グラデーション 55





ベンチに腰掛けて高尾は少し離れたとことで1on1をしている緑間と黄瀬を眺めている。

先ほど、意地悪な高校生らしき5人組を軽く捻ってやった。

「凄かったよなー」

素直にそう思ってしまった。それが少し悔しい。

緑間が凄いのは知っている。

そして、緑間とチームメイトだったキセキの世代が凄いのも知っている。

だが、緑間以外のキセキの世代とプレイすることなんて今まで無かった。見るのとやるのとは違うものだ。

黄瀬は、バスケのキャリアが最も短いキセキの世代で、他の4人に比べたら実力的には少し劣るという話も聞いていたが...


不意にぴとっと首筋に冷たいものが当てられて高尾は「冷てっ!」と声を上げた。

「あはは、ごめん」

笑って言ったのはだった。

先ほど「ちょっと荷物番お願いね」と言ってふらりと居なくなったのだ。

別に用事はないし、あの2人の邪魔をしたら怒られそうなので高尾は大人しくベンチに腰掛けて荷物番をしていた。

「はい」と渡されて手にしたのは、スポーツ飲料のペットボトルだった。

「夏はこまめに水分補給しなきゃ」

「あー、ありがとう」

緑間たちの元へと足を向けるにそう声を掛けると彼女は振り返って「どういたしまして」と笑った。

(あーゆーところなんだろうなー...)

何となく思った。

顔が飛び切り可愛いというものではなく、スタイルが抜群だとか、一般的に魅力的と思える要素は一見見当たらない。ビジュアル的な面で。

だが、何度か言葉を交わしてみると納得できなくもない。

から離れるのだよ!」

必死な緑間の様子に苦笑が漏れる。

2人にスポーツドリンクを持っていったが、黄瀬にまた抱きつかれている。

そして、緑間がそれを引き剥がす。

何度か目にした光景だ。

「けど、ちゃんも酷いね」

気を持たせるような態度を取り続けている彼女に、高尾がちょっとだけ嫌悪を感じているのもまた確かだった。

態となのではないかと思ってしまう。

しかし、そうではないのだろう。彼女がそういう性格なら、そもそも緑間は惹かれていないはずだ。

「真ちゃんも大変だー」

ポツリと呟き、彼女から受け取ったペットボトルの蓋を開けた。


「高尾くん、黄瀬くんとマッチアップして大丈夫なの?」

「真ちゃん交代!」と言って先ほど割り込んできたのは高尾だった。

断ろうと思ったが、ベンチに1人座っているの姿が視界に入って緑間は頷いた。

「大丈夫だろう。本気ではやらないだろうし」

高尾は確かに戦力なので、黄瀬にコピーされるのは痛い。とはいえ、彼のプレイはホーク・アイと呼ばれる視野の広さに起因するところもあり、それはマネのしようがないため、さほど気にしていない。

暫く2人のプレイを眺めているとコトンと右肩が重くなる。

何事かと思い、緑間は顔を向けて途中でピタリと止まる。

自分の肩に、正確に言うと腕だが、の頭があった。

?」

動くのを躊躇いながら名を呼んでみたが返事が無い。

そっと顔を覗きこむと彼女は目を瞑って、どうやら眠ってしまったようだ。

緑間は息を吐き、さて、どうしたものかと悩み始めた。

何せ、右腕にが頭を預けて寝ているのだ。右腕にとって絶対に良くないことだ。

これでは、人事を尽くしたことにならない。

だが...

「起こせるはずがないのだよ...」

ほとほと困ったように緑間は呟く。

安心しきられるのもどうかと思うが、それでも安心して傍に居られるのは頼られているようで嬉しくもある。

緑間の腕に頭を預けつつ舟を漕いでいたは、とうとうずるりとずれてこてりと緑間の膝の上に頭を載せた。

それでも起きない彼女に、これまたほとほと困る。

「まったく...」

そう呟いた緑間は、彼女の髪を梳き、さらりと流れる髪に指を絡ませて遊んだ。









桜風
12.9.7


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