グラデーション 88





てくてく歩いて適当な場所を見つけた。あまり人が通らない階段だ。

は途中で温かい缶コーヒーを買っている。

「寒くないかい?」

「ジャージを着るの忘れてたからね」

ストンと座ったを赤司が後ろから抱きしめるようにして座った。

「重いよ」

「『ありがとう、お兄様。温かいです』と言えばいいのに」

「やだ」

はそう言って缶コーヒーのプルトップを上げた。

「んで、何?」

こくりと一口コーヒーを飲む。

「灰崎」

ビクリとの体が震えた。

「涼太はブザマな試合をしたな」

「勝ったからいいじゃない」

肩を竦めてが言う。

「あんなもんで。僕だったら」

「あら、灰崎くん相手だったら試合に出てくれたの?」

からかうようにが言うと、赤司は親指で彼女の唇をなぞる。

「殺してたさ」

「わー、灰崎くん命拾いー」

「本当は、涼太もかなり殺したい」

「ダメ」

「火神も」

「やめて」

赤司が言うと本当にやりそうだ。

「だから、僕のところに来いと言っている。僕は君を傷つけさせない」

「わたしは人形じゃない。赤司くんのとなりでただニコニコしてるだけとか、絶対にヤダ。それに、生きてたら、傷つくことはたくさんあるよ」

「僕ならそれから守れる」

きっぱりという赤司には苦笑した。

「自分の身は自分で守る」

「だが、守れなかった。昨日、君は傷つけられただろう?」

「そうね。傷つくことを未然に防ぐことは出来なかった。だから、今、何とか折り合いのつくところを見つけた。もういいじゃん、気持ちのいい話じゃないんだよ?」

そう言ってが赤司に体重を掛ける。

「でも、そうね。中学のときは..赤司くんに守ってもらってたみたいね」

君は僕のものだからね」

赤司はそれを主張するように彼女を抱きしめた。

「ところで、折り合いって?」

赤司は話を続けた。

「...躾のなってない犬に噛まれた」

半眼になって彼女が言う。

「なるほど。言いえて妙だ」

「はい、この話はもうお終い!」

が言うと赤司は溜息をもって返事とした。


「ねー、アップの時間そろそろじゃないの?」

が言う。

コーヒーも飲み終わった。

君は、僕の試合を録画するのかい?」

そう言って赤司はの頭をぽんぽんと軽く叩く。

「そうよ。だから、試合に出てね」

「さあ?どうなるだろうな」

赤司は愉快そうに笑った。

「相手は緑間くんだよ?」

が言うと

「ウチにもかなりやり手のSGがいるからね」

と余裕をみせる。

「でも、無冠」

が言うと

「そっちも無冠が敦に勝ったじゃないか」

と返されてぐぅと唸った。

君がウチに来ることを約束するなら、今日も明日もスタメンで出ていいけど?」

からかうように赤司が言う。

「なによ。それじゃあ賭けの意味が無いじゃない」

「どの道、君は1月からは洛山の生徒だ」

自信たっぷりに赤司が言う。

「残念でしたー。黒子くんが守ってくれるって約束してくれてるもん」

が言うと赤司は心底不愉快そうに眉を顰めた。

「全く。テツヤまで君が誰のものかをわかっていないとはな」

「わたしはわたしのものだよ」

がいうと赤司は彼女の首筋に唇を寄せた。

「あ、ばか。またやったか!」

「分かっていないようだから、分かりやすいように印をつけたんだ。君は僕のものだよ」

「...あー、もう。ホントに」

は盛大な溜息と共に零した。

「さて、」と赤司が立ち上がる。

「送っていこう」

そう言ってを立たせる。

「いいよ、アップに行きなって。そして、今日の試合はスタメンで出るといいよ」

の言葉にクツクツと喉の奥で笑う。

君、僕が最初からずっと出て、それを君が情報処理できたとしよう。今日明日、もう君は使い物にならないと思うよ」

「意地でも持たせるよ。じゃあね」

はそう言って駆けて行く。

小さくなっていくの背に向かって赤司は腕を伸ばした。

丁度手の中に納まる大きさになったとき、ぐっと握る。

「あと少し...」

あと少しで彼女を手にすることが出来る...









桜風
12.11.11


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