| 黒子が目を覚ますと知らない天井が見えた。 だが、凄く居心地がいい雰囲気で、もう一度寝ようかと少しだけ悩む。 「...投了だ」 「あーん、何処がまずかったのかしら」 (...あれ?) 黒子はソファの背に深く凭れていた体を起こした。 見たことのあるリビング。 自分の記憶は、バスに乗ったところでプツリとなくなっていた。 「テツ君、おはよ」 桃井が顔を覗きこんで声をかけてくる。 「...よう、ございます」 寝起きで上手く声が出なかった。 「あ、ナイスタイミング」 キッチンのが言った。 「飯で起きるってどうかと思うぜー」 青峰がそう言うと 「黒子も、中学時代授業中はずっと寝てたくせに昼前になったら起きていたお前には言われたくないはずなのだよ」 溜息を混じりに緑間がいい、「っスねー」と黄瀬が笑った。 「あの、えっと...」 「久しぶり、テツヤ君。何だっけ?何とかカップ、優勝したんだってねー、おめでとー」 ひょっこり顔を覗きこんで声を掛けられた。 「あ、こんばんは。お邪魔しています」 思わずそう挨拶をすると彼女は声を上げて笑った。 「やだ、凄くお行儀のいい子!」 ガシガシと頭を撫でられた。 「え、と。僕はどうやってさんの家に着いたんでしょうか」 「オレがおんぶしてあげたー」 「バスん中でとテツが落ちたからな。家への来方は黄瀬が知ってたからそんな困んなかったから良かったけど。ま、黄瀬がストーカーで助かったぜ」 「ストーカーって何スか!!」 「君、何か手伝ったほうが良いか?」 賑やかで、どこか懐かしい。 「いいよー。テーブル空けて。お母さん、コンロ」 がそう言うと皆が食事の準備を手伝い始める。 黒子も体を起こして伸びをする。 しっかり眠っていたようで、疲れも随分と取れたような気がする。 人数が多いので、ガラス製のリビングテーブルを片付けて、の部屋にあるコタツと、客間にあるテーブルを持ってきて、ラグマットの上に直接ぺたんと座って食べることにした。 ご飯は既に3回目の炊飯に入ってるが、間に合うか... いただきますと手を合わせて賑やかな食事が始まる。 合宿みたいで楽しいと思った。 「テツ君、何が食べたい?」 隣に座る桃井が世話を焼いてくる。 申し訳ないと思いつつもその言葉に甘えた。 「さんは、大丈夫だったんですか?」 「何が?」 「いえ、僕のほうが長く寝ていたって言われたので...」 黒子が言う。 は苦笑した。 「たぶん、物凄く深く眠ってたんだと思う」 「そうよね。昨日の睡眠時間、1時間あったかどうかでしょ?」 キムチを摘みながら彼女の母親が言う。 そんな母親に苦い表情を浮かべて「そんなことないよ」と彼女は言った。 (ウソだ...) 何となくそう思った。 「ちゃん、ちゃん」 の隣に座っている黄瀬が名を呼ぶ。 「なに?」 「オレの、よそって欲しいっス!」 そう言って器を渡してきた。 「あー、涼太君って誰かに似てると思ったら...」 「誰っスか?」 「はい、どうぞ」 が黄瀬の器に鍋の具をよそった。 「ありがとうっス!...ちょ、ちゃん!野菜しかないっスよ!!」 「そういうオチを期待されているのかと思ったんだけど。あと、紫原くん、野菜を食べなさい」 「...赤ちんが野菜が食べたいはずだから、オレは遠慮する」 「野菜は嫌いじゃないけど、敦もちゃんと食べろ」 「うめー、肉うめぇ!!」 「肉ばかり食べるんじゃないのだよ!」 「もう!皆落ち着きが無いんだから!!ね、テツ君」 「でも、楽しいです」 黒子は噛み締めるように言った。 「おい、テツ。肉を食わないなら、オレに寄越せ」 「人に箸を向けない!お行儀が悪いよ」 が青峰を鋭く注意する。 「お前、口うるせーぞ」 「そういえば、真太郎君と征十郎君とテツヤ君は納得なんだけど。涼太君も箸の持ち方がきれいね」 の母親が感心して言うと 「中学のときに、ちゃんの見せてもらったスから」 と黄瀬が言う。 元々そんなに上手な持ち方ではなかったが、が緑間の箸の持ち方がきれいだと褒めていたので面白くなくて、に教えてもらったのだ。 要は、コピーしたということなのだが、これが結構感心されることのようで驚いた。 あっという間に鍋の中身はなくなり、締めのうどん玉を投入して、これもあっという間に無くなった。 青峰と紫原の腹に半分以上収まったはずだ。 今日、いちばん運動していないくせにいちばんたくさん食べた2人に皆は心底呆れた。 |
桜風
12.11.25
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