| 「ねえ、大ちゃん」 「んだよ」 ピコピコと携帯でメールを打っていると桃井に声をかけられた。 「のこと、いつまで苗字で呼ぶの?」 「な?!あ?はあ??」 立ち上がって青峰がそう声を出す。 地黒のおかげで分かりにくいが、赤くなっている。 「そんなに驚くこと?」 首を傾げて桃井が言う。 「べ、別に驚いてもねーよ」 そういって青峰は足早にその場を去って行った。 タイミングがいいのか悪いのか。 その週末にに会うことになっていた。 外で待ち合わせて、かねてから青峰が買いたいといっていたバッシュを見に行く。 「青峰くんも馬鹿みたいに足おっきいしねぇ」 そういいながらは陳列されている商品を見る。意外と青峰の足に合うサイズがないのだ。 「『青峰くんも』ってなんだよ」 「火神くんもないって言ってたから。同じサイズなんでしょ?」 「...そーだけど」 すごく面白くない。なんだって、自分と一緒にいるのにほかの男のことを思い出してんだ... (あれ?) は背後に立っている青峰の雰囲気が変わったことを感じて振り返る。 「いくぞ」 そういって青峰は少し乱暴にの腕をつかんで店を出ていく。 「ちょ、待って。バッシュ、いいの?!」 「うっせー」 「痛いよ!」 訴えるの声を聴いて少しだけ彼女の腕をつかむ手を緩めた。 「なに、どうしたの」 「なんでもねー」 はため息をつく。 「バッシュはいいの?」 「...まだうちにいくつかあるからそんな急がねぇし」 (実際、今日のだって口実だし...) そんなことを思ってちらとを見下ろした。 すごく困ったように青峰を見上げているその視線とかち合ってすごく居心地が悪い。 「わりぃ」 「いや、いいんだけど。どうしたの」 の腕をつかんでいた腕をするりと滑らせて彼女の手を握る。 「ちょっと、面白くなかったから」 そうつぶやいた青峰に「ああ、そうか」とがつぶやく。 「あ?」 「わたしが悪かったんだね」 彼が何を面白くないと思ったのかなんとなく察した。 「べつに」 彼は少しきまりが悪くてそっけなくつぶやいた。 「なあ、..」 「ん?」 今日の青峰は少しおかしい。 (なんで呼ぶ前に一呼吸入るんだろうねぇ) 「」という前に何か言いたそうなのだ。 さすがにそこに入る正しい単語が思いつかない。 「ちょい腹減った」 そういって彼の視線の先は、ファストフードの店舗。 「いいよ」 うなずいてそちらに向かう。 「席とってろ」 そういわれては青峰に注文を任せて2階の隅っこの席を目指した。 休日の今の時間は、自分と同年代と思われるカップルが多い。 彼らは楽しげに話をしている。 はたから見たら自分たちもそうだろうか。 そう思っては驚いた。今の考えは間違いなく他人の目を気にしている。 (うわ、びっくり) なんだか複雑な気分だった。 「おう、待たせたな。..」 そう声をかけられては勢いよく振り返った。 「な、なんだよ」 「あ、うん。何でもない」 (びっくりした...) 自分の名前を呼ぶ友人はいる。 でも、なんというか...この不意打ちは正直対処できなかった。 軽く「ありがとう、大輝」とかいえばよかったのだろうが、驚いてそれどころではなかったのだ。 目の前に座った青峰が不意に噴出した。 「な、なによ」 「顔、見てみろ」 そんなに変な顔をしてるのかと思い、あわててバッグから鏡を取り出してみる。 「真っ赤だ」 愉快そうに、そしてどこか安堵したように青峰が指摘する。 「う、うるさいなー」 「って、意外と素直だよな」 「からかうな、大輝」 どさくさにまぎれて言ってみた。 すると青峰が固まる。 「え、えと...」 (意外と、結構くるな...) 口元を手で抑え、俯いてそう思う。 「あ、えと。青峰くん?」 「大輝」 青峰が言う。 「ん?」 「大輝って呼べ」 「偉そうねぇ」 苦笑してが言った。 「いいだろうが」 そうぶっきらぼうに返した青峰は自分が持ってきたハンバーガーにかぶりついた。 わかりやすい照れ隠しに、は肩をすくめて青峰に注文をお願いしていたココアに手を伸ばした。 |
桜風
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