| 幸せな時間を壊したのは、黄瀬の携帯だった。 緑間は思わず舌打ちをした。 着信だか受信だかを告げるようにバイブレーションし始める。バスケをするには邪魔なので、黄瀬がベンチの上に置いていたのだ。 緑間は自分の携帯を取り出して時間を確認する。 随分遅い時間だ。 そういえば、は何故部活の途中で抜け出して黄瀬と共に居たのだろうか。 そして、放っておくべきかと悩んでいたが、黄瀬の携帯のバイブレーションは一度止まって再び始まる。 おそらく着信と言うことだ。そして、結構しつこいのでもしかして急用かと思い、 「黄瀬!」 と名を呼んだ。 「何スか?って何してんスか!!」 凄い勢いで黄瀬が駆けて来た。 「こうなったんだ」 「緑間っち。まさか、無理矢理ちゃんを...」 「いいから、携帯を見るのだよ。さっきからかなりしつこく着信している」 「あれ、黒子っちからだ」 そう呟いて通話ボタンを押す。 「黄瀬君、いい加減さんを返してください」 黒子の言葉に何だかちょっとムカッと来た。黒子の言い方だと、何だか彼女は黒子のもののように聞こえる。 「ちゃんはオレのっス!」 「バカを言うな、俺のだ」 聞き捨てなら無い、と緑間が参戦した。 「...緑間くんも居るんですか?」 電話の向こうで黒子が怪訝そうな声を出した。 「そうっス。いつもオレとちゃんの仲を邪魔するっス」 「それはかなりどうでも良いんですけど。今何処に居るんですか?さんに代わってください」 「黒子っち、酷い...ちゃんは、緑間っちに無理矢理膝枕させられているっス。今、誠凛近くのゴールがある公園っスよ」 「無理矢理などではない。が載せてきたのだよ」 「嘘っス!」 「さん、寝てるんですか?困りましたね...」 黄瀬と緑間の賑やかな会話で大体状況を把握した黒子は電話の向こうでちょっと困っていた。 彼もを起こすのには反対の様子だ。 しかし、 「ちゃん、起きようか」 と彼女を揺すった不届きな輩がいた。 「高尾!」 「何してるんスか!」 緑間と黄瀬が責める。 「何してるも何も...ちゃんがこのまま寝てたら何も解決しないっしょー。それに、真ちゃん足痺れちゃってんでしょ」 高尾の言葉は正論だが、緑間と黄瀬は納得できなかった。 「んー...なぁにー」 黄瀬が携帯を落とした。 緑間が固まった。 そして、高尾も正直ちょっとドキッとした。 寝ぼけていた彼女が凄くあどけなく見えて、彼らは手も足も言葉も出なかった。 体を起こしたはゆっくりと状況を把握し、 「はっ!」 と我に返った。 「え、ちょっと待って。えーと、緑間くん、ごめん。脚大丈夫?」 「あ、ああ。気にすることはないのだよ」 痺れているが、それどころではない。 「あと、黄瀬くん。携帯落としてるんだけど...壊れてない?」 「へ?あ、ああ。うん。そうっスね」 慌てて黄瀬が携帯を拾い上げて「黒子っち?」と通話ができるか確認している。 「え、やだ。ちょっと待って。今何時?」 手櫛で髪を整えながらは公園の中の時計を見た。 「わ、戻らなきゃ...!」 慌ててベンチから降りたは買い物袋に手を伸ばす。 「あ、オレが持つっスよ。最後まで責任を持って荷物持ちをするっス」 「大丈夫。これくらい持てるから。黄瀬くんも、ほら、早く学校に戻って先輩達に謝らないと。部活抜け出してきたんでしょ?」 の言葉に黄瀬は詰まる。 「バカなのだよ」 心底呆れたように緑間が呟く。 「だって、体育館の中にちゃんが居なかったんスもん...」 拗ねたように黄瀬が言う。 (まだ慣れていないのか...) 緑間はそっと溜息を吐いた。 自分だって慣れたとは言い難い。ふと物足りなさを感じなくも無いが、それでも何とか折り合いは付けている。 「慣れて」 が少しだけ強い口調で言う。 しゅんとした黄瀬に少し困っているようだった。 「おい、何やってんだよ」 振り返ると火神が居た。 「火神くん?」 が不思議そうに名を呼ぶ。 「カントクが、迎えに行けって。体育館の鍵が閉められねーから」 「だよねー...」 「んで、さっき黒子からがこの公園に居るってメールがあったから。俺が一番近くに居たから来たんだけど。先輩達も探しに出てるぞ」 そういいながらが持っている荷物に手を伸ばした。 「あっちゃー...カントク、カンカン?」 「や、基本あの人、お前に甘いからどっちかっつーと心配の方じゃね?つか、買いすぎだろう」 中を覗き込みながら火神が言い 「仕方ないでしょ」 とちょっと拗ねたようにが返した。 火神が現れてから完全蚊帳の外状態になってしまった緑間は、溜息をついてベンチから立ち上がる。 「ではな、。また」 「あ、うん。ごめんね」 は慌てて緑間に応えた。 「ちゃん」 そう言って黄瀬がを抱きしめる。 高尾が緑間を見たが、彼は止める素振りを見せなかった。 黄瀬はすぐに離れて「また遊びに来るっス!具体的には文化祭に」と言う。 「うん、迷惑だから来ないでね」 笑顔でが言ったが、「いやっスー!」と言って公園を後にする。 「じゃあねー、ちゃん」 緑間が大人しく去っていく後ろを高尾が続く。 「うん、ありがとう」 は手を振って応えた。 振り返って彼女に応えた高尾は眉間に皺を寄せた。 火神に荷物を持ってもらっているは申し訳なさそうにしながらも笑顔で話をしている。 「...けど、あんた。やっぱ、酷いんじゃない?」 ポツリと呟いた。 |
桜風
12.9.7
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