| ざあざあと雨が降る。 ふと視界に知っている人の姿が入り、黒子は足を速めた。 「さん」 声を掛けられた彼女は振り返る。 「あ、黒子くん」 彼女は足を止めて彼が追い付くのを待った。 「一緒に行きましょう」というと「いいよ」と彼女は頷く。 今日は、今度の大会で注目されているチームの練習試合があると聞き、見に行くことになった。 現地集合ということで、こうして黒子とはその道の途中で行きあったというわけだ。 「他校の練習試合を見に行くって珍しいんでしょ?」 が聞くと 「そうみたいですね」 と黒子が頷く。 そうは言っても、黒子もレギュラーになって日が浅く、帝光中学バスケットボール部がどういうスタンスなのかイマイチわかっていないところもある。特に、一軍に関しては。 のさしている傘は、結構落ち着いた色で、中学生にしては大人っぽいなと思った。 「なに?」 黒の子視線に気づいたが声をかける。 「え、あ。いえ」 「傘が地味?」 苦笑して彼女が言う。 「えーと...」 言葉を探す黒子に 「でもお気に入りなの」 と彼女が笑う。 「大人っぽいと思いました」 「お父さんは、もっとかわいらしい女の子っぽいピンクだとかそういうのがいいんじゃないかって勧めたんだけどね」 肩を竦めて彼女が言う。 「でも、さんはなんだか大人っぽい雰囲気がありますから」 「あら?老けてる?」 「いえ!そうはいってません」 黒子が慌てて否定するものだからは愉快そうに笑う。 足を進めていると雨脚は弱くなり、うっすら日が射したかとピタリと思うと、雨は上がった。 傘を閉じたが恨みがましそうに空を見上げた。 「荷物になるじゃない」と呟く。 しかし、その表情がパッと明るくなった。 何があるのだろう、と黒子がその視線を辿ると虹がかかっている。 「黒子くん、虹だよ!」 そう言ってが空を見上げたまま歩きだし、つんのめった。 「危ないですよ」 とっさに彼女の手を掴む。 「あ、ごめん...」 罰が悪そうに彼女が言う。 「さっきの、訂正ですね」 「何が?」 「さん、時々子供っぽいです」 黒子の指摘にはぐっと詰まる。 「いいじゃない。子供だもん」 そう返したに黒子は笑った。 ******** くすりと頭上で笑った気配がして「おとうさん?」と娘が声をかける。 「ああ、すみません」 黒子の休日はよくこうして娘と2人で買い物に出かける。 今日は雨のため、娘はピンクのかわいらしいレインコートにこれまたかわいらしいキャラクターものの長靴を履いている。 右手に傘、左手に買い物袋の黒子は手を繋げないので、彼女はシャツの裾をぎゅっと握っている。 「たのしそうだったよ?」 「そうですね、ちょっと思い出したんです」 「何を?」 きょとんとした娘の表情に頬を緩め、「さんの事です」という。 「おかあさん?」 「そうですよ」 降っていた雨が小雨にかわり、やがて空が晴れてきた。 黒子はさしていた傘を閉じて荷物を持っている手にそれを持ち、娘に向かって手を差し出す。 しかし、その手を取られることはなく、娘は駆けだした。 「おとうさん、虹だよ!」 走りながら振り返った彼女は空を指差している。 「あ!」と黒子は声を漏らして、駆けだした。 間一髪で娘の手を取り、黒子はため息を吐く。 「本当に、さんそっくりですね」 苦笑してそう言われて娘はこけそうになった状態にびっくりしたまま黒子を見上げた。 「さあ、家に帰ってさんに虹が見えた話をしましょう」 「うん!はやく家にかえっておかあさんといっしょに見よう?」 手を掴んで急かす娘に「はい」と返事した黒子は彼女の歩調に合わせて足を進めた。 |
桜風
13.11.20
ブラウザバックでお戻りください