| 準々決勝の当日、黒子は確率が低いながらもシュートを身に付けて臨むことが出来た。 控え室で諸々の準備をしているが黒子を振り返る。 「青峰先生はどうだった?」 「免許皆伝とまではいきませんでしたが...」 何せ、元々シュートセンスが無いとまで言われてしまったのだ。 だが、10本中7本の確率で入るようになった。実戦で使えるレベルには達したのだ。 「...ストバス以来だね」 が言う。 「はい。さんは今日も前半は...」 そう言って天井、スタンドを指差した。 「うん。ただ、前半はあまり動きがないような気もするんだけどねー」 どうしようかと思ったらしい。 ただ、何かあったときのためにとリコにいわれたそうだ。 「大きなことは何も無くても、データは集まるしね。というか、前半にあの大きい人が動き始めると正直辛いしねー」 苦笑してが言う。 「そう..ですね...」 黒子が深刻な表情を浮かべる。 紫原が動かないことは即ちこちらが得点できていないことにつながり、動かれると止めるのが至難の業。 何より... (紫原くん、絶対黒子くんとか木吉さんみたいなタイプ大嫌いだろうしねー...動くのは確実だろうけど) 『頑張る』という姿が好きではないらしい。 違う。報われないのにそれを知っていて尚も努力している人が好きではないのだ。 ただし、報われないというのは、紫原の評価だし彼の観点であって、努力している本人達はそんな風に思っているはずはない。 思っていたら、努力なんて出来るはずはない。 は、人の努力に敬意は表す。 しかし、自分はそこまで努力家というほどではない。 出来ないと思ったらそれを切り捨てていく。大抵、出来なくても困らないものばかりだから。 何より、基本的に執着というものがない。 だからだろうか、何となく紫原の気持ちも分かる。 彼はきっと羨ましいのだ。自分にないものを持っている、努力をし続けられる、諦めない人たちが。 紫原は、その彼らが欲するそれを望む望まないと関わらず、簡単に手に入れられるからきっと詰まらないのだ。 だから、その自分の羨ましいという気持ちを否定するように努力自体無駄だと思わせるために彼はその力を遺憾なく発揮する。 おそらくこの試合でも彼はオフェンスに参加してくるはずだ。 中学時代に、紫原の癇に障ったプレイをした人がいたチームは、彼がオフェンスに参加したお陰で散々な試合結果となった。 確実に、木吉と黒子は癇に障るはずだ。 第2Qに入り、ふとその視界にはいるはずのない人がいた。 「...?」 桃井は青峰と共に黒子の試合を観戦していた。 今回もなぜかがベンチにいなかった。 1回戦、自分たちと試合をしたときもそうだった。そして、後半は何食わぬ顔でベンチにいたのだ。 そして今、桃井の視界に入っているのはだ。間違いない。誠凛のジャージを着ているのだから。 では、何故スタンドに彼女がいるのだろうか。 マネージャーが複数いる場合は、1人がベンチに入り、残りはスタンドから観戦と言うのはおかしくない。 しかし、誠凛のマネージャーはだけだ。つまり、ベンチ入りマネージャーも彼女だけ。 そして、彼女の観戦の様子に何となく違和感を覚える。試合を見ているのだろうか... 第2Qの終了のブザーが鳴ると、フラフラしながら立ち上がり、やっぱりフラフラしながらそれでも早足でスタンドからいなくなった。 「どうした、さつき」 隣に立つ青峰が桃井の様子に気付き、声をかけてきた。 「あ、ううん。何でもない...」 もしかしたら、1回戦も同じようにしていたのだろうか。 (...何のために?) 「まさか...!」 「便所か?」 「ちがう!!」 桃井はデリカシーのない幼馴染を睨み上げた。 (たぶん、間違いない。の記憶力なら...) 彼女の脅威の記憶力には、何度か助けられたこともあった。 それを思い出し、桃井は眉間に皺を寄せる。 (なんで、を戦力と見なかったんだろう) 自己嫌悪に陥りつつも、どうやって確認しようかと思案する。 どうやら、誠凛の、の行動に対する情報統制は完璧のようだ。 本人に聞いたら、意外とあっさり話してくれるかもしれない。 悶々と考えているうちに後半のため、選手達が入場してきた。 誠凛のベンチにの姿を認める。 「お、は前半サボリだったのか?」 「大ちゃんじゃないんだから...」 呆れて桃井は返し、溜息を吐いた。 |
桜風
12.10.26
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