そうだ、プールに行こう 4





 都内のプールレジャー施設前で待ち合わせとなっている。

黄瀬はを自宅まで迎えに行き、一緒にそこに向かった。

「あれ?」

「なんで...」

肩をガクリと落としたのは黄瀬だった。

面倒事が増えたのだ。

(いや、でも...)

気持ちを切り替える。

そうだ、彼がいたほうが桃井のナンパ対策になる。

黒子だけでは心許ないと思っていたのだ。

かといって、自分が桃井の番犬をしていたら、がこれまたちょっかいを出されるだろう。

桃井には悪いが、優先すべきは、

「よー」

軽く手を上げた青峰はにやにやと笑っている。

「おはよ。黒子くんは?」

「テツ君はまだみたい」

少し拗ねた表情で桃井が言う。

青峰が来たおかげでダブルデートではなく、友人たちと一緒にプールに来たということになってしまった。

「こんなことなら、みどりんも呼べばよかった」

都内に住んでいるのだから、彼に声をかけることも可能ではある。

「やめて!」

黄瀬が声を上げ、「今から声かけてみるかー」と青峰が携帯を取り出す。

「やめてー」

「やかましいのだよ」

「...」

がそちらを見ると、緑間と高尾がいた。

「なんでいるの?!」

悲痛な声を上げる黄瀬を緑間は無言で一瞥し

はなんでここにいるのだよ」

と問う。

「オレとデートっス」

黄瀬が緑間の視界からを隠しながらいう。

「へー、プールデート?んじゃ、桃井ちゃんは青峰と?」

悪気があるのかないのか、高尾が言う。

「ちげーよ」「ちがうわよ」

青峰と桃井の声が重なった。

「息ぴったりじゃん」

「てことは、緑間くんと高尾くんもデート」

が言うと

「気持ち悪いことを言うな」

と低く緑間が言う。

「ははっ。んで、なんで入んないの?」

「黒子くん待ち」

が答えると

「お待たせしました」

と不意に黒子が現れる。

「ううん、時間前」

「へー、んじゃダブルデートでもないんだ」

と高尾以外は、急に現れたように出てきた黒子に驚きの声を上げていた。

「じ、じゃあ。揃ったし。入ろうか」

お邪魔虫が3人もいるけど、と心の中で付け足した


「そういえば、緑間っちたちは今日は休養日?」

「そー。で、暇だから真ちゃん誘ってプールに来たらお宅らがいたってこと」

着替えながらそんな話をする。

「高尾っち、宿題は?」

「ん?まあ..何とかなるっしょ」

「高尾...」

「い、いや。ちゃんとやるって、真ちゃん!黄瀬は?」

慌てて諸悪の根源というべき人物に話を振る。

「オレは宿題しなきゃデートしないってちゃんに夏休み前に宣言されてるから、殆ど済ませてるっス。わかんないところは、今度お義母さんに教えてもらう約束してるし」

胸を張って返す黄瀬に高尾は肩を竦めた。

「あれ?青峰っちは?」

「もう先に行きました」

黒子にそう言われて慌てて皆は更衣室を後にする。


黒くて背が高い青峰は容易に見つけられた。

そして、黄瀬がふと女子更衣室の方を見ると群れてる男たちの間から桃井の髪が見えた。

「青峰っち、出番っスよー」

「ああ?!」

「ほら、桃っち」

そう言って女子更衣室の方を指差す。

「はぁ..ったく」

そう言って青峰がそちらに向かい、念のために黄瀬もそちらに向かった。

桃井がいるということはもいるのだろう。

「!!」

黄瀬は息をのみ、男たちの間をかき分けての元へと行く。

ちゃん、可愛い!!」

「いや、黄瀬くん...」

物凄い勢いで自分の元へとやってきた黄瀬に若干気圧されながらはどう反応していいか困る。

「桃っち、グッジョブ!」

満面の笑みで黄瀬が桃井に言った。

「えーと、きーちゃん?」

「てなわけで、この子たちはオレたちの連れだから。諦めてもらえねーすか?」

その長身を生かして黄瀬が男たちを見下ろして言う。

「な、なんだよ」

「ああ?!」

一緒に来ていた青峰がトドメとばかりに睨みつけると、男たちは退散していった。


「大変そうだねー」

少し離れたところからそれを眺めていた高尾ニヤニヤと呟く。

高尾の言った通り、意外と無防備な桃井とは黄瀬が警備をしなくてはならず、結構大変そうだった。

たまに、ため息をついては、緑間が黄瀬を助けてやることがあり、なんだかんだで面倒見の良い相棒に苦笑を漏らす。



の家への帰り道、黄瀬はぐるぐると腕を回す。

先ほどまでこれまたにぎやかに皆でファミレスで食事をしていたのだ。

「疲れた?」

「ん?そうっすねー」

気遣う声音のに苦笑をする。

「ちょっとは疲れたかな?ちゃん、楽しかった?」

不意にそう聞かれて驚いたが「うん」と彼女は頷く。

「よかった」

と少し弾んだ声で黄瀬がいい、は首を傾げた。

ちゃんが嬉しいと、オレも嬉しいから」

黄瀬が言う。

どう返していいかわからないがきょろきょろと周囲を見渡して暫く考え、

「プールに誘ってくれてありがと、黄瀬くん」

とお礼を言う。

「どういたしまして!でも、今度は2人きりでデートしようね」

黄瀬の言葉には「またプール?」と問う。

「プールはやっぱりダメっス。ちゃんの水着姿可愛いからもう絶対にダメっス!」

と黄瀬が高らかに宣言した。

「変なの」

「変じゃないっス!」

黄瀬は抗議をし、は笑う。

「来週、ウチの学校休養日だから、お義母さんに宿題見てもらって大丈夫っスかね?」

「帰ったらいると思うから、聞いてみよ?」

「そうっスねー」

自分の手を取って歩くに目を細めながら黄瀬は彼女の自宅へと向かっていった。









桜風
13.8.25


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