幸せへの色 1





 コートの端から端までパスをしながら走り、また最初のスタート位置に戻る。

それを10本というメニューをこなしている中、ふと体育館入口を見て「何やってんだ」と呆れたような口調で日向がこぼした。

マネージャーが、他チームのマネージャーの目隠しをしているのだ。


「ねえ、。これは一体どういうこと?」

「情報は簡単に開示しません」

「新学期早々の海常戦はもう見たけど?」

「それ以降に1年生が入ったからね」

の言葉になるほど、と桃井が納得した。

「まあ、いいわ。今日はに用事があったんだし。カントクさんは……」

「右手側」

がそういうと「カントクさん」と右手側を見て桃井が見えもしないリコに声をかけた。

「何? って、あんたたち、何やってんの?!」

リコが驚きの声を上げる。

「情報統制です」

が言うと「あ、そう」と呆れたような声を漏らす。

「それで?」

「ちょっと借ります」

「いいけど、あと10分で休憩だから、それまでには返してね」

リコが軽く返し、「はーい」と桃井が返事をして、そのままくるりと振り返る。

「じゃあ、行こうか」

そういっての手を引いて体育館を後にした。

「こらー! 足を止めるな!!」

リコが檄を飛ばし、練習の手を止めていた彼らの練習は再開された。


「それで?」

体育館から離れた校舎の非常階段に並んで座った。

「これ。昨日赤司君から。まだオフレコだって」

そういって携帯の画面を見せられた。

「あらあら、まあまあ」

が苦笑する。

桃井の携帯に表示されているのは、トーナメント表だ。

それが、来月頭に行われる世界ジュニア大会だということはすぐに察することができた。

そして、初戦の相手には苦笑したのだ。

「もうちょっと後のほうがドラマティックじゃない?」

「大ちゃんなら、『オレたちの手で仕留めれるんだからちょうどいいじゃねーか』って言いそうじゃない?」

と桃井が返した。

(確かに……)

は頷く。

「それで? これを見せるのはついででしょ?」

「察しの良い。それでね、スーツケース一緒に買いにいかない?」

「は?」

「いいでしょ?」

「……わたし、お父さんが昔使ってたのを使おうと思ってたし」

「えー、古いよ。おじさんのこと興味あるから調べてみたけど、結構前じゃない」

桃井に言われては肩を竦める。

「お母さんと出会う前だもん。かなり前に決まってるじゃない。大体20年位前?」

「だったら、もう古いよ」

「昔のもののほうが、頑丈でいいものだったりするのよ」

が返すと桃井は一瞬怯んだが

「おじさんの持ち物なら、が持つと大きすぎるでしょ」

と返す。

「大きさの規格は、今も20年前もさほど変わらないよ」

「せっかくとお揃い買えると思ったのに」

「……お揃いはともかく。じゃあ、買い物に付き合えばいいんでしょ?」

ため息交じりにが言うと「うん」と桃井が満足げに笑った。

(まったく……)

その後、桃井は待ち合わせの場所と時間を指定して、上機嫌に帰って行った。



体育館に戻ると、ちょうど休憩に入るためのリコのホイッスルが鳴るところだった。

「桃井さんは帰ったんですか?」

「うん」

黒子の問いにはうなずく。

「何の用事だったんだよ」

「もしかして、トーナメントが発表されたのか?」

火神と木吉が言う。

「招集があったら全部わかるよ」

がそう返すと、火神は少しだけむっとしたような表情を見せる。

はぐらかすような言い方をされるのは好きではない。

「そうですね。招集されてからでも、遅くありませんよね」

黒子が言う。

「お。黒子は招集される自信があるのか?」

木吉がからかうように言うと

「自信はありませんが、それでも、そうでありたいと思っていますから」

「……ま、今知らなくてもいずれ知ることになるってことだしな」

どうやら火神もトーナメントのことはそんなに気にならないようだった。

「ウチって結構自信家が多いですよね」

「いい事だろう?」

木吉にそういわれては苦笑した。

(この人も結構自信家なところがあるんだった)









桜風
17.11.11


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