| 試合が終わると、は汗を掻いてぐったりしていた。 「さん、大丈夫ですか?」 「うん、体力づくりのお陰で」 全然大丈夫そうではないのに、彼女はニッと笑ってそう言う。 「僕が片付けますから、少し休んでください」 カメラの片づけをしようとしているを制して黒子が作業を始める。 「ありがとー」 そう返すはまたキャラメルに手を伸ばしている。 片づけを済ませて学校を後にする。 「持つよ」 「ダメです」 まさかこのかばんの中にカメラと三脚が入っていると思って居なかったため、行きはから取り上げようとは思わなかったが、中身が分かっている今はもう渡せない。 「黒子くんって意外と頑固」 が呟くと 「さんも人のことは言えません。ほら、少しふらついています」 そう言って黒子がの手を取った。 「そんなになるのに、何で1人でバスケ観戦をしようと思ったんですか」 お説教モードの黒子を前に、はしゅんとなる。 とぼとぼと歩くを見下ろす。 (小さいな...) 別に、身長が凄く低いとかそう言うのではなく、小さくて可愛いのだ。 猫や犬をぎゅっとしたくなるように、ぎゅっとしたくなる。 (黄瀬君じゃあるまいし...) 何となく、一瞬黄瀬と同じようなことを考えてしまった気がした黒子は、かなり嫌だったので、否定した。 電車に乗ると、それなりに人が乗っていた。 空いているのは「譲り合いの席」と言われる席だけで、に問うてみると 「立ってる」 というので、ドア付近に立つことにした。 曰く、 「こっちのドアはわたしたちが降りるときまで開かないよ」 とのこと。 「そうなんですか?」 「行きがそうだったから。帰りも同じはずでしょう?」 (そう..かも...) 覚えていないが、がそういうならそうなのだろうと黒子は頷いた。 体重を掛けられるなら楽だろう、と黒子もその場所については何も言わなかった。 「わわっ!」 思わずが声を上げる。 少しずつ人が多くなってきたと思っていたところに、大量に人が乗り込んできた。 「コンサートか何かあったんですかね」 が潰れてしまわないように、と黒子がドアに両腕を突いて壁になる。 「あの、黒子くん...大丈夫?」 心配そうに見上げられて黒子は思わず視線を逸らした。 ひとつは、自分の体力のなさを心配されているのが何だか悔しいこと。 もうひとつは... (さん...) 好きな子の上目遣いの破壊力は半端ないということを改めて思った。 何より、彼女の感情は今自分にだけ向けられているのだ。 その感情が「体力が無いのに、大丈夫かな」という『心配』という点においては非常に残念だが。 何とか顔を上げていたが、疲れて俯いてしまった。 俯いた先には、の頭があり、黒子は彼女の耳元にそっと唇を寄せた。 「大丈夫ですか?」 思いも寄らない黒子の行動には驚き、俯く。 「さん?」 彼女が困っているのは見ていて分かった。 だが、今の黒子はちょっと意地悪な気持ちになっていた。 (体力が無いのはわかっているけど、そんなあからさまに...) というある意味八つ当たりの感情ではあるが、ちょっと意地悪になっていたのだ。 「だいじょうぶ」 小さく呟くにクスリと笑った。 そのとき、次の駅名がアナウンスされる。降りる駅だ。 あからさまにがほっとした様子を見せる。 それが少し面白くなくて、ぎゅっと抱きしめる。 「わっ」 「ドアが開くから、危ないですよ」 というと彼女は「あ、うん」と大人しく頷く。 ちょっとスッキリした。 電車を降りて駅を出る。 「さん」 隣を歩くが足を止めた。 「なに?」 「少し、時間があるなら」 そう言って黒子が指差したのは、ハンバーガーショップだ。黒子は、あの店のバニラシェイクがお気に入りだ。 「いいよ。電車の中で守ってくれたし、お礼にご馳走しましょう」 の言葉に、少しだけ良心が痛んだ黒子だったがその言葉に甘えることにした。 |
桜風
12.9.14
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