願い事





 年中行事の中に、いくつか「ロマンティック」と分類できそうな日がある。

大抵宗教に絡んだり、業界の画策に絡んでいるが。

そして、緑間の誕生日である7月7日もなんとなくロマンティックな日に分類されそうな日である。

七夕。

織姫と彦星が年に1度逢えるらしい。


インターハイ予選が無事に終わり、ひとまず休戦となった。

お互いインターハイ出場を決めているので、また少ししたらライバル校としてのけじめが必要になってくる。

ちなみに高尾はそういうお堅い2人に苦笑をしている。

「別にどうなるってわけないじゃん。真ちゃんはちゃんがいようといまいと人事を尽くすだけだし、ちゃんも手を抜くタイプじゃないでしょ」

そう言われたことがあるが、やはりけじめはけじめだ。



「どうしたの?」

隣を歩くが声をかけてきて緑間は見下ろす。

「何がだ?」

「考え事」

「...昼間、少しな」

「高尾くんが何だって?」

誰が何、と言っていないが彼女はそう言う。

緑間は苦笑して、

「七夕の話は知っているだろう?」

という。

「織姫彦星?」

の問いに緑間はうなずいた。

「天帝の怒りを買って1年に1度しか逢えないのに、何がロマンティックだろうね、とな」

「星空と関係あるからかな?」

「...だろうな」

緑間はそう言って頷いた。

「なんでそんな話になったの?」

にそう問われて緑間は口をつぐんだ。

自分の誕生日の話を振るというのもなんだか格好悪い気がする。

「どうしてだったかな」

適当にごまかすことを選択した。

駅前広場に着くと大きな笹飾りがあった。

「ね、緑間くん。書いていこう」

積極的にそういうことを言う方ではないが言うのだ。珍しいと思いながらも「そうだな」緑間はうなずいた。

さて、何を書こうかと考え、緑間の手が止まる。

対照的にはすらすらと何かを書いていた。

「できた!」

「早いな」

「緑間くんは、願い事ないの?」

「...そう、だな」

大抵のことは努力で何とか、という主義のため、神頼みのようなことは慣れない。

ふと思い出したのは数年前の七夕。

同じことが浮かんだが、それにしては進歩がない。

そしての短冊に視線を落とした。

それに気づいた彼女は伺うように緑間を見上げる。

「どうでしょうか」

『緑間くんの誕生日をお祝いしたい』

「試験終わって部活始まってるから、時間的に遅くなるけど...」

緑間は、の短冊を手に取った。

「これは、わざわざ星に願うものでもないのだよ」

そう言って、それをポケットにしまう。

「じゃあ..何をお願いしようか。緑間くんは何を書くの?」

「神頼みは、正直性に合わないのだよ」

「だよねー」

そう言ってが笑う。

「じゃあ、何時に待ち合わせできるかな」

「代わりの願い事は書かなくていいのか?」

緑間がきょとんとした。

「うん。今はそれだけだったから。欲張ってもいい事ないし」

そう言って笑うに「そうか」と返した緑間は彼女の手を取って歩きだし、皆の願い事を一身に受けている笹飾りから遠ざかって行った。









桜風
13.7.8


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