです」 「なに、それ...」 リコは呟く。だが、確かにそんな感じもあった。ただ、読めなかったのは黒子くらいだったのではないだろうか。 「夏休みに入る前に、カントクは夏休み中の目標として、夏合宿で各自の課題を浮き彫りにして夏休みの間にそれを克服するって言ってましたよね」 「ええ、みんな頑張ったわ」 「桃井は、中学のときから凄かったです。あれで皆を助けてました」 「だって、確実に皆を助けてたと思うけど?」 見たことはない。けど、今の彼女を見たら想像できる。 「けど、わたしじゃなくてもよかったんです。けど、桃井は桃井じゃないとダメだった」 そんなことない、と思ったがリコは否定せずに聞くことにした。 「桃井は、わたしのコンプレックスです。選手と違って、マネージャーって勝ち負けを決めるのは凄く難しい。だから、自分が納得できる精一杯をしてみようって思ったんです。『精一杯』がわたしの課題です」 リコは溜息を吐いた。盛大な溜息だ。 「ってもっと難しい子だと思ってたわ。だって、最初はけんもほろろよ?」 そう言っての頭をグリグリと撫でる。 「いいわ。練習が終わったら、ウチのジムに来て少しずつ体力づくりをしましょう。メニュー組んであげる」 「お願いします!」 勢い良く頭を下げては言う。 そんなにリコはうんうんと頷いた。 |
桜風
12.8.13
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