| 「そうね、青峰くんに頼んでみたら?」 「それもそうですね」 桐皇との試合の翌日、相談を持ちかけてのアドバイスを聞いた黒子は素直に頷いた。 元々、この2人は『昨日の敵は何とやら』のタイプである。 黒子に呼び出しに青峰は素直に応じた。 黒子が彼を呼び出した理由は、シュートを教えてもらうためだ。 彼の知っている選手の中で最もシュートが上手いのは青峰だと言う。 おそらく、もその点は同じ意見だったらしく、すぐに青峰に教えを請うことを提案してきたのだ。 「何でオレが教えなきゃいけねーんだよ」 ブツブツと文句を言いつつ、青峰がアドバイスをする。 「あら、やっぱり優しい」 「うお!」 公園のゴール下で黒子は練習していた。 その様子を熱心に見守り、時にはアドバイスをしていた青峰の隣にひょっこり人が現れたのだ。 「おどかすんじゃねぇよ!」 相当に驚いたらしい。青峰は威嚇してくる。 「あは、ゴメンゴメン」 笑っては返した。 「...何の用だよ」 憮然と言う青峰に「別に青峰くんに用があったわけではなくて」とが言う。 「は?」 「青峰くんのふざけた提案のお陰で、わたしの身の振り方が勝手に決められてしまうらしいので、ここは黒子くんにうんと頑張ってもらわなきゃいけないのですよ」 チクリと嫌味を放つ。 心当たりがある青峰はグッと詰まる。 「んで、何しに来たんだよ」 「差し入れ。おなか空くでしょ?」 「なるほどな。おい、テツ!」 の言葉を聞いて青峰が黒子の名を呼ぶ。 彼は振り返り、「さん?」と首を傾げた。 「が差し入れだとよ。お前に」 「青峰くんにもあるよ」 さらっとが言う。 「お前、さっきオレに用があったわけじゃないっつったじゃねぇか!」 怒鳴られては肩を竦める。 「メインは黒子くんの応援。サブは、黒子くんの師匠に賄賂?」 「賄賂って何だよ」 「『賄賂』とは、『自分に都合のいいようにとりはからってもらう目的で他人に贈る品物や金銭』です。小学館現代国語例解辞典第二版より」 「...意味を聞いてるわけじゃねぇよ」 唸るように青峰が言う。 その間に黒子は、に渡されたウェットティッシュで手を拭き、彼女が持ってきた差し入れのおにぎりを一つ掴んでパクリと食べた。具は梅干だった。 「では、青峰くんは何を聞かれたのかしら?」 「さん、梅干ももしかして手作りですか?塩加減が丁度いいです」 「そう?良かった」 「こら、テツ。邪魔すんな」 「...すみません」 「じゃあ、『お礼』?」 「お礼?」 鸚鵡返しに聞く青峰には頷いた。 「前払い的な。これで黒子くんはシュートが打てるようになる!ドフリーでレイアップを落とすことがなくなる!」 「ドリブルも出来ないさんに言われるとちょっと引っかかりますけど、がんばります」 「今の、わたしも何か引っかかった」 そう言っては笑う。 「...んじゃ、そういうことなら。オレも食う」 そう言って青峰もおにぎりに手を伸ばした。 おにぎりを掴む前にに腕を掴まれて手を拭かれる。 「青峰君、子供みたいです」 「でっかいのにねー」 「うるせーよ!」 の差し入れを腹に納めて練習を再開する。 「さん、ありがとうございました」 「いえいえ。無理のないように、頑張って」 そう言っては彼らに手を振って自転車に向かう。 そして、ふと足を止めて「忘れてた」と呟き、くるりと振り返った。 「青峰くん」 「あー?」 「やーい、ガングロー!」 「...ああ?!」 意味の分からない、たぶん悪口を言われて青峰はを威嚇したが彼女は何処吹く風で「じゃあねー」と公園を後にした。 「何なんだよ、あいつ...」 「そういえば、青峰君は謝らないんですか?」 「何をだよ」 憮然と聞き返す彼に 「夏休みの、さんへの心無い暴言、です」 と黒子は静かに言った。 俯いて黙っている青峰に「まあ、さんは感謝しているらしいですけどね」と黒子が呟く。 「は?」 「言われっ放しはイヤだから本気を出すって決めて、昨日、勝ちました」 「別に、が何かしたわけじゃねぇだろ...」 「あと、さっきの『やーい、ガングロー』ってのは、本気出して、勝って青峰君に言ってやるんだって決めていたことのようです」 「ガキか!」 「...人の事は言えないと思います」 黒子の突っ込みに青峰はぐうの音も出なかった。 そして、彼女が去っていった方角を見て、苦笑した。 「んだよ、本気出す気になったのかよ...」 どこか満足げに呟いた。 |
桜風
12.10.21
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