| ふらふらのが合流した。 「大丈夫?」 リコに問われ 「大丈夫です」 と彼女は弱々しく笑った。 試合は後半。 誠凛は、まずは黒子を下げて火神と木吉を中心に試合を展開していくことになった。 黒子が桐皇で見せたミスディレクションオーバーフローは、陽泉では使えないとリコがいう。 正確には使えないのではなく、桐皇戦ほどの効果は期待できないということなのだ。 試合が始まり、コートの中の氷室のプレイをみて感嘆の溜息をつくチームメイトに聞かれ、氷室の身に纏っている空気はキセキの世代と遜色ないと黒子は評した。 だが、はそれに首を傾げている。 巧いとは思う。 だが、赤司の言葉もあるし、何となく彼が『届かない』と言った場所がどこかがわかったはおそらくそうなのだろうと思っていた。 赤司は火神は認めていたような気がするし、たぶん、彼は『キセキの世代』と『同じ』なのだろう。 ならば、そこにはきっと越えられない大きな壁があるはずなのだ。 ベンチでうずうずしている黒子には苦笑した。 「もう出たいの?」 「ええ、まあ...さん、大丈夫ですか?」 「前半は大きな動きがなかったからね」 はそういって頷く。 そうは言っても、彼女はたぶん家に帰ってもコレをやっているのだろうし。 「ダイエットのための体力づくり。サボってなかったからね」 黒子が考えていることを察してが言う。 「さんが、実は努力家というのは知ってます」 (努力家って初めて言われたわー...) 大抵のことは記憶力の良さと運動神経の良さのおかげで卒なくこなせており、そもそも『努力』ということをした記憶がない。 基本的に手を抜けと親に言われて以来、手を抜いて適当なところに立っていたつもりだ。 (そういえば。ものすごくがんばってるな、わたし) 自分で言うのも何だが、そう思う。 たぶん、生まれて初めてだ。 火神は『兄』と慕っている氷室に対して非常になることが出来ず、一旦ベンチに下げられる。 その間に、センターの木吉がポイントガードとなり、試合を組み立てる。 少しずつ試合の流れが誠凛に傾き、火神がコートに戻った。 そして、誠凛が最も危惧していた紫原がOFに参加してきた。 彼を止められる者はなく、木吉と火神がブロックに跳んで、彼に吹っ飛ばされた。 センターとポイントガードを両立させていた木吉だったが、膝と体力の限界を迎えてしまったようで、立てない。 彼を起こしたのは紫原だった。 (あーあー...) は隣に座っている黒子の怒気を感じていた。 彼の言葉を要約すると、『木吉のこれまでの努力は無駄だった。何も出来なかった』ということになる。 態々言わなくてもいいのだが、彼は努力を否定する。そして、黒子は努力を肯定する。 中学の頃からそこだけはお互い相容れなかった紫原と黒子だ。 何度も、その部分で対立していたのは見ているし、それぞれの歩んできた道が違うこと、即ち価値観が違うのは仕方のないことだとも思う。 第3Qが終わって、誠凛は4点ビハインドだった。 第4Qが始まり、木吉がリコに頼み事をする。 もう一度試合に出られるようにして欲しいと言うのだ。 「できるんですか?」 「怪我はともかく、疲労は何とか出来る」 リコが言う。 どうせ止めても無理矢理出るのだろうし、と。 「河原君、手を貸して。も」 「どこかに行くんですか?」 「医務室」 木吉に肩を貸しながら「ベンチ裏じゃダメなんですか?」と河原が問う。 「だって、あそこで盛大に悲鳴を上げさせるわけにはいかないでしょ?」 黒く笑ってリコが言う。 父直伝の超速マッサージをするとのこと。地獄の痛みと引き換えに、短時間で効果抜群。疲労回復間違いないとか。 「まあ、ほら。何かを得るには何かを失わないよと。等価交換です」 はそういいながら、リコが自分に求めているものを察して控え室に向かった。 医務室から少し離れたところから悲鳴が良く聞こえる。 「うーん、文化祭のときの黄瀬くん並みのいい悲鳴じゃない」 は呟き、河原の姿を見つけた。 「どうしたの?」 「や、戻って良いのかわかないし」 (なるほど。カントク指示しなかったのかー...) 「戻ってて良いと思うよ」 「けど」 「必要になったらまた来てもらうことになると思うけど。カントクはまた体育館..コートに戻るでしょ?試合の状況を見てまた呼びに来てもらうことになるんじゃないかな?きっと、医務室で多少ゆっくりして木吉さんは体力の回復を図るでしょうし」 「じゃあ、俺戻っておくけど...」 「うん」 河原の言葉に頷いては今まで彼が立っていた場所に立った。 悲鳴が収まってもリコはすぐに出てこなかった。 (乱入したら、馬に蹴られるかもしれないもんねぇ...) 1分程たってドアが開く。 「、後お願い」 「はい」 の返事を聞いてリコは駆け出した。 「木吉さん?」 ひょこっと顔を覗きこむと 「おー、」 と彼は軽く手を上げた。 「ちょっと五月蝿くなりますけど、我慢してくださいね」 そう言って控え室から取ってきたミキサーを動かす。 「は...」 「はい」 作ったドリンクを渡した。 「何でウチの学校に入ったんだ?」 「は?」 きょとんとした。 「や、今時間あるし。何か話をしよう」 「...休んでください。話をすることも体力を使います」 が言うと彼は苦笑した。彼女から渡されたドリンクを一気飲みして、ベッドにゴロリと寝転ぶ。 「俺はさー」 「いいから黙っててくださいね」 が止める。 「そんなに話がしたかったら、優勝後の祝勝会でしましょう。入学動機くらい、そのときにいくらでもお話しますから。動機らしい動機はないんですけど...」 が言うと木吉は笑った。 「そうか、祝勝会か」 「...負けちゃうと、わたしのお別れ会になるんですけどね。たぶん」 遠い目をしてが言う。 「それは、やだなぁ」 「でしょ?わたしだって、ご飯は美味しく食べたいです」 の言葉に木吉は笑い、 「そうだな、ウチのチームはじゃじゃ馬が2人揃ってないとな」 と呟いた。 少しして河原が呼びに来た。 「ラスト1分の勝負だそうです」 彼の言葉に頷いて木吉が起き上がる。 「祝勝会、何食べるかなー」 「何がいいですかね。今の季節なら、鍋ですか?これまた種類が多いから悩みますね」 木吉とがそんな会話をしながら体育館に向かう。 (祝勝会?) これまでの会話が見えていない河原が首を傾げて彼らの後ろを歩く。 誠凛と陽泉の試合は、1点の僅差で、誠凛が勝利を収めた。 |
桜風
12.10.26
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