| 部屋の時計を見て赤司はため息を吐いた。 が家を出ていって30分は経っている。 庭でさわさわと音がし始めた。雨が降り始めたのだ。 赤司は庭に出て干してある洗濯物を家の中に取り敢えず避難させ、そして、またため息を吐いた。 きっかけは些細なこと。たまにある強情の張り合いだ。 しかし、大抵はが折れる。だから、こんな、家出のようなことはないのだが、今回は彼女も折れられなかったらしい。 はさほど感情的にならない。 というよりも、理詰めでお互い話をするので感情的になる余地がない。 しかし、彼女がそれなりに感情的になるということを知らなかった赤司ではない。 高校時代、彼女は拗ねてバスケ部マネージャーというものをボイコットをしたことがあるというのを黒子から聞いたことがある。 「赤司君も、気遣ってあげてくださいよ」 と黒子に言われてその時には余計なお世話だと思わなくもなかった。 が... 赤司は何度目かのため息をつき、玄関に向かった。 傘を手にして、もう一本に手を伸ばしてそれは取らず、玄関を出た。 探すと言っても闇雲に探すしかない。 実家に帰ったかと思ったが、今日は休日で、もし、仮に彼女が実家の家に転がり込んで来たら、一応彼女の母親から連絡が来そうなものだ。 父親は...黙秘を貫こうとするだろうが。 取り敢えず、雨が降っているから屋内にでも避難しているだろう。 そう思って図書館に足を向けた。 図書館への道のりの途中に差し掛かった公園の前で足が止まる。 意識してそうしたのではなく、なんとなく、だ。 「君」 少し声を張って名を呼んでみる。 返事はないが、「ここだ」と何故か確信した。 公園の中で隠れられそうなところ、と考えて足を向けた遊具があった。 ドーム型のそれは中が空洞になっている。雪で作るかまくらみたいなもので、それと違うのは入口が複数あるところ。 「君」 腰をかがめて中を覗き込むと覗うようにこちらを見ている目と視線が合った。 「ここか」 ため息交じりに赤司が言う。 小さくなっては何も言わなかった。 顔を覗かせていた赤司がそこから消える。 (あー...) はがっかりしたが、それでも仕方ないとも思った。 何せ、相手の言い分を聞かずに自分の言い分だけ投げつけて家を出たのだ。 赤司が怒るのも無理のない話である。 「狭いな」 俯いているの目の前を見慣れた靴が通りずぎていった。 「あれ?」 「君は少し小さいからちょうどいいかもね」 少しだけ意地悪く笑って隣に座った赤司が言う。 「並みサイズよ!征十郎さんだって大きい方じゃないじゃない」 「それこそ、標準だよ」 少しむっとしたように赤司が返す。 「家出した気分はどうだい?」 「帰るタイミングというのは意外と難しいみたい」 肩を竦めてが言う。 「そうか。帰ってきてくれるのか」 赤司がポツリと呟いた。 「ん?」 「いいや。僕は謝る気はないよ。だけど君の意見を尊重する気はある」 赤司の言葉がよほど意外だったのか、は目を丸くして彼を見上げた。 その表情に赤司は苦笑する。 「君は、僕にとってトクベツだからね」 彼の言葉が懐かしくて、は笑った。 「何せ、生き別れの妹のような気がするんだもんね」 と昔彼がよく口にしていた言葉を言う。 赤司は片眉を上げて、そしてにやりと笑った。 の膝の上に置いてある彼女の手を取り、口づける。 「違うよ、僕の愛する妻だから、だよ」 彼女の目を見ていうと真っ赤になってフイと視線を逸らした。 クツクツと笑った赤司は、「帰ろう。やはりここは寒い」と言って入ってきたときと同じところから出る。 「ほら、君」 そう言って遊具の中のに手をさしのばした。 はそれを取ってゆっくりと外に出る。 「あれ、わたしの傘は?」 首を傾げて言う彼女に 「これから同じところに帰るのに、2つもいらないだろう?」 と言って赤司は傘を差し、空いている方の手で彼女の手を取る。 「わたしが帰らないって言ったらどうするつもりだったの?」 「さあ?君が言うとは思えないけどね」 肩を竦めて赤司が言う。 「さっき、言ってみればよかった」 「まあ、その時は君が帰りたくなるまであそこで一緒に小さくまるくなってたよ」 赤司の言葉には「そか」と嬉しそうに笑った。 「君は、僕のトクベツだからね」 そう言った赤司の言葉に「そか」とは嬉しそうに相槌を打ったのだった。 |
桜風
13.11.19
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