グラデーション 54





まだ体育館に戻る時間には早かったので、は緑間に付き合ってみることにした。

当然、荷物持ちとして黄瀬が付いてくる。

(てか、緑間っちとちゃんが2人きりとかありえないっス!)

(俺も居るんだけどー...)

なぜか眼中に入っていないらしいと気付いている高尾が心の中で挙手する。

、乗ってもいいのだよ」

「ううん、ごめん。恥ずかしくて無理」

笑顔でが返す。

(キッパリ言うな〜...)

高尾は心の中で溜息を吐いたが、

「奥ゆかしいな」

と緑間が返したことに「え?!」と声を上げた。

本当に、マイナスの言葉が届かないのだ。

「けど、緑間くんはいつも高尾くんに引いてもらってるの?」

が問う。

「チャリは、じゃんけんで決めている」

「そんなの緑間っちが勝ち続けるって決まってるじゃないスかー」

黄瀬が非難の声を上げるが、

「俺でもじゃんけんに負けることはある」

と緑間が言う。

「え、本当?真ちゃん、じゃんけん無敗じゃないの?」

にだけは勝てない」

緑間の言葉に高尾がを見る。

「そーなの?」

「みたいねー」

はからからと笑った。

「じゃあ、高尾くん。海常にもこれ漕いで?」

の問いに「へ?」と高尾は声を漏らし、「気付いていたのか」と緑間が返す。

「自分がどれだけのっぽさんだと思ってるの」

が目を丸くして言う。

「しかも、制服だったでしょ?他校の制服って基本目立つもんよ」

「だったら、声を掛けてくれても良かったのだよ」

緑間が非難がましく言うが、

「そんな感じじゃなかったでしょ。黒子くんをなるべく早く病院に連れて行かなきゃ、みたいになってたし」

の言葉を聞いて「そうか」と引いた。



暫く歩いていると公園が見えてきた。

しかし、先客が居るようだ。

先客が居るが...

「何スかね」

「何かもめているようなのだよ」

「だなー」

チャリアカーを置いてきた高尾もうなずく。

「喧嘩かな?」

そう言っては視線で彼らに釘を刺す。

それに気付いているが気付かない振りをして公園へと足を進める緑間と黄瀬。全く気付かない高尾。

は彼らの後に着いて公園に入った。

「あーあ...カッコワルイ」

黄瀬が呟く。

「どーすんの、真ちゃん。放ってたら中々空きそうにないよ」

高尾の言葉に緑間はチラッとを見た。

は諦めたように首を横に振り、「怪我には気をつけて」と言ってベンチに腰掛ける。

おそらく体格から考えて高校生が、中学生..もしかしたら小学生かもしれないいたいけな少年たちを相手にバスケをしている。ラフプレイで。

緑間は先ほど黄瀬に投げつけたボールを取り出した。

「おーい」

高尾が先客に声を掛ける。

「そこのちびっ子達。俺達とチェンジしない?」

高尾が軽く彼らに声を掛ける。

「え...」

「あのボールは、どっちのだ?」

緑間が問う。

「僕の...」

「なるほど」

少年の返事を聞いて、黄瀬がサッとそのボールを取り返す。

「取り敢えず、選手交代っス。あっちのお姉さんのところに行くっスよ」

少年達は頷いてのそばにやってきた。

「あら、偶然。ここに消毒薬と絆創膏が」

そういいながら先ほど購入した救急用品を取り出しては彼らの手当てを始める。

「おいおい、どういうことだよ...」

少年達をいたぶっていた男たちが気に入らないと睨みつけてきた。

「やー、カッコワルイっスよ。あんたたち」

「俺達3人が相手になるのだよ」

「てことで、こっちが3人ってのはハンデってことで。よろしく」

高尾が言う。

男達は少年が駆け寄ったを見た。

「へー、女連れか」

「あんま可愛い子じゃないのが残念だけど、とっとと済ませて後で遊んでもらおうぜー」

下卑た笑い声を上げて男たちが言う。

「...ああ、とっとと終わらせるのだよ」

冷え冷えとした声で緑間が同意した。



「あ、あの...」

一通りの手当てが終わった少年がコートの中を見る。

「ん?」

コートの中では、3人の高校生が5人の男達を翻弄している。

しかも、黄瀬たちは全く本気を出していない状態でのそれだ。

「あのお兄さん達、凄く、有名な人たちなんですか?」

少年が聞く。

「んー、微妙に有名かもね」

は苦笑した。

相手に全く反撃させることなく、また、ラフプレイもさせることなく圧倒的な強さで彼らは勝利を収めた。

「おぼえてろよー!」

「わー、実際中々聞けない捨て台詞だよー」

が笑顔で言う。

「さ、使っていいっスよー」

「終わったら声を掛けてくれ。俺も使いたいと思ってここに来たのだよ」

「あちー...」

それぞれの居るベンチに戻ってきて言う。

「あ、僕達はいいです。もう帰らないと」

「そうっスか?」

黄瀬が確認すると少年達は頷いた。

「では、遠慮なく使わせてもらおう」

そう言って緑間がボールを手にしてコートに立つ。黄瀬が傍に駆けて行った。

「ディフェンスしてあげてもいいっスよ?」

イタズラっぽく言うと「ふんっ」と緑間は取り合わずにシュート練習始めた。

「あの、ありがとうございました」

少年が高尾に言う。

「気をつけて帰れよー」

高尾の言葉に少年達は頷き、「ありがとうございました!」とコートの中の黄瀬と緑間に言う。

彼らは練習の手を止めて軽く手を挙げた。









桜風
12.9.3


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