グラデーション 64





11月最初の土曜日。

とうとうW・Cの予選が始まった。

まずは、I・H予選の1〜8位で試合をし、その勝者4校でリーグ戦が行われる。

そして、その上位2校がW・Cへの出場となる。

今日は、その最初の試合だ。

相手はI・H予選6位の丞成高校だ。


試合が始まり、選手達が整列する。

すると、丞成のセンターが涙を流し始めた。

「何でしょうか...」

が呟く。

すると、彼はいった。

「オレのトキメキを返せ」

と。

どうやら、彼は誠凛は『女監督』と聞き、色々と妄想していたらしい。

ボン・キュッ・ボンとか、うっふんだとか。

つなり、妄想とのギャップに涙したのだ。

「青いねぇ...」

がリコの隣で呟くが、彼女の耳には入っていないらしい。

リコは選手達に向かって笑顔を向ける。

右手の親指を立てて自分の左肩から右肩に引き、その親指を下に向けた。

そのメッセージを彼らはきっちり受け取ったようで、ガクガクと震えている。

ちなみに、マネージャーにも夢を持っていたらしい彼は同じように大層嘆いた。

それに対しての取った反応は、

「はっ!」

『鼻で笑う』だった。

誰かの娯楽のためにマネージャーになっているわけではないので、その要望にお応えできなくても全く構わない。

「俺、んがちょっと怖ぇんだけど...」

日向が言う。

分かりやすいリコよりもの反応は判断が難しい。

「まあ、どの道勝てば良いんだよ..です」


第1Q終了直前にダンクを決めようとした火神はゴールにおでこを突き刺し、転倒した。

半分意識が飛んでいたため、黒子がその足を掴み、引き摺りながらベンチに帰ってくる。

「黒子くん」

がつついてスタンドに視線を向けた。

その視線の先には、桐皇の今吉と桜井がいた。

「偵察ですか」

「土曜なのに、制服なんだね」

「...さん」

少し呆れながら黒子が名を呼ぶとはにこりと微笑む。

試合は誠凛の圧勝だった。

ダブルチームがついていた火神はその試合、良いところなしでフラストレーションが溜まりまくった。

黒子が桐皇の存在を教え、気持ちが切り替わったのか最後にレーンアップを決めた。

バランスを崩してこけたが、最後にやっとイイトコロを見せることができた。



その翌日、決勝リーグが始まった。

緒戦は東京の三大王者のひとつ、泉真館だ。

ただし、この先も王者と呼ばれるかどうかは微妙なところになっている。

夏の、I・H予選ではかなりボロボロに負けた相手ではあるが、早々にリベンジを果たすことが出来た。

誠凛は泉真館相手に危なげなくまず勝利を手にする。

そして、隣のコートの秀徳も勝利した。

はすっとスタンドに視線を向ける。



リコに呼ばれて「はい」と返事をし、帰り支度を済ませてコートを後にした。

(『悪童』..かー...やだなー、あの人嫌いだなー)

基本的に人を嫌いにならないはそう思っていた。

嫌いという感情はその対象に興味があって初めて生ずる感情だ。彼女は基本的に他人に興味の無いため、嫌いになる相手も殆ど居ない。

帝光中学時代は、とりあえず、あの悪童のマッチアップが赤司だったので見ていてかなりスカッとしたものだ。

ただ、悪童・花宮真のいるチームと試合をした後、皆は物凄く後味が悪そうだった。

見てるほうもかなり後味が悪かったのだ。当然だろう。


しかし、それよりもまずは次の秀徳戦だ。

以前の試合は、秀徳が王者として挑戦を受ける立場だったので、本人達にも無意識にあったかもしれない僅かばかりの驕りのようなものに付け入ることが出来た。

しかし、今度は、かれらは挑戦者として向かってくる。

かといって、誠凛はそれを悠々と受けてたつことができるほどの実力差があるわけではない。

寧ろ、夏の海合宿では練習試合に全て負けた。

「落とせないんだけどなー...」

ポツリと呟き、学校までの道のりを皆と共に歩いた。









桜風
12.9.23


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