| (何か、殺伐とした...) 部員達の表情を見ながらは思った。 リコから話を聞いているので、2年には思うところがあるのはわかるが、今年入った1年も同じような表情になっている。 アップの時間が終わり、木吉が膝にテーピングをしようとすると、降旗達が自分たちにさせて欲しいと言ってきた。 どうやら、彼らも昨年の霧崎第一戦のことは誰かから聞いたようだ。 「できました」と言った声に反応してがチラッと見たら、それはテーピングと言うよりも、巻きすぎてギプスのような状態だ。 「出来ましたじゃないでしょ!」 と一番手近にいた河原の頭をはたいたリコが 「」 と声を掛ける。 「はい?」 「鉄平のテーピングお願い」 リコに言われて「はい」と返事したが手際よくテーピングをする。 「上手いなー」 感心したように木吉が呟いた。 立ち上がってグッと足に力を入れても大丈夫だと確認した。 テーピングを失敗してしょんぼりしていた降旗達の頭をぽんぽんと叩きながら彼は礼をいい、円陣に加わる。 (いやぁ、感心するくらいの上手なファウルだこと) 普段だったら気にせずにこういった類の言葉も口にするだが、今零したらどうなるかを考えるとさすがに零せない感想だ。 良いか悪いかは別として、笛が鳴らなかったらファウルではないという理屈は通っているとは思う。 勿論、見ていて腹が立つことは腹が立つし、胸クソ悪いなとも思う。 ただし、コートの中の選手達の方がそれを体に受けているため余計に血圧は上がってそうだ。 コートに背を向けて氷の用意をしていると、ビタンと何かか床に激突する音が聞こえた。 驚いて振り返ると、火神がうつ伏せていた。 「え、今のどうしたの?」 「大丈夫、黒子君が止めただけよ」 ギリッと奥歯を噛み締めてリコが言う。彼女はタイムアウトを告げに立ち上がった。 戻ってきた火神がリコのゲンコツを食らって悶絶する。 「日向さん」 背後から声をかけて氷嚢を渡し、木吉にも同じものを渡す。 「悪いな...」 受け取った木吉の腕や脚には既に痣がいくつもできていた。 そして、木吉はこの先のゴール下は自分だけで対応すると言う。 ラフプレーが酷いのは中だから、そんなことをしたら木吉が集中的に痛めつけられると日向が反対するが、彼はそのために戻ってきたと言う。 リコが交代を口にしたが、交代をさせたら恨むといって彼はコートに戻っていった。 第2Q終了後のインターバルで控え室に戻った。 5点リードで折り返すことが出来たが、選手達、特に木吉が満身創痍だった。 さすがにこの空気の中、ミキサーをガーガー鳴らすのは気が引けたが、それ以外の方法もなく、肩身の狭い思いをしながらはいつものようにドリンクを作っていた。 気が立っている火神が控え室の中のベンチを蹴っ飛ばし、黒子が静かに注意をする。 (あー...) は遠い目をした。黒子がメチャクチャ怒っている。 彼は意外と沸点が低い方だと思うが、それでもここまで怒った彼を見た記憶がない。 後半始まってすぐ、黒子のパスですぐに点を入れて彼はひとまずベンチに下がる。 相手も選手が交代した。 それからは向こうペースで伊月のパスが悉くカットされる。 「読まれてますね」 ポツリとが言った。 「どういうこと?」 「伊月さんってば、凄く素直なPGですから」 「...は?ごめん、今は私も結構イラついてるから」 はっきりと、端的に分かりやすく言えとリコが言う。 「前半でパターンを読まれてるんです」 「は?え、待って。それって...」 そう言ってをじっと見た。 「花宮さん、たぶん、フツーに頭はいいですよ。使い方がサイアクなだけで」 前半の全てのパスコース、パスパターンを頭に入れてそれを読んでスティールしているのだとが言った。 しかも、アレだけのラフプレーを受けて頭に血が上れば攻撃もより単調になって読みやすい。 「それって...」 手も足も出ないのではないか、とリコが言葉を飲む。 「似たようなところで、桃井がいますけどね。あの子はデータからこの先の選手の成長まで読める。つまり、前の試合で出来なかったことがこの試合でできるようになっているとか、そういうのが分かるんです」 「それは、前にに聞いたわ」 「そんな風に読めちゃうから、あの子は基本的に『男は単純』と考えています。ただし、桃井が読めない人間が、わたしが知っている限り2人。ひとりは、陽泉に行った紫原くん。そして、もうひとりが...」 そう言ってチラッと黒子を見た。 ブザーが鳴り、第3Qが終了する。 はベンチから立ち上がってタオルやドリンクの準備をした。 ベンチに戻ってきた選手達は、やはりイラついていた。 あの伊月がそれを隠さないのをは意外に思っていた。 打つ手なし、誰もがそう思っていた。 「破れるかも知れません」 黒子が口を開いた。 黒子の作戦を聞いたリコは「これは賭けね」と言ってを見た。 は苦笑して肩を竦める。 おそらく、先ほど彼女が言おうとしたのはこれだったのだ。 「できるさ」と木吉が言う。 ブザーが鳴って最終Qが始まる。 開始早々得点することがで来た。 リコは安堵の息を吐く。 (正直、見ているほうも心臓に悪いわ...) そう思って隣に座るを見るとケロッとしていた。 「えっと...?」 「はい?」 「もうちょっと、ハラハラしよう」 そういわれて苦笑した。 「花宮さんは、あの性格の悪さから考えてまだ何か隠し玉を持ってるかもしれませんけど。周りはこれ以上の手は持っていないと思います」 「ん?」 「途中から出てきた、瀬戸さんって人は花宮さんのサポートするためだけに出てきたんでしょうし」 「そうなの?」 「攻撃パターンがそれこそ、1個とか2個だったら花宮さんが読んでチームメイトにサインを送ってそれで対応できますけど。普通、そんな少ないパターンじゃないでしょう?そしたら、相手の動きを読んだ花宮さんがどう考えているかと読んでサポートする人が要ると思うんです」 (そうかも...) 「てか、のそういうのってどうやって?」 「『そういうの』ですか?」 (わたしが言ってるのは、受け売りと机上の空論だしなー...) そう思いながら頭に浮かんだ人物に思わず溜息をつく。 この会話の数分後、誠凛高校はウィンターカップへの切符を手にした。 |
桜風
12.9.30
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