| ゲームセンターまでの道のりは意外とあった。 普通に距離もあったのだが、何より、紫原が色々と寄り道するのだ。コンビニを見つけるたびに入って菓子を購入して出てくると言うことを繰り返していた。 ただ、先ほどの試合の疲れが残っている赤司と黒子、そしては少し助かる。 「大丈夫っスか?」 とぼとぼという表現が正しい足取りのに黄瀬が声を掛けてきた。 「んー?うん。けど、ごめん。意外と距離があるね」 何故が謝るのか、と少し考えて黄瀬は苦笑した。 確かに、がプリクラと言いだしたのでこの距離を歩くのは彼女が原因だが、自分の膝の故障はそこまで酷いものではない。監督が大事を取って殆ど試合に出さなかっただけだ。 「ちゃんこそ、ちょっと辛そうっスよ?」 「正直眠い」 苦笑して返す。 「桃っちから聞いたっス」 「んー?」 黄瀬を見上げたは本当に眠そうだ。 「ちゃんが頭良いの知ってたっスけど」 そう言って黄瀬は苦笑する。 「もしかして、I・Hのオレの試合の後のあれって...」 物凄く憔悴しきった顔をしていた。それは、つまり彼女は自分の試合をその頭の中に記録していたのではないかと思ったのだ。 「うん、あの時は完全にカロリーと体力不足だったのよ。だから、ダイエットのための体力づくりを始めたの。一応、今回は何とかそれで賄えた..かな?もうカッスカスだけど」 肩を竦めて言うに 「あんまり無茶しないでほしいっスよ。心配するじゃないスか」 と黄瀬が言う。 「黄瀬くんに言われたくない」 と言いながらは黄瀬の膝を見た。 その視線を受けて黄瀬は苦笑する。少しだけ嬉しそうに。 彼女は自分を心配してくれている。嬉しくないはずがない。 にへらと笑ってる黄瀬を見ては眉間に皺を寄せた。 「ちゃんと聞いてる?」 「オレ、ちゃんのこと好きっスよ」 「聞いてないし」 溜息混じりにそういわれて黄瀬は幸せそうに笑った。 ゲームセンターに着き、桃井に続いて大きいのがぞろぞろと続いた。 正直、悪目立ちで、ここに来てはやっと自分の選択が間違っていたことに気がつく。 何より、結構自分の周りは黄瀬に興味を持たない女子ばかりだが、基本、彼は興味を持たれる対象だった。 とりあえず目的は達成しなくては、と大き目の、皆が入れそうなマシンを選んでみた。 「うっわ...」 が呟く。 それでもキツキツだ。 「ちょっと、皆育ちすぎ」 の言葉に口々に反論が零れるが、彼女はそれを黙殺した。 「じゃあ、そこの育ちすぎ4人は後ろで僕とテツヤ、桃井と君が前でいいな」 こういうときは長身が仇になる。 「えー、ちんの隣がいい」 紫原の言葉を皮切りに後ろが騒がしい。 「ちょっとー!」と桃井が声を上げるが聞きやしない。 「えー、と。コレを押せば良いんだね」 もはや止める気が無いが決定ボタンを 「ぽちっとな」 と押す。 「ちょ...!」 とりあえず、何回か撮って気に入ったのを選べるらしいと知ったは上限回数まで適当にボタンを押していった。 騒いでいた後列もその頃には大人しくなった。 「さすがだな、君」 その黙殺っぷりは、思わず赤司が唸ったほどだった。 そして、何パターンか撮った中からプリントするものを選ぶ段になってまたもめる。 「私はこれと..これがいいな」 桃井が言う。 「え、こっちのはどうっスか?」 黄瀬の言葉にが「却下」と言う。 「えー、何でっスか!オレ、超キメ顔っスよ。モデル魂を皆に見せようと思って...」 「わたしは、モデルの黄瀬涼太くんとプリクラ撮りたいと思っていないから。ちょっとおバカ..かなりおバカな高校1年生の黄瀬涼太くんとなら撮りたい」 がはっきり言った。 「何で『ちょっと』を『かなり』に言い直すんスか...」 黄瀬は泣きそうに笑った。 面と向かって言われたのは初めてだが、この言葉は初めてではない。 いまだ変わらず彼女はそう思ってくれていると知って、嬉しくて、だからこそ少し辛い。 「もういいから、さつきとが決めろ。面倒くせぇ」 そう言って青峰はマシンから出て行き、と桃井を残して全員がスペースから出て行った。 隙間から中が見え、2人はきゃっきゃと何か楽しげに作業をしている。 「そういえば、さんたち。いつの間にか名前で呼び合っていますね」 ずっとお互い苗字を呼び捨てだったのにと、黒子は不思議だった。 「仲良くなったんじゃないのー?」 紫原が言う。 「元々険悪な仲ではなかっただろう」 赤司が言うと 「女の子は仲良くしてるのがいいっスよ」 と黄瀬が言う。 「少し、雰囲気が変わった気がしないでもないのだよ」 「どっちっスか」と黄瀬が苦笑した。 ふと、彼らは周囲の異様な雰囲気に気がつく。 フロアにいる女の子達がじりじりと包囲網を敷きつつあるのだ。 「あ、悪いっスけど」 黄瀬が若干声を張った。 「今日はオレのお姫様の願い事を叶えに来ただけだからファンサービスはなしっスよ」 黄瀬の言葉に包囲網を敷きつつあった女の子達は、彼が利用していたマシンを睨んだ。 そこへタイミングが良いんだか悪いんだかたちが出てきた。 ただし、先に出てきたのは桃井で、マシンを睨んでいた女の子の大半は彼女の顔を見て怯み、自分の胸をぺたんと押さえ、自信をなくした。 これは勝てないと察した女の子達はプリクラコーナーから逃げるように出て行った。 「あれ、人口減ったね」 周囲を見渡してが言う。 「さつきが先に出てきて良かったなー」 青峰が言う。 「オレのお姫様はちゃんなんスけど...」 何だか腑に落ちないという表情で黄瀬が呟いた。 「いや、だったらあの女子達は勝てるってぜってー思うぞ。あいつ、見た目はあまりにもフツーだからな」 苦笑して青峰が言った。 「君の良さは、付き合ってみなくては分からないからな」 赤司が青峰が言いたいことを引き継いで言う。 桃井とはプリントされたシールを今度は備え付けられているはさみで切り分けている。 そんな光景を眺めながら男子一同、先ほどの「女の子は仲良くしているのがいい」という黄瀬の言葉を思い出していた。 何だか、和む。 「できたよ」とが全員にシールを渡す。 「んじゃ、どっかでメシ食って帰るか?てか、都外組はホテルで合宿みたいなんだっけか?」 青峰が言う。 「僕はもう自宅に帰ると話してきている」 「オレも昨日から家に帰ってるから大丈夫ー」 「オレもさっき解散になったから大丈夫っスよ」 と、赤司、紫原、黄瀬が言う。 「あ、ごめん。わたしは帰らなきゃ」 「んだよ、。付き合いわりーな」 と青峰が少し驚いたような声を出した。 「母親がお腹を空かせて泣いてるから」 苦笑してが言う。 「自分で作れるだろう」 「作れないから、言ってるの。というか、あの人に台所に立たれたらわたしの城が破壊されるから絶対に立つなって言ってるのよ。ごめんね」 そう言ってが手を合わせた。 「じゃあ、ちんの家で食べればいいよ」 「おー、いいな。久しぶりに行くか」 「来るな!」 紫原の提案に青峰が乗る。すぐさまが拒否したが、聴くはずが無い。 「『久しぶり』?」 赤司が呟く。 「中学の頃、学校帰りにの家に行ったことがあるのだよ」 緑間が言うと、赤司がムッとした。 「僕も行く」 「は?!」 赤司の言葉にが頓狂な声を上げた。 かくして、キセキの世代と敏腕マネージャーご一行様を招待する羽目に陥ったは、とりあえず、これ見よがしに溜息をついてみたのだった。 |
桜風
12.11.18
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