| 10月の上旬の土曜日。 2学期にも中間テストはある。 テスト期間中に部活禁止と言うのはどこも同じで、W・C前のこの時期は少しでも練習がしたいのに、と黒子はウズウズしながら勉強をサボっていた。 書店に向かい、新しく本を購入する。 通学や休み時間の間は、文庫本を読むことが多い。 駅前の大型書店で数冊購入し、さあ、帰るかどうかと悩んでいたところで黒子は思わず駆け出した。 「さん!」 名前を呼ばれて振り返った彼女は 「わあ、びっくりしたー」 と全然驚いた様子の無い口調でそう言う。 「どうしたんですか、こんなところで」 「黒子くんこそ。テスト勉強の調子は如何?」 からかうようにが言う。 「僕は、いつもどおりです。さんこそ..ってそれこそ愚問ですね」 黒子が苦笑した。 「そういうこと」 「じゃあ、買い物ですか?」 毎日部活に顔を出しているのだ。そういったことは全然楽しめていないのではないだろうか。 「ううん」 彼女は首を横に振る。 (じゃあ、何だろう...) 黒子もそこまで休日の女の子の行動パターンを知っているわけではない。 「映画?」 「ざんねん」 どうやら、クイズになってしまったらしい。 「正解したら、ご一緒しませんか?」 がからかうように言う。 その瞬間、黒子は本気になった。見た目、あんまり分からないけど、かなりの本気だ。 「バスケ観戦...」 そう言ってみた。 此処最近、が体力づくりと称して一緒に走っているし、何かしようとしているのは分かる。 それが何かは教えてもらえていない。 でも、それがバスケに関わる何かだと言うのは分かる。 「ぴんぽん、ぴんぽん」 どうやら正解だったらしい。彼女は苦笑している。 「あーあ、黒子くんが赤点を取ったらどうしましょう」 「大丈夫ですよ。僕が1教科赤点を取っても火神くんのお陰で翳みます」 黒子の言葉に「いいのかな、それ」とは困ったように笑っていた。 「それで。僕はさんと一緒に行っても良いんですよね。何処に行くんですか?」 「W・Cの予選に出られるチームのところ。ウチは私立だし、テスト期間って都内の高校全部がドンピシャで一緒じゃないのね」 そういいながら駅へと向かっていくに並んで黒子は歩き始めた。 電車で30分程度の駅に降りる。 10分程度歩いて校舎が見えてきた。 「ここですか?」 確か、予選にエントリーできる学校ではないはずだ。 「うん、相手チームがね」 「練習試合ですか」 黒子が眉を上げる。 「あれ、言わなかった?」 バスケ観戦、と言ったのは自分だ。だが、普通に偵察とかそう言うのだろうと思っていたが... 体育館のスタンドに向かい、比較的良い場所を確保できた。 は部の備品であるビデオカメラをセットしている。 「黒子くん、わたし黙って観戦すると思う。ごめんね。声を掛けられても返事しないかも」 レンズを覗き込みながらカメラの角度の調整を行っている。 黒子は訝しがりながらも「わかりました」と頷いた。 (此処最近、さんの観戦スタイルはそんな感じだな...) 「よし」と呟いた彼女は今度は肩から掛けていたショルダーバッグからキャラメルのお徳用袋を2つ取り出して傍らに置いた。 彼女は最近、バスケの観戦をするときには甘いものを傍らに置き、そしてコートから視線を外さない。 その集中力が切れる様子が無いのには、感心すると共に何だか心配にはなる。 彼女の観戦スタイルは、体にかなり負担をかけているのではないか、と。 (僕が何か手伝えれば...) 試合開始の笛が鳴り、黒子もコートに視線を落とした。 |
桜風
12.9.14
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