| 同点で第4Qが終わった。 つまり、延長戦が行われる。 そうなると誠凛は不利以外の要素が無い。 ベンチに戻ってきた選手達は既に体力の限界を迎えていた。 だが、誰一人諦めていなかった。 彼らの眸を見て、何とかしなくては、とリコが作戦を考えるが思いつかない。 「あの」とが声をかけてきた。 全員が注目する。 が話をする。 「ちょ、。どういうこと?何でそう言いきれるの??」 リコが声を上げた。 「相手が赤司くんだからです」 の言葉の意味が分からない。 第一、だからこそどう対処していいのかが分からないのだ。 彼女は確かに帝光中学バスケ部出身だ。だが、マネージャーだ。作戦を立てる際に監督が意見を求めていたのはではなく桃井だと聞いている。 「たぶん、わたしが世界で一番多く赤司くんと対戦してます」 「...どういうことですか?」 黒子が問うた。 「将棋、囲碁、チェスにオセロ。あらゆる知的戦略ゲームにつき合わされてたの。そして、わたしが負けたら、と彼は色々と条件を出していた。『負けない』がその当時のわたしの『勝ち』だった。けど...これまで本気勝負が3回。それには、勝ってます」 の言葉に黒子が眉を上げる。 「赤司くんに、勝った?」 信じられない、といったように黒子が呟き、は頷く。 「そのときの条件が、『赤司くんが勝ったら』だったからね。それを消すためにはわたしが勝たなきゃいけなかった」 「ホントに、勝ったの?」 リコが問う。信じられないという表情で。 「負けてたら、わたしはここにはいません」 「...まー、なんだ」 日向が呟く。 「こっちも色々カッスカスで、残ってるのは、仲間への『信頼』くらいしかねぇし。いいじゃん」 そう言って全員を見渡した。 「負けたら全裸で告白ですしね」 が言う。 「今言う?!」 リコが声を上げた。 「言いだしっぺはカントクでしょう?」 「や、そうだけど...」 タジタジのリコに皆は笑った。 「あー!もう!!」 声を上げて短く息を吐いたリコは、チーム全員を見渡す。 「円陣でも組むか」 木吉が言う。 「そーだな」 そう言って円陣を組んだ。 「勝つぞ!」 「おう!」 延長戦開始のブザーが鳴る。 「行ってこい、ヤローども!...信じてるから」 リコの檄に「おう!」とそれぞれが返事をしてコートに戻っていく。 「さん」 黒子が足を止めて振り返った。 は彼を見る。 「信じていますから」 は苦笑して「それはこっちのセリフ」と返した。 ******** 延長戦が終わったとき、体育館の中は静寂に包まれた。そして、そのすぐ後にそれは大きな歓声に変わる。 途中、この1本を取られたら誠凛は敗北が確定していたという場面があった。 その1本を止めたのは火神でも木吉でもなく、黒子だった。 がその場面、かならず赤司は仕掛けてくると言った戦法で、確かに赤司は仕掛けてきた。 だから、一点の曇りもなく彼女を信じていた黒子が彼を止めることができた。 止められた瞬間赤司は、誠凛ベンチを、という敵チームのマネージャーを見た。 小さく拳を握った彼女を見て赤司は、無意識に笑っていた。 「本当に...」 (君は面白い) 整列をして礼をする。 誠凛ベンチはコートの中に駆けて来た。 リコも。 だけベンチにいた。正直、あまり動けない。疲れた... 赤司はそちらに足を向けた。 「君」 彼女は立ち上がり、彼を見上げた。 「バスケでも君に負けるとはね」 「勝ったのは、わたしじゃない」 そう言って彼の背後の喜びに沸いている誠凛バスケ部を見た。 「みんなで勝ったの。一番『嬉しい』勝ち方よ」 ちらと振り返り「そうか」とだけ呟いて赤司は自陣ベンチへと向かっていった。 「カントクー。パンツ見えますよー」 胴上げされそうになっているリコに向かってが言う。 「へ?あ、わ...!」 慌ててスカートの裾を押さえているリコを見ては笑いながらベンチに腰を下ろした。 短く息を吐く。 (疲れたー...でも、凄く嬉しい) 「ああ、そうか」 緑間が呟いた。 「みどりん?」 穏やかな表情を浮かべている緑間を不思議そうに桃井が見上げた。 「いや、何でもないのだよ。ではな」 そう言ってその場から去っていく。 「が欲しかったのは、これだったのだな」 ポツリと呟く。 『みんなで』と言っていた。彼女が見たかったバスケは、このチームのバスケなのだ。 確かに、自分たちには無かった。 「いや、なくなった。そう言っていたな...」 自嘲気味に笑う。 「おーい、真ちゃーん」 少し離れた所で高尾が手を振っていた。 「誠凛、やっちゃったなー」 悔しそうに言う彼に 「これで終わりではないのだよ」 と緑間が返した。 思いもよらない反応で高尾は眉をあげ、 「だな」 と苦笑した。 |
桜風
12.11.16
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