| 決勝戦が始まる。 先ほどの3位決定戦は純粋に観戦した。『記録』することなく、彼らの試合を見守った。 は控え室で選手達に声をかけてスタンドに上がった。 目を瞑って試合開始を待つ。 「」 前を通ってストンと隣に座った桃井が声をかけてきた。 「隣いい?」 「座った後に確認?」 目を瞑ったまま返すと彼女はクスクスと笑う。 背後の気配は、たぶん青峰だ。 「若いんだから立って見たら?」 「同じ年だ」 背後からの突っ込みに笑う。 「始まるよ」 隣の桃井が声をかけてくれた。 目を明けてスイッチを入れる。 「うーあー...」 用意していたお徳用チョコレートが全部なくなっている。 「?」 唸るに青峰が不思議そうに声をかけた。 「青峰くん、お願いがあるの」 「んだよ」 「わたしを誠凛控え室に連れて行って。早急に」 「はあ?!」 声を上げる青峰に「大ちゃん、お願い」と桃井も声を掛ける。 改めてを見ると本当に動けそうにない。 舌打ちをして青峰はを抱え上げた。 を抱えて走っている青峰を奇異の目で見るものは少なくない。というか、奇異の目で見る者しかいない。 はそんなに気にしていない様子だが、どちらかといえば青峰のほうが注目されているからダメージが大きい。 控え室のドアを開けるとざわりと室内の空気が騒ぐ。 「テツ、荷物だ」 「さん!」 「?!」 「あー、青峰くん。あそこのベンチまで持ってって」 が言う。 横抱き、所謂お姫様抱っこなのだが、抱かれている側が水揚げされたマグロみたいになっているため、ときめきもへったくれもない。 言われるままに青峰はをベンチに置いた。 リコが彼女の口元に耳を寄せて頷いている。 「あいつ、何してんだ?」 次は持って上がれと言われかねないので青峰は控え室の隅に腰を下ろして呟く。抱えたときに熱く感じた。 (風邪か?熱でもあんじゃねぇの?) 「青峰君、ありがとうございました」 そんな青峰のそばにやってきて黒子がぺこりと頭を下げた。 「や、いいけどよ。、大丈夫か?」 思った以上に軽かった。 (さつきに比べて胸もないし、少し小さいから軽い方だろうと思ったけどよ...) 「青峰くん、今失礼なこと考えなかった?」 不意に低く覇気のない声でが声をかけてきた。 「考えてねーよ」 (こえぇぇぇぇ...) 心の中を見透かされたような気がして青峰は縮んだ。 の言葉を聞いたリコが皆を集めて作戦を話す。 なにやら色々と修正を掛けるようだ。 (忙しねぇな...) このチームの力で赤司に、洛山に勝てるはずがないのに勝てると思っているのだろうか。 だが、この中に諦めている顔をしている者はいない。寧ろ、が運ばれてきて希望を持っているようにも見えた。 そろそろコートに戻らなくてはならない。後半が始まってしまう。 「、まだ無理よね」 「むりですー...第3Qまで休ませてください」 誰かがタオルを濡らしてきたらしく、彼女の額には濡れタオルがおいてある。 「わかった。青峰君、ちょっと留守番お願いしていい?」 リコが言う。 「はあ?!」 (俺だって試合見てぇよ!) 「動けないを襲ったら、シバクから」 にこりと微笑んで彼女が言い。 「襲うか!」 と青峰が返す。 「よろしくー」と言ってリコは軽く手を振って出て行った。 「さん、無理はしないでください」 「や、これ以上はもう無理。なので、わたしの運命は託したよ」 膝をついて心配そうに顔を覗きこんでくる黒子にが苦笑して返し、重そうに拳を上げる。 「はい」 頷いた黒子はコツンとの拳に自分のそれを当てて立ち上がった。 黒子は部屋の隅にいる青峰を見た。 彼の言いたいことがわかった。「さんをお願いします」だ。 「...たく。わーったよ」 ガリガリと頭を掻きながら青峰は呟いた。 「青峰くん、もういいよ。ありがとう」 ごろんと寝転んだままが言う。 「けど、お前...」 の寝転んでいる傍に向かってまた腰を下ろす。 「見たいでしょ、試合」 「あー、いいよ。どうせ撮影してるやつがいるはずなんだし」 「じゃあ、お願いがあるんだけど」 「10分後にでも起こしゃいいんだろ?」 既に瞼が重そうなに向かって言うと「おねがい」と消えそうな声が返ってきて、部屋の中ではの寝息が聞こえ始めた。 |
桜風
12.11.14
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