| 「はあ?!」 リコが盛大な声を上げた。 先ほど、キセキの世代の間で勝手に決まってしまったことを話したのだ。 「で、はそれでいいの?」 「いいわけないですよ。京都以外なら、逃げられそうな気もするんですけど...」 つまり、赤司が相手だとも難しいと思っているらしい。 「何なのよ、キセキの世代!」 ぷんすか怒っているリコを「まあまあ」と宥めたのは木吉だった。 「元々、ウチは優勝するつもりでこの大会に出てるんだし。はウチの子だよ。簡単に手放すものか」 (お父さん...!) は心の中で木吉に向かってそう言う。 「ま、確かに。それに、を欲しいとか言っている子たちを倒して頂点に立つなら、最も分かりやすい図式だし」 リコが苦笑して言う。 この大会、誠凛は初戦で桐皇学園と当たる。青峰の居る学校だ。 第2、第3試合はキセキの世代はいないが、準々決勝はおそらく紫原のいる陽泉高校と当たり、準決勝が黄瀬の海常と当たり、最後に決勝で赤司の洛山か緑間の秀徳となる。 勿論、番狂わせもあるだろうし、誠凛が勝ち上がらなければ意味が無い。 「とりあえず、まずは桐皇戦ね」 気を取り直したリコが言う。 チラッとを見た。 彼女は頷く。 「とっとと借りは返しましょう!」 リコの言葉に皆は声を上げる。 試合前のアップの時間、桃井は「あれ?」と呟く。 「どうかしましたか?」 隣に居た監督に声を掛けられた。 「いえ、何でもありません...」 (がいない...?) 開会式の時には彼女の姿を見た。 だが、今この場に居ない。 ドリンクの準備..にしては遅い。彼女の手際のよさは自分が一番よく知っている。 体調を崩したのかと少し心配したが、今は他人の心配をしている場合ではない。 「カントクー。は?」 日向が問う。 「スタンドよ」 リコの答えに「え?!」と皆がそれぞれ驚きの声を上げる。 「何で!」 「種明かしは、この試合が終わってから」 そう言ってこの話を終わらせ、試合に集中させた。 ハーフタイムに入った。桐皇のリードで折り返す。 黒子が対キセキの世代として手にしていた武器は悉く青峰に止められた。 手も足も出ず、黒子は一度ベンチに下がった。 前半終了を告げるブザーが鳴ってはふらつきながらも慌てて控え室に向かう。 リコに少し話をして体力回復ドリンクを作りながら控え室の中を見渡した。 黒子と火神が居ない。 皆にドリンクを配り終わった頃、黒子と火神が戻ってきた。 「、どこにいたんだよ」 「スタンド」 火神の問いに短く答えて火神と黒子にドリンクを渡した。 彼らはぐいとそれを飲み干し、そしてコートへと向かっていく。 軽く片づけをしていると黒子が「さん」と声をかけてきた。 もう控え室を出たのだと思っていたは少し驚く。 「びっくりした」 「すみません」と黒子は謝罪し、「僕は...」と話を始めた。 先ほどの、前半で青峰が黒子の努力を無駄だと言ったらしい。 「ねえ、黒子くん。努力したらそれが全部結果に繋がって勝てるとは限らない」 が言う。 黒子は彼女をじっと見た。 「けど、努力すらしなかったら結果はそもそも出てこない。誰かに否定されたからと言って、努力は消えてなくならない。だけどね、ひとつだけ消えてしまうことはあるよ」 はそう言って黒子をまっすぐ見た。 「黒子くんが、黒子くんの努力を否定すること。それをしてしまったら、黒子くんの努力は本当に無駄になってしまう。諦めたということになるからね」 の言葉に黒子は瞠目した。 「黒子くん。わたしは、半ば巻き込まれる形でこの誠凛高校バスケ部に入部してしまった。けど、今は誠凛高校バスケ部が好き。なのに、赤司くんたちみんなが好き勝手に言って...今回の件で、わたしは、自分の力で自分のことを守れないのよね」 そう言って黒子を見た。 「さんは、僕が..僕たちが守ります。さんをキセキの世代の誰にも渡しません」 黒子がきっぱりと言った。 「期待してるよ、誠凛高校バスケ部さん。試合に勝ったら一緒に青峰くんに『やーい、ガングロー』って言おうよ」 が言うと黒子は笑う。 「そうですね。たまにはそれもいいかもしれません」 「さ、まずは1勝といきましょう」 そう言ってが促し、黒子は「はい」と頷いた。 |
桜風
12.10.20
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