| 翌日の洛山高校のバスケ部体育館のギャラリーは盛況だった。 関西の高校は勿論、練習試合の相手が大学ということもあり、大学関係者らしき人たちも集まっている。 は何とかスペースを見つけて確保した。 赤司のチームメイトがを見つけてヒラヒラと手を振ってくる。 はペコリと頭を下げた。 結局、赤司との勝負はドローだった。 よって、赤司の出場は望めないだろう。 だが、チームである限り赤司以外の選手がコートに立つ。バスケは5人で1チームだから。 録画機器をセットして試合を観戦した。 第4Qで洛山に選手の交替がある。 「え...」 赤司が出てきた。 彼はを見上げた。 (あの一手に敬意を表して) のあの一手があったからと言って自分が負けたかは分からない。 寧ろ、あの消耗具合から考えると集中力が切れて崩れた可能性のほうが大きい。だが... は、慌ててスイッチを入れた。 完全に油断していた。 昨日、赤司と勝負をしたし、ドローだったから出来れば今日は頭を休ませようと思っていたのに彼が出てきてしまったのだ。 試合は、洛山高校が勝利した。 は疲れてぐったりとしていた。床に座り込んでいる。 「それで良く僕に試合に出るように言えたもんだ」 心底呆れたように赤司が言う。 試合が終わり、以外のギャラリーは殆ど帰っていた。 後はスカウトのために残っているとかそういうところくらいなのだろう。 3年は進路が決まっているかもしれないが、2年はこれからだ。 「赤司君」 彼も既にスカウトの対象に入っているらしい。 しかし、赤司は声をかけてきて人物を睨みつけた。 どこかの学校のスカウトは名刺だけ渡して逃げるようにいなくなった。 赤司は、受け取った名刺を不愉快そうにぐしゃっと潰してぽいと投げる。 「あいて!」という声が聞こえた。 ギャラリーの下にいた誰かに当たったらしい。 「何で出てくれたの?」 「ドローのときの条件を決めていなかったからな。当初君が望んでいたのは、僕のフル出場だろう?」 「そうです」 「だから、フル出場する義理はなくなっていた。君は勝ってない」 「そうね」とが頷く。 「だが、君は負けてもいない。だから、10分だけ出てみることにしたんだ」 そう言って赤司がを見た。 つまり、今度はに何を譲歩するのかと問うているのだ。 この赤司が譲歩したとなると、結構高くつく。 が悩んでいると赤司はごろんと寝転んで彼女の脚に頭を載せた。 「赤司くん?」 「何だ?」 「これ..で?」 「僕は本当に君に甘いな。まあ、いつでも手に入るから甘いんだろうけどな」 (いやいやいや。いつも手に入らないよ?) は心の中で盛大に突っ込みを入れる。 「10分で」 が言うと 「20分」 と赤司が言う。 「...いいよ」 「交渉成立だ」 そう言って赤司は目を瞑り、意外なことに本当に眠ってしまった。 「あらら」 苦笑しては窓の外を流れる雲を眺めて時間を潰すことにした。 「全く、何て無防備なんだ...」 目を明けるとが目を瞑っている。 声を掛けてみたが彼女も寝てしまったようだ。 赤司はゆっくり体を起こした。 この警戒心の無さに少し腹が立った。 赤司は彼女の首筋に唇を寄せて白い肌に赤い印をつけた。 「なに?!」 驚いて目を覚ましたの目の前に赤司の顔がある。 「わっ!いてっ」 思いも拠らない距離に赤司の顔があり、体を引くと手すりに頭をぶつけた。 後頭部を擦っているを若干冷ややかに見つめた赤司は 「帰りの時間は大丈夫なのかい?」 と問う。 「へ?わ!もうこんな時間...!」 20分のつもりが1時間。 「の..のぉ...」 同じ姿勢で1時間。さらに赤司が膝枕で寝ていたので脚の痺れがかなり辛い。 「う、動けない」 「じゃあ、君はウチ寮に持って帰ろうか」 「大丈夫、動ける。超動ける!お気遣いなく!!」 はそう言ってゾンビみたいな動きをしつつも何とか体を動かそうとし、赤司は愉快そうに眺めていた。 |
桜風
12.10.10
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