雨の日デート





 二度目のインターハイ出場が決まった数日後の雨の休日、卸したてのレインブーツを履いて、お気に入りの傘を差してはプラプラと散歩をしていた。

テスト期間中は時間があるので、彼女にとってはリフレッシュできる良い期間だ。


少しけぶる視界の向こうからのっぽが歩いてくる。

そのシルエットだけで誰かとわかったは少し早足に歩き、クリアに彼が見えた瞬間駆けていた。

「ちょっと!傘は!?」

「おー、

ずぶ濡れののっぽ、青峰がを見ろして少しだけ嬉しそうに笑った。

思わぬところでに会えて少し嬉しいのか、そう言った表情だが、対しては眉を吊り上げている。

「傘は?!」

もう一度同じことを問う。今朝の天気予報では午後は雨だと言っていた。

「あー、ないな」

が怒っていることに気づいた青峰はバツが悪そうに頭を掻いて言う。

「もう!」と言いながらは精一杯背伸びをして青峰に傘をさしかけようとしたが、彼が腕をつかんでそれを拒否した。

「いいよ、もうこんだけ濡れてんだから」

「風邪ひいちゃうでしょ」

「バカは風邪ひかねぇんだよ」

「大輝がバカって知ってるけど、自分でバカって言うな!」

そう言いながらは頑張って傘をさしかけようとする。

「ひでぇな」と青峰はため息をつき、それでもやっぱり傘を拒否した。

「オレが入ったらお前濡れるだろうが。賢いお前は風邪ひくだろ」

少し嫌味を添えて言うが、彼女も全く譲りそうもない。

「タオル!」

「あ?」

「バスケの練習してたんでしょ?なら、タオル持ってるはず」

彼が斜めにかけているバッグはバスケットボールが入るには十分は大きさだ。

盛大にため息を吐いた青峰はタオルを取り出した。

「お座り!」

「犬じゃねぇ」

そう言いながらに向けて少し頭を傾ける。

は器用に片手で青峰の頭を拭き始めた。少し乱暴なのは、雨の中傘も差さずに歩いていた青峰へのお仕置きと言ったところか。

「つめてっ!」

さしかけていた傘が傾き、青峰の背中に雨粒をこぼした。

「あ、ごめん」

そう言って青峰の頭を抱えるようにが彼の首筋から背中に垂れている雨粒をぬぐう。

「ああ、残念だ」

「ん?」

自分の胸元から声がしてが問い返す。

「柔らかくねぇ...育たねぇな」

青峰が何を指してそう言ったのかわかったは、傘にたまっていた雨粒を彼の背中に無言で流し込んだ。

「つめてぇ!」

「失礼な奴にはお仕置きだ!」

高らかに宣言した。

に向けて傾けていた頭を上げて不機嫌に青峰が見下ろす。

「乾いた?」

「ん?あー、そうだな」

ガシガシと頭を掻く。

「髪が短いから、拭いたらすぐ乾くね」

がそう言って青峰にタオルを返し、今度こそ傘を差しかけた。

青峰も諦めてその傘の中に入る。

が、すぐに「ちょっと持ってろ」と自分の鞄をの首にかけた。

「重い...」

そんな目の前で青峰がジャージを脱ぎはじめる。

「どうしたの?」

「服がぬれてんだから、一緒の傘に入りゃやっぱりお前濡れんだろうが」

そう言って乱暴にジャージを丸め、の首にかけた鞄を持ってそれを突っ込んだ。

「もうちょっときれいに畳んで...」

が言うが

「どうせ家に帰ったら洗濯機に突っ込むんだからいいんだよ」

と青峰は鞄を閉める。

「ほら、貸せ」

「ん?」

首を傾げるの手にある傘を奪うようにして持った。

「お前の高さに合わせたら腰がいてぇんだよ」

「ああ、おじいちゃん」

「うっせ、ちび」

「並みサイズだ!」

そんな会話をしながら歩く。


「どっか行く予定だったのか?」

右手で傘を差し、左手でと手を繋いでいる青峰が問うと

「んー、ぶらぶらと散歩」

が返した。

「あ、そ」

「鞄持とうか?」

「重いだろうからいい」

「そう」

そんな会話をしながらはこれからどこか行きたいかなー、と思っていてふと思い出す。

「ねえ、今思い出したんだけどね。テスト勉強は?桐皇も確か今頃テスト期間じゃないの?」

思い出したくない現実を突きつけられて青峰は視線を外す。

「おい、こら!」

「行ける大学あるんだからいいだろうが...」

「あのね、ウチのカントクの名言ね」

「あのムネのねぇセンパイか...」

カントクという単語を聞いて、今年卒業したひとつ上の誠凛の女子生徒を思い出す。

今でもちょくちょくバスケ部に顔を出してくれているとが嬉しそうに話している彼女の事だろうと辺りをつけて呟いた青峰をが半眼で見上げた。

「ぶっ飛ばされるよ」

「あ?事実を口にしてんだろうが。んで、カントクが何て?」

「馬鹿でもバスケはできるけど、馬鹿じゃ勝てないのよ!って」

「オレ、勝ってるし」

ムキになって言う青峰にはため息を吐いた。

「言うと思ったけどね。んじゃ、おバカな大輝はIHでぼっこぼこにしてやる!」

が高らかに宣言をし、「はっ!」と青峰は愉快そうに笑った。

「できるもんならやってみろよ」

挑発するように言う青峰に「言ったなー」とが返す。


お互い不敵な笑みを浮かべていたが、「...なあ、腹減った」と不意に青峰が訴えた。

「でも、上はともかく、ズボンは濡れたままだし...じゃあ、うち来る?酔っ払いいるけど」

「おばちゃん、昼間から飲んでんのかよ」

苦笑して青峰がいい、

「飲まいでか!って言われるよ」

も笑って返す。

「あ、そうか。お母さんなら勉強教えれるわ。試験勉強できるよ」

「それは勘弁」

の名案に青峰はげんなりとし、そんな表情を見ては笑った。

そのを見て青峰も仕方ないなという風に笑う。

「何食べたい?」

「腹にたまるやつ」

「今、おやつの時間じゃないの?!」

「んじゃ、何でもいいよ。お前の、何でもうめぇし」

そう言った青峰に満足そうに笑ったは「任せなさい」と胸を張った。









桜風
13.11.10


ブラウザバックでお戻りください