グラデーション 89





控え室のドアを開けて「ただいまー」とが言うと「おかえりー」とリコに抱擁された。

「ど、どうしたんですか?!」

「赤司君が返してくれなかったらどうしようかと思ってたのー」

ぎゅーと徐々に力を込められる。

「く、苦しい..デス」

ペチペチとリコの腕を叩くと解放してもらえた。

「ドリンクは、もう作っておきますね」

そう言ってがテキパキと準備を始めた。

次の試合を控えている彼らはスタンドでの観戦はしない。

だが、はスタンドに行かなくては録画が出来ない。

だから、実質、皆と別行動になる。

録画後にスタンドから降りてマネージャーの仕事ができるかどうかも微妙だから、やっておいて大丈夫なことはやっておきたい。

「何では一人しかいないのかしら」

リコが呟く。

「カントク!」

日向がたしなめた。

「あ、ごめん。えっと、そういう意味じゃなくて...」

リコが慌てるとは苦笑して見せた。

「わたしが2人もいたら、両方とも相手に任せて何もしませんよ」

((((...そうかも))))

皆はすっかり納得してしまった。


「さて、それでは。また」

軽く手を挙げてが控え室を出て行った。

、本当に大丈夫かな」

伊月が心配する。

「洛山ってどんなチームなんですか?」

降旗が問う。

本当は次の対戦相手に集中しなくてはいけないが、と前置きをして日向が説明した。

無冠の五将が3人いて、キセキの世代のキャプテンがいるチーム。

全国大会の常連校で、勿論、ウィンターカップにも最多出場だ。

その話を聞いた降旗達はコクリと喉を鳴らした。


「あら、ちゃんだわ」

スタンドにの姿を見つけて実渕は軽く手を振る。

彼女は困ったように笑っていた。

「玲央」

赤司が集中しろとたしなめた。

「だって、ちゃん見つけちゃったんだもん」

ヒラヒラとまた手を振る。

赤司は溜息をついてそして、スタンドを見上げて目を眇める。

挑発的なその表情には、正直困った。

というか、どうやらの希望通りに赤司はスタメンらしい。

だが、本当に持つのかどうかが不安でもある。

「持たせる...!」

自分にそう言い聞かせて深呼吸をする。


「ちょっと真ちゃん。ちゃんってば洛山とも仲良しみたいじゃん。もうオレきらーい」

「だから、何度も言っているが。お前がを嫌いだろうと関係ないのだよ」

そう言って緑間はチラとを見上げた。

何故彼女はスタンドにいるのだろうか。

誠凛は控え室にいるだろう。

そして、試合を見るなら、下で見るはずだ。

彼女だけ別行動をしている意味が分からない。録画をするならそれらしいものが傍にあるだろうが、そうでもなさそうだ。

(いや、何をしているのだよ...)

緑間は首を振った。

が気になることは気になる。

だが、今は目の前の敵だ。

彼には、これまでただの一度も勝てた例がない。

(今度こそ、勝つ...!)

赤司は昔、敗北を知らないと言っていた。

だから、その敗北を今日味わわせる。苦くて、辛い味を...









桜風
12.11.12


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