| 「の弱点って、何?」 「態々言うと思う?」 マネージャー2人が何やら作業をしながら楽しげに会話をしている。 その様子はそれなりに心和むものだ。 話の内容が聞こえないから、楽しげに見える。 「虫とか」 「平気」 「えっホントに?」 「台所を預かる人間が『G』を苦手だと思ってる?」 真顔で言われて「それもそうか...」と桃井は納得した。 「そもそも。アレが出てこないように綺麗にしてるし」 の言葉で彼女の家を訪ねたときのことを思い出す。 物凄くきれいだった。ぴかぴかだった。 このバスケ部に入っていてあんなに台所をきれいにしているなんて凄いなと改めて思った。 そんな会話をしながら歩いているとが足を止めた。 「何?」 「や、なん、でも...ない..よ」 視線を一点集中で片言に言う。 はっきりって『そっか、何でもないのか』と納得するのが難しい。 彼女の視線の先には、クモの巣があった。結構立派なものである。 「って、虫は平気っていってたじゃない」 「クモは虫じゃなくて、節足動物!」 ムキになって返すに「ふーん」と意外とクモは平気な桃井はそのままスタスタと歩き出す。 「わたし、遠回りしてくから!」 そう言っては回れ右をして逃げていった。 「へー、意外」 遠ざかっていくの背中を見送った桃井は面白そうに呟いた。 部活が終わり、それぞれ帰り支度を始める。 は自転車置き場へと向かい、他の者たちは正門へと向かっていった。 先ほどと一緒に通りかかった所を通ると、クモの巣は健在である事に気付く。 「あれ、桃っちはクモが苦手なんスか?」 クモの巣を見ていた桃井に気付いた黄瀬が問う。 「ううん、私じゃなくて。意外だよね」 (え!ちゃんに苦手なものとかあったんスか?!) (おもしろそーじゃねぇか...) (今日はゴリゴリ君、何個買おうかなー...) (の弱点?...今度、あれはどうにかしておくか) (...青峰) (ろくなことを考えてませんね、青峰君) と、それぞれ思った。 その翌日の放課後、部活が始まる前に「」と青峰が呼ぶ。 「なに?」 てくてくと彼の元へと向かう。 「ほれっ」 そう言って投げてきたのはクモだった。 「きゃー!」と悲鳴を上げてすぐ近くに居た紫原の背後に隠れる。 「どーしたの、ちん」 紫原は体を捻り、自分の背後にしがみついているを見下ろした。 「やだやだやだやだ」とずっとブツブツ言っている。 「青峰っち!」 黄瀬が窘めるように彼の名を呼ぶ。 「なんだよー、ゴムのおもちゃじゃねぇか」 ゲラゲラと腹を抱えて笑いながら青峰が言う。 「ほんとだー。ほら、ちん」 青峰が投げたそれを拾って紫原がに見せた。 「いやー!」 そう言っては紫原から逃げて適当な大きさの人間にしがみついた。 適当な大きさの人間こと、緑間は面くらい、「大丈夫、なのだ..よ」と少し緊張しているように言う。普段「俺の嫁」とか言っているくせに、だ。 「え、何でオレじゃないんスか?」 を受け入れる気満々だった黄瀬が呆然と呟いた。 「紫原、それは何だ?」 冷え冷えとした声で赤司が問う。 「え、峰ちんが持ってきたおもちゃ」 紫原は、どうやら何かに巻き込まれたかもしれないということには気がついた。 「そうか。青峰、何のためにあれを持ってきたんだ?」 「え?あー...」 言い訳が思いつかない。 「わかった」 赤司はそう言ってを見た。 かなり怯えて緑間にしがみついている彼女の様子に、少し苛立たしげに舌打ちをした。 全体練習が終わった後、赤司は「青峰、紫原」と2人を呼ぶ。 「んだよ」 「なに?」 「青峰は、校庭30周。紫原はその半分の15周。行ってこい」 否とは言わせないと目が言っている。 「は!?外は雨だぞ??」 「オレもー?」 「早く行け」 赤司の言葉に従い、2人は雨の中、校庭を走る羽目に陥った。 「君」 「なに?」 落ち着きを取り戻したはいつも通りにマネージャーとして練習を手伝い、片づけを始めるところだった。 「今度何かあったら俺に言うんだよ」 「...ん?」 首を傾げは何のことかと悩む。 「わかったね」と念を押されて「...うん」と頷いた。 翌日、赤司の指揮の下、部室の大掃除が行われた。 彼曰く 「クモの子1匹、部室への侵入を許すな」 とのこと。 そして、毎週の清掃日も決まる。 「...赤司くんって意外と綺麗好きだったんだね」 がポツリと呟くと 「意外ってどういうことかな、君?」 といつの間にか背後に立っていた赤司が不敵な笑みと共に言う。 彼女は脱兎の如く逃げた。 |
桜風
12.9.29
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