| (長湯は得意じゃない...) 温泉のふちの石に上半身をべたーと付けてほぼ寝転んだ状態では思っていた。乙女として、その姿勢はどうかと思うと突っ込まれてもやむをえない姿勢だ。 本日、誠凛高校バスケ部はウィンターカップの疲れを取るべく、温泉に来ている。 リコのクラスメイトの親戚が経営している旅館で、シーズンオフだから安く宿泊できるというのだ。 「お待たせー」 隣から賑やかな声が聞こえてきたので、リコが一旦中座した。 そろそろ出たいと思っていたときでのそれで、は仕方なくリコの帰りを待っていた。 「どうでした?」 「あははー、沈めてきた」 笑顔でリコが返す。 「誠凛高校バスケ部、湯煙殺人事件」 「殺してないわよ!」 が口に出したタイトルに鋭いツッコミが入る。 「ご一緒してもいいですかー?」 「いいよー」 不意に現れた声にがやっぱり寝そべったまま応えた。 「ねえ、乙女としてそれってどうなの?」 「カントクー。もう出て良いですか?」 「え、ちょ...!」 (この子、あまり得意じゃないんだけど...!) リコが心の中でに訴えた。 どうも通じたらしく、は湯の中にざぶんと戻る。 「出ないの?」 首を傾げて不意に現れた声の主、桐皇学園バスケ部マネージャー桃井さつきが問う。 「や、ここで湯煙殺人事件が起きても...んで、ウチと桐皇は初戦で当たるんだ?」 「え?!」とリコが声を上げるのと同時に「何で知ってるの?!」と桃井が声を上げた。 「桃井の雰囲気。もう、言いたくてウズウズしてるってのが伝わってきてさー。極秘で入手したものなんだから、その情報は拡散したら拙いはずでしょ。大丈夫?」 「大丈夫よ」 「ま、高校生の桃井が入手できた情報だから、場合によっては他校でも知ってる人はいるだろうから、あんまりナーバスになる必要はないか。けど、それならこちらも好都合」 が言うと「どういう意味?」とちょっと何か癇に障ったのか、少しだけ桃井の発した声が鋭い。 「や、時間が掛かると利子払うの大変だからさー」 のんびりして言う。 「利子?」 「借りは返さなきゃ」 そう言ってがにこりと微笑む。 「へー、返すアテなんてあるの?無冠の五将の鉄心だけで返せる借りかしら?」 挑発的に桃井が言う。 「バスケは、コートの中の5人でするものでしょ。そういえば、桃井は黒子くんのドライブはもう解析済み?」 の言葉に彼女は黙る。 「こういうときは、嘘でも『トーゼン』って返すトコでしょ。身内ならともかく、わたしと桃井はベンチが違うんだから」 「でも、ちょっと待って。桐皇もウチも東京代表でしょ?だったら、初戦で当たるなんておかしいじゃない」 リコが言う。 「桐皇は、東京代表ではありません」 が言う。 「どういうこと?」 「特別枠での出場なので、東京代表ってことにはならないんです」 桃井が言う。 「だから、東京代表は、テツ君と、みどりんです」 「学校名で言いなよ」 呆れたようにが返す。 「初戦で終わってしまうのは残念ですけど、いい試合をしましょうね」 桃井がリコに向かっていった。 「随分上から物を言ってくれるのね!なめんじゃないわよ。ウチの男達だってヤワじゃないわ。首洗って待ってなさい!!」 「あー、桃井。気を落とすこと無いよ。2回戦から、フツーに観戦しに来れば良いんだから。会場が東京で良かったねー」 リコの言葉にが続けた。桃井が反論しようと振り返るとがぐったりしてた。 「ちょ、?!」 「カントクー、もう無理」 「?!」 結局、今の今までにらみ合ってたリコと桃井が協力してを脱衣場まで運んだ。 「桃井さん、ここはいいわ」 リコが言うと桃井は少し心配そうに振り返ってまた温泉に戻っていく。 とりあえず、裸で放置するわけにはいかないのでに服だけは着せてあとは、リコがうちわで扇いでやっていた。 「桐皇、か...」 リコが呟く。 「遅かれ早かれですよ。それに、初っ端から使えます。これはラッキー」 大人しくリコに扇いでもらいながらが言う。 「そうね。アレだけ舐めきってくれてると...」 「ああ、口では相当舐めてますけど、死角は殆ど無いですから。桃井の情報収集には」 「ホント、やな子」 溜息を吐きながらリコが言う。 「ただ、あの子の射程にマネージャーは入ってないと思います。とりあえず、次にウチとやるまでは」 「それを祈っておくわ」 がゆっくりと体を起こした。 「もう大丈夫?」 「ええ、すみません」 リコと会話をしながらは別のことを考えていた。 (一回、見に行ってみようかなー...) ちょっと足を伸ばして西の方に行ってみようかと考えていたのだ。 後でリコに今後のスケジュールを確認しようと決めて、とりあえず、水分補給のためにリコと共に脱衣場を後にした。 |
桜風
12.10.5
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