グラデーション 61





秋の学校行事のひとつに文化祭がある。

中間試験が終わってから準備を始めて2週間後に本番を迎える。

は自分のクラスの出し物、お化け屋敷の前を通りかかって、足を止めた。

「黒子くん」

さん。どうも」

お化け屋敷は黒子のクラスと合同の出し物となっている。そのため、教室ではなく、大き目の会議室を借りてそこを会場としていた。

現在、黒子は店番という役なのだが、どうも役割を果たせていないらしい。

先ほどすれ違った人が「まだ開いていないのかな」と言っていたのはおそらくここのことだろう。

2人座れるようになっているため、は空いているほうの椅子に座った。

さん?」

「お付き合いしましょう?」

にこりと微笑んではインカムつけた。中との連絡はこれで取るようになっている。

です。受付に入ります」

「了解、よろしく」

が椅子に座るとお客が声をかけてくる。

「カップル入りましたー」

客が中に入ると、受付はどういう人が入ったかを報告する。それを受けて中のオバケ役たちはどのようにおどかすかを考えて演じるそうだ。

かなり凝っている。

「黒子くん、回ってきてもいいよ」

が言うと

「いえ、いまは僕が当番ですから。寧ろ、さんに申し訳ないです」

「いいよ、楽しいし」

笑ってが言う。


「オレと一緒に入らないっスか?」

にこりと微笑んで彼が言う。

「何でウチの文化祭の日程を知ってんの?」

「学校の女子に聞いたら教えてくれたっスよ」

彼がいう。

「黄瀬君、そろそろ気持ち悪いです」

黒子が真顔で言った。

「何スか!」

「まあ、うっかりストーカーで通報しちゃったらごめんね」

がてへっと笑うと

ちゃんまで酷い!」

と言う。

「てか、ちゃんと黒子っちは同じクラスなんスか?」

「ううん、違うよ」

「クラスの実行委員が仲が良かったらしくて。人数多いほうが準備とか当番とか楽だろうからって合同になったみたいです」

黒子の言葉に「ふーん」と黄瀬が相槌を打つ。

「入る?」

「チャレンジしてみるっス」

「んじゃ、どうぞ?」

が言うと「行ってくるっス!」と言ってドアをガラリと開けた。

「イケメンひとり入りました」

インカムで中に連絡すると

「ガッテン!」

と気合の入った女子の声が返ってくる。

は手を合わせた。

(黄瀬くん、無事で...)


暫くして黄瀬の悲鳴らしきものが聞こえて出口から黄瀬が転がるように出てきた。

「あ...」

「さすがに、同情してしまいますね...」

追いはぎにあったように服が乱れていた。

というか、上に羽織っていたシャツのボタンがいくつか飛んでいる。

ちゃん、アレ何スか!」

「イケメン限定のコースです」

真顔でが言う。

「オレがかっこいいのは知ってるし、仕方ないことっスけど...!」

「相変わらず嫌味な人ですね」

黒子が感情を出さずにポツリと呟く。

「オレ、女の子が怖いっス」

青くなって言う黄瀬はさすがに気の毒だった。

何より、ボタン...

「あー?黄瀬、またに会いに来たのか?お前、いい加減捕まんぞ?」

何か色々と抱えてやってきた火神が面倒くさそうに声をかけてきた。

「丁度いい。火神くん、受付変わって」

「おー、いいぜ」

快諾した火神と交代しては自由になる。

「黄瀬くん、シャツ貸して」

羽織っていたシャツを脱いだら半袖だった。

「寒い?」

「大丈夫っス。けど、それどうするんスか?」

「おんなじボタンは無いだろうけど、被服室に行ったらボタン余ってるかもしれないから」

「付けてくれるんスか?」

黄瀬の声が弾む。

「さすがに、責任を感じましたとも」

苦笑しては歩き出す。

「黄瀬、尻尾出てんぞ...」

呆れたように火神が呟く。

と一緒にいられるのが嬉しいらしい。

黒子は少し面白くなさそうに溜息を吐いた。









桜風
12.9.19


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