幸せへの色 2





 桃井に指定された時間と場所。

その週の日曜の午後、駅前の時計の下では佇んでいた。

自分の腕時計を見ると「さつきのやつ、おせーよな」と隣に立っっている長身の男が言う。

「青峰くんはなんでいるの?」

が問う。

「さつきがうるせーから。んで、トーナメントはここに入ってんだろ?」との頭をぽんぽんと叩く。

「入ってるけど?」

「初戦どこだ? てか、あいつらとはいつ当たんだ?」

『あいつら』というのは、春の合宿で自分の幼馴染を危険な目に遭わせた彼らのことだ。

大会出場チームだと聞いて、皆はがぜんやる気だった。

(やっぱり、なんだかんだで幼馴染は大事なんだねぇ)

「おめーもだよ」

そんなことを不意に言われてはゆっくりと青峰を見上げた。

「ダチも、だ」

「わたし、何か言った?」

「言ってねーけど。自分を除外する癖やめろ」

「……『除外』って難しい言葉よく知ってるね」

どう反応していいかわからず、『からかう』を選択したに青峰は片眉をあげてため息を吐く。

「まあ、黄瀬も苦労すんだろうな」

「は?! な、なんで黄瀬くん?」

珍しくうろたえるに「はっ」と青峰が笑う。

「お前がらしくねーのも、おもしれーな」

「は?」

何を指して言っているのかわからず聞き返すが彼は応える気がないらしくニヤッと笑って返すだけだった。


黄瀬の苦労と聞いて色々と悩んでいると「」と声を掛けられて顔をあげる。

桃井がやってきていた。隣にはこれまた長身の高校生。

「なんでさつきは黄瀬と一緒なんだ?」

少しだけ眉間にしわを寄せて青峰が言う。

「荷物持ちならあいつで充分じゃねぇか」

「青峰くんはスーツケース持ってるの?」

「いや、持ってねぇけどそんな大荷物にならねぇだろ?」

「移動日も含めると一週間だよ? 着替えを考えたら大荷物にならないかな?」

「大ちゃん偉い!」

少し足早にやってきた桃井がの隣に立つ青峰を見上げて言う。

「うるせぇ」

「青峰っちが時間前とか、雪が降るんじゃないんスか?」

「うっせぇ!」

「黄瀬くんはどうしているの?」

が首を傾げて問うと「桃っちがちゃんと買い物に行くっていうからお供させてもらうように立候補したんスよ」

「きーちゃんもスーツケースどうって誘ってみたんだけど、持ってるっていうから」

「なんだよ、お前持ってるのかよ」

「ほら、オレ去年写真集だしたでしょ? その時、海外ロケもあって急いで買ったんスよ。いくつもあると邪魔だし、あれでいいやって思って」

「お前の写真集なんざ知らねぇ」

堀越マキちゃんの写真集にしか興味のない青峰が返す。

「ヒドッ!」

「まあまあ。じゃあ、きーちゃんは選び方を知ってるってことでアドバイスよろしく」

桃井が仕切り、歩き出す。


「態々神奈川から出てきたの?」

隣を歩く黄瀬を見上げてが問う。

「ん? あー、実は今日は部活は休養日でバイトが入ってたんスよ。午後からちゃんとデートが出来るように早い時間に入れてもらってたんスけどね、ちゃんに連絡をしようと思ったところに桃っちからお誘いがあったから乗ったんス」

にっと笑った。

「休養日なのに」

「だから、ちゃん摂取っス」

黄瀬が上機嫌にの手を取る。

「……何か、元気ない?」

何らかのリアクションがあると思っていたが反応しないのを不思議に思い、黄瀬は腰をかがめて彼女の顔を覗き込む。

「何でもないよ」

「……そう?」

何かあるはずなんだけどなーと思いながらとりあえずこの場では問うのをやめた。

先を歩く桃井が急かしてくるのだ。

「急ごう」とに言われて二人は少しだけ歩調を早めた。




辿りついたのは百貨店だった。

「ほら、大ちゃんもちゃんと選んで」

桃井が促すが「なあ、あの店員おっぱいでかいと思わないか?」など、黄瀬に声を掛けている。

「青峰っち、桃っちがめっちゃ睨んでるっスよ」

「あー? 面倒くせぇな。どれも一緒だろう」

「もう! 今年は修学旅行もあるんだから買った方がいいって」

「あー、そうか」

二年となった今年度に修学旅行なるものがある。

「桐皇は海外なんだ?」

が問うと「うん、香港だって。姉妹校があるとかなんとかって」と桃井が弾んだ声で返す。

「黄瀬くんのところは?」

「ハワイっスね」

「えー! 羨ましい」

黄瀬の答えに桃井が声を上げる。

「誠凛はどこなんだよ」

青峰が問う。

「二月に北海道でスキー」

「国内?」

「オレもそれでいいなー」

面倒くさそうに青峰が言う。

「がっかりしてる人は結構いるみたいだけど、海外だと移動に時間がかかったりするからもったいないよね」

の言葉に真顔になっている者が居た。

ちゃん」

「はい?」

「ナンパされたらこの際火神っちでも仕方ないから盾にして逃げるんスよ」

「はぁ……」

「あと、スキー場は三割増しっていうからね。絶対にオレの方がかっこいいからね」

「うん?」

桃井と青峰はあきれた表情で黄瀬を見ていた。相変わらずだ。

「きーちゃん、ほんっとうに……」

「学校行事で来てるガキをナンパするバカなんざいねぇよ」

「わかんないじゃないスかー」

は溜息を吐く。

「それで、黄瀬くん」

「何スか?」

「ハワイでナンパされたらあなたはどうするの?」

「え? 「オレには超かわいい彼女がいるんでノーセンキュー」って断るっスよ。安心して」

は額を抑えて俯く。

「お前も何を言わせてんだ」

青峰は先ほど以上に呆れた表情を浮かべてを見下ろした。

としてはお返しをしたつもりだったのだが、どうしたことかさらなるカウンターを食らってしまった。

「ねえ、きーちゃん。これはどうかな?」

気を取り直した桃井がスーツケースを選び始める。

「そうっスねー」

桃井に足を向けた黄瀬は改めて相談に乗り始めた。









桜風
17.11.12


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