| 本日、この会場で試合は2試合。 準決勝、洛山・秀徳戦と誠凛・海常戦だ。 先に洛山・秀徳戦がある。 「カントク」 控え室でが声をかけた。 (な、なに...) 昨日のことで何かあるのかと構えていると、「今日の海常、捨てていいですか」とが言った。 「へ?」 「たぶん、第1試合を記録したら、それでもう動けなくなると思います」 第1試合の勝者が明日の決勝に上がる。負けたほうは3位決定戦。つまり、どちらとも当たる可能性があるのだ。 「明日の試合..決勝に照準を合わせるって事?」 はコクリと頷いた。 「黄瀬くんを、海常を舐めているわけじゃないです。ただ、あまりにもデータが少ないんです、洛山..というか赤司くんは」 リコは少し悩んだ。 昨日、黄瀬の出した奥の手には驚いた。だが、あれ以上の奥の手は考えられない。おそらくあれには時間制限があるだろうし、何より、黄瀬の体はもうボロボロだ。 相手チームのエースの不調は、ウチの勝利への可能性が上がることに繋がる。勿論、一筋縄には行かないだろうが。 おそらく、今日の試合は真っ向勝負以外ない。こちらは初戦で既に奥の手を使っているから余計に小細工は無い。 「...わかったわ。確かに、洛山はデータが欲しいわよね」 「スタメンはだいたい固定されているんですけど...」 赤司は基本的に試合に出ていない。 「じゃあ、の思考回路がまともなうちにちょっと話を聞かせて」 そう言ってリコがボードを取り出した。 が昨日の試合で気付いたことを話し、リコが作戦を立てる。 気がつくと、それを囲むように皆が集まって意見を出し合っていた。 「いや、それは上手くはないな」 リコは驚いて顔を上げ、はゆっくり振り返る。 「...ちゃんとノックした?」 「いいや、忘れてたよ」 の言葉に赤司が肩を竦める。 「洛山はミーティングとかないの?」 「あるんじゃないかな」 は盛大な溜息を吐いた。 「じゃあ、君を借りていくよ」 そう言って赤司はの腕をひいて立たせる。 「待ちなさい」 リコが立ち上がって赤司を止めた。 不愉快そうに赤司が振り返る。 「何だ。僕に命令するのか?」 睨まれたリコは足がすくんだ。 「さんは、ウチのマネージャーです。連れて行かれると困ります」 黒子がリコを庇うように立つ。 「ああ、『今は』ね。だから、ちゃんと返しに来るよ。けど、テツヤ」 皆は、そう言った赤司の周囲の空気が一層冷えたように感じた。 「はいはい、ついて行きますよ。早く行きましょうね、お兄様。何のご用かしら〜」 はそう言って赤司を引っ張っていく。 短く息を吐き、「せっかちな妹だ」と赤司はの後に続いて出て行った。 張り詰めていた空気がふっと緩む。 「ね、ねえ黒子君。お兄様とか妹とか...」 リコが問うと、 「さんの奥の手だそうです」 と黒子が言う。 「どういうこと?」 「赤司くんは少し難しい人なので、色々とあるんですけど。さんが赤司くんのことを『お兄様』って言ったら折れてくれることが多いそうです」 「実際の、兄妹ってわけじゃないんだよな?」 恐る恐る日向が問う。 「みたいです。さんは、同じ年のお兄さんがいないことをご両親に確認したことがあるといってましたから。赤司君が言い出したんです。さんは、生き別れの妹のような気がするって」 「どういうこと?」 「彼なりに『お気に入り』と言いたかったのかもしれません、今思えば」 が赤司を連れていってくれたお陰で話の続きができるが、気になってそれどころじゃない。 「ね、ねえ。、ちゃんと帰ってくるよね」 黒子にリコが訴えると、 「赤司君が返すと言っていたので、帰ってくると思います」 と黒子が言う。 その言葉に安心したリコたちだが、黒子は独り深刻な顔をしていた。 何せ、あと2試合勝たなくては、本当にがどこかに連れて行かれるのだから。 |
桜風
12.11.11
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