バレンタインデー





 今日の真ちゃんは、やけにそわそわしていた。

今朝見たおは朝占いで、かに座はまあまあ。良くもなく悪くもなく、真ん中辺りだった。

ラッキーアイテムもちゃんと持ってたし、あいつがそわそわする要素が思いつかない。


「高尾君」

クラスの女子に声を掛けられた。

「なにー?」

「これ、緑間君に渡してくれない?」

少し顔を赤らめて彼女が言う。

同じクラスなんだから自分で渡せばいいじゃん、て思ってやっと真ちゃんがそわそわしている理由がわかった。


今日は、バレンタインデーだ。

「ごめん、これ自分で渡した方が良いと思う。けど、もしかしたら、断られるかも」

肩を竦めて一度は受け取った彼女の真ちゃんへの気持ちを返した。

「え...」

「ごめんね」

軽く手を合わせてその場から逃げるように去った。


でも、逆になんであんなにそわそわしてんだろ...


凄く不思議だった。

だって、ちゃんなら、家を知っているからなんだったら放課後家に持ってくるんじゃないか?

あ、学校。学校にもって来られる可能性があるか。

彼女は1年の夏休みに真ちゃんに何か返しに態々学校までやってきた。

逢えるのが嬉しいってことかー...

何だかウチのエース様は時々本当に可愛い。

いや、男を可愛いというのは凄く抵抗あるんだけど。

普段は、全く可愛げのない無愛想で斜め上を行っているヤツだからなー...

「しーんちゃん」

自分の席に着いている真ちゃんの肩に腕を置いて体重をかけた。

「何だ、重いのだよ」

「今日、デートの約束とかしてんの?」

からかうと真ちゃんは眼鏡のブリッジを上げた。

「いや、特には」

「へー...ちゃん、今日がバレンタインデーだってちゃんと知ってんのかな?」

「...さあな」

うわっ、動揺してる...!

「電話してみたら?」

「は?!」

「真ちゃん照れるならオレがしても良いけど。番号教えて」

「絶対に教えないのだよ」

力強く拒否られた。


放課後になって、自主練の時間になると女の子達が真ちゃんに声をかけてくる。

ウチのエース様も結構おモテになるのだ。

オレも勿論結構もらえたけど、意外に真ちゃんのほうが多い。

どういうこった??

しかし、それら全て真ちゃんは断った。


中には義理もあっただろうに、本当に全部だ。

「ねー、何で断ってんの」

「不義理をするわけにはいかないのだよ」

「いや。オレ思うんだけど。ちゃん、部員達に配っていると思うよ?しかも、手作り」

「...それは、にもマネージャーという立場があるのだから仕方ないのだよ」

「や、マネージャーだからやらなきゃいけないって仕事でもないっしょ」

何ともお堅いことで...

「緑間君」

そんな会話をしていると体育館の入り口から真ちゃんが呼ばれる。

意外な人物の声にオレも真ちゃんも驚いた。

「黒子?!」

「え、何でいんの?」

2人で黒子のいる入り口に足を向けた。

「お久しぶりです」

そう言って黒子はペコリと頭を下げた。

「そーだなー。んで、黒子。何でウチに来てんの?」

さんからの預かり物です」

そう言って黒子は鞄から可愛らしい包みを取り出して真ちゃんに渡す。

から?」

「はい。さん、今日学校に来てはいたのですが、体調を崩して辛そうだったので、帰るように言ったんです。けど、絶対にイヤだって言うので、理由を聞いたら緑間君に渡すものがあるからということでした。
そこで、僕が代わりに渡しに行くことを約束して帰ってもらいました」

「そんなに辛そうだったのか?」

真ちゃんが心配すると

「そうですね。顔色がよくありませんでしたし、たぶん、結構熱があったんじゃないでしょうか」

と黒子が返す。

益々真ちゃんの顔が曇る。

「そうか。すまないな、態々」

「いえ。では、僕はこれで。あ、たぶんさん、風邪だと思います。声を出すも辛そうでしたから、電話は避けたほうがいいかもしれません」

そう言って黒子はぺこりと頭を下げて黒子は帰っていった。

「まー。良かったじゃん」

「よくないのだよ」

深刻な声で真ちゃんが言う。

「高尾」

「あー、はいはい。自主練終わったらちゃんち行くんだね。オレは大人しく一人で帰るよ」

「ああ」

頷いた真ちゃんは、練習を再開した。

どうでも良いけど、あまり遅い時間に行ったら迷惑になんないのかねー...

普段はお堅いのに、ちゃんのことになったら意外と周りが見えなくなるわがエース様。

ま、そこが良いとこでもあるんだけどなー...









桜風
13.2.14


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