グラデーション 51





が戻ってきて、バスケ部の日常も戻ってきた。

全体練習が終わり、は片づけを済ませて学校から徒歩約10分の所にあるリコの実家のスポーツジムへと足を向けた。

リコの組んでくれたメニューを毎日続ける。

ちゃん、今日も精が出るね」

リコの父親に声を掛けられる。

「お世話になってます」

手を止めて挨拶をすると彼は笑って続けるようにジェスチャーをする。

「リコはまだ学校かい?」

「みんなの自主練も見て帰りたいって」

「そうかー...」

面白くなさそうに彼が呟く。




一通りメニューを終わらせて少し休憩をしているところにリコが帰ってきた。

「持ってきてる?」

「はい」

昨日、リコからメールが来た。明日はプールを使おう、ということだった。

つまり、水着が必要ということだ。

「じゃ、着替えましょう」

リコから説明を受けては水の中に入る。

「泳ぐの得意?」

「球技以外は得意です」

はそう言って運動を始める。

体力づくりなので、水の中を歩く、というシンプルなものであるが、これが中々キツイ。

部員達の練習を見ているときには「ふーん」くらいにしか思っていなかったし、理屈でそちらの方がきついのは分かっていたが...

(こりゃしんどい...)

黒子が浮かぶのも良く分かる。

(もう少し涼しくなったら、放課後のロードワークはみんなと一緒に走らせてもらえるように頼んでみよっかなー)

歩きながらそんなことを考えていると

「何でがプールの中で運動してるの?」

と声が聞こえた。

「ダイエットのための体力作り中」

が顔を向けて言う。

「な!?」

驚くリコに「おひさしぶりでーす」と彼女は言ってプールに入ってきた。

「髪は結ぶのがマナーでしょ」

が返すと

「ゴム持ってきてないよ」

と彼女が言う。

「水着は持ってきてるのにね。で、何の用?桃井」

隣を歩く桃井に用件を聞くと

「ここで練習してるって聞いてたんだけど」

と返ってきた。

「残念ねー。ガセだわ、それ」

が笑って言う。

ちょうどリコに言われたメニューも終わった。リコを見ると彼女は頷く。

「よっ」と言っては仰向けに水に浮く。

桃井もそれに倣って2人はぷかーと浮かびながらプールの中を漂う。

「私の情報が間違ってるはず無いんだけど...」

桃井が呟いた。

「そういえば、そうね。でも、全体練習が終わった後だから、もしかして自主練の人が来るかもしれないね」

スイと水を掻いてが進む。

それに合わせて桃井も付いてきた。

「ああ、そうだ。もうひと月近く前だけど。傘、ありがとうね」

桃井が言う。

「うん、黒子くんからちゃんと返してもらったよ」

「あと..えっと...」

「それは、桃井が口にする義理はないでしょう。いくら幼馴染とはいえ、ね?」

はそう言って笑った。

「...うん」

少し沈んだように桃井が言う。

「それより。W・C予選なしなんだね、そっちは」

「そう。まあ、出場校を増やす目的だしね。仕方ないよ」

「青峰くん、拗ねてそう」

「否定できない」

「けど、調整の仕方が前の年と違うと難しいんじゃないの?」

「ウチを何処だと思ってるの?」

挑発的に桃井が返した。

「桐皇学園」

が学校の名前を口にすると「まあ、間違ってないけど...」と言葉に詰まっていた。

「じゃあ、W・Cでみんなが揃うかもね。赤司くんのところももう決定してるし、海常がこける事は無いでしょう?陽泉も。あと、東京は出場校が2校だから..秀徳とウチで。ほら、揃う」

「...うん」

「楽しみね」

の言葉に桃井は反応に困っていた。

「でも、みんな敵同士でしょ?」

桃井が言うとは笑った。

「帝光中のときも、同じユニフォーム着てたけど、『仲間』じゃなかったじゃない。いや、仲間じゃなくなった、が正しいかな」

そう言っては反転してクロールを始め、桃井も続いた。


「おい、ひょうたん島がなくなったぞ」

「沈んでしまった...」

「あーんーたーたーちーーー!!」

と桃井がプカプカ浮かんでいた。水の中からそれぞれ山がふたつずつ浮かんでいた。

その2つの二連の山を日向がそれぞれ『大ひょうたん島』『小ひょうたん島』と名付けて、とりあえず居合わせた皆で鑑賞していたのだが...

鬼と化したリコが、ある種の覗きをしていた全員をプールにぶち込んだ。

波が立って驚いたと桃井が手を止めて足を付ける。

「なに、どうしたの?」

「んーんー、何でもないの。、今日はもうあがりなさい。桃井さんも」

有無を言わせないリコの笑顔にそれぞれ頷いてプールから上がる。

「おお〜」と声を上げた彼らにリコの笑顔が向く。

「シネ!」

リコの言葉の直後、誰かの断末魔が聞こえた。

それを特に気にせずにプールサイドに置いていたタオルを羽織り、桃井にも1枚貸す。

「ありがとう」

「どうしたしまして」

そう言ってシャワーを浴びるべく足を進める。

「今日の夕飯はー、エビチリにしようかなー。お腹空いたー」

が呟き、

「そういえば、テツ君いなかったね」

桃井が振り返った。

「あ、本当?じゃあ、まだ体育館で自主練かな?」

「会いたかったなー」

「そりゃ残念」

は軽く反応し、その反応が気に入らなかった桃井はぷぅと膨れた。









桜風
12.9.1


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