グラデーション 62





「文化祭か...」

先日高尾が『朗報』と言ったのは誠凛高校の文化祭の日程だった。

高尾の知り合いがこの学校の行事を知っていたらしい。

「やっぱ、学校の特色出るよなー。つか、さすがまだ2年目の学校。ちょっと敷地狭いけど、校舎とか綺麗だなー」

高尾と共に誠凛高校の正門を潜った。


がこの学校に進学したと聞いてから初めてきた。

話によると、黄瀬はしょっちゅう顔を出しているのだとか。

(あいつも、の迷惑を考えるべきなのだよ...)

はあ、と溜息をつく。

「真ちゃん?」

「ああ、何でもないのだよ」

「んで、ちゃんって何組?」

「さあ?」

緑間の返事に高尾が固まる。

「は?」

「だから、知らないのだよ」

「何で!」

「聞く必要が無いからなのだよ」

(まあ、確かにそうかもしれないけど...!)

「文化祭に行くから教えてって言えば良いじゃん。何、遠慮してんだよ。真ちゃん、遠慮してたら黄瀬に負けちゃうよ」

「高尾には関係ないだろう!」

思わず語気を強めて言ってしまった。

「けどさー」

緑間のその反応をさほど気にせず、高尾は続けようとした。

ちゃん、酷いっス!」

「どっちがー!」

黄瀬との声だ。

「ほら、絶対に来てると思って...」

高尾が言葉を途中で止めた。

何と、自分の頭上を女子が飛び越えてきたのだ。

廊下の窓から彼女は向かいの大木に飛び移った。

どやどやと結構な人数を思わせる気配を連れて「ちゃーん」という声は遠ざかっていった。

高尾が大木を見上げようとすると緑間に頭を抑えられ、地面しか見られない。

「真ちゃん...」

(首が痛ぇ)

、早く降りてくるのだよ」

若干焦った声音で緑間が言う。

「わお、緑間くんたちも来たの?久しぶりー」

「いいから、早く降りるのだよ。挨拶は後でいい」

(あー、なるほど)

ちゃん、パンツ見えてるんじゃない?」

「高尾!」

「見えてないよ。そのための短パン穿いてるもん」

「いいから、

「じゃあ、上。ブラとか見えてるとか」

「高尾!!」

下着を着ていたら下着が見えるだけだろうが、着ていなければ姿勢によっては見えなくもない。それが、セーラー服だ。

「へ?わっ...」

慌ててセーラー服の裾を押さえたはバランスを崩した。

!」

足を滑らせた彼女を緑間が何とか受け止めた。ホッと息を吐く。

「わ、緑間くん。大丈夫?ごめん、腕とか...」

そんなの反応に、緑間は盛大な溜息をついた。

「自分の心配をしろ。あと、2階の窓から飛び出してくるものではないのだよ。昔から全く...」

緑間が軽く説教する。

「は、はい...」

お姫様抱っこをされた状態では頷いた。

(昔から?!何やってんの、この子...)

高尾は素直に驚き、呆れたが、気を取り直して

「おー、真ちゃんカッコイイ!」

と相棒をからかう。

からかう高尾の声で緑間はハッとなり、をそっと降ろした。

「ごめんね」

「大丈夫なのだよ」

「んで、何でちゃんは2階の窓から飛び出してきたの?黄瀬の声が聞こえた気がしたけど」

「ああ、それは...」


の説明によると、お化け屋敷のお詫びも兼ねてボタン付けをし、先輩達のクラスを冷やかしていると黄瀬が黄瀬とバレてしまい、女の子達に追いかけられる羽目に陥ったらしい。

しかし、黄瀬がを巻き込んで逃げ出したため、一緒に走っていたのだが、さすがにそれに付き合うのもどうかと思い、独自のルート(2階の窓)から逃げることにしたのだとか。

「てことは、ちゃんのとこは..これ?」

プログラムをに示した。

「そう、それ」

「...そんなに怖いの?」

「オバケ役の女子率によると思う。黄瀬くんは『イケメンコース』だったから、確実に」

そう言っては遠い眼をした。

「そのイケメンコースって何?」

「女子が触り放題」

「...それは、セクハラなのだよ」

「別名、そうだね」

は苦笑した。

「行ってみる?」

「え、俺も『イケメンコース』?」

「ご希望なら」

高尾の言葉には笑う。

「や、普通コースで」

「緑間くんもいい?」

「ああ、行くのだよ」

を先頭に高尾と緑間がお化け屋敷を目指した。









桜風
12.9.19


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