| 「ちん」 練習の合間の休憩時間に紫原が声をかけてきた。 「なに?」 (首が痛い...) 身長差があるため、は紫原と話をするときには殆ど真上を見ることになる。 「知ってた?今日ね、はにいの日なんだって」 「はにい..ああ、8月21日の語呂合わせだ」 「そう」 紫原は期待に満ちた目でを見下ろす。 「えーと...まずさ、紫原くん。わたしと話をするときは膝を折ってくれると非常に助かる。首が痛い」 「えー、めんどいし。あ、わかった」 そう言って紫原はをだっこした。 「これなら、ちんの首が痛くないし、オレもめんどくない」 「...もういいや。んで?」 「はちみつたべたい」 「プーさんか!」 間髪入れずにが突っ込んだ。 「えー、ハニーの日なんだよ」 不満げに紫原が言う。 「...わかった。おーい、黄瀬くん」 少し離れたところで談笑している黄瀬を呼んだ。 「何スか。って紫原っち!」 抱っこされていると抱っこしている紫原。 (う、羨ましいっス!) 「何スか?」 黄瀬がを見上げた。 中々ない。は黄瀬を見下ろしている。 (わ、新鮮...) ニコニコと自分を見下ろしているを不思議そうに見上げ、紫原も同じくをじっと見た。 「ちん?」 「あ、そうそう。はい、紫原くんどうぞ。ハチミツ色した髪をしている少年をガブッと」 「やだ。まずそう」 「な、何の話っスか!」 酷いことを言われた黄瀬に問われてが説明をすると、 「つまりは、今日はオレにとってちゃんの日って事っスね!」 と彼は納得していた。 (それはどうだろう...) 「ハチミツっスかー。さすがのちゃんもハチミツを常備して歩いてるはずないスもんね...あ、じゃあちゃん。帰りになんか食べて帰るのはどうっスか?」 「は?」 が声を漏らす。 「いいね!」 紫原が弾んだ声で賛成した。 「お邪魔虫がいるっスけど、下校デートっスね!」 「お邪魔虫って、黄瀬ちんのこと?」 「紫原っちのことっス!」 「面白そうだね」 「わ、赤司っち!」 「赤ちん!!」 「2人とも、休憩は終わりだ」 赤司に言われて紫原はを降ろし、黄瀬とともに戻っていった。 「君、俺も行くよ」 赤司はそう宣言して、彼もまた戻っていく。 「え、わたし参加決定?」 (まあ、いいけど...) その日は、珍しく早く帰宅しなくてもいい日だった。 明日から遠征を控えているので、その日、一軍は自主練を禁止され、いつもよりは早く部活が終わった。 「んで、何処に行くんだよ」 (増えてる...) 青峰、緑間、黒子、そして (テツ君と下校デート!お邪魔虫がいるけど...) と、黄瀬と似たようなことを考えている桃井がいた。 「今日はハニーの日なんスよ」 黄瀬が言う。 「で?どーでもいいけど、腹に溜まるもん食おうぜ。ハンバーガー行こうぜ」 「それで、黄瀬。何処に行こうというのだよ」 緑間が問う。 「今回は、紫原っちイチオシのお店があるそうっスよ」 「ハチミツ食べたい」 「プーさんかよ」 紫原の言葉に青峰が突っ込む。 (わ、同じツッコミ...) はちょっとへこんだ。 紫原が案内したのは、意外なことにベルギーワッフルの専門店だった。 「紫原くんが食べるものってジャンル問わないんだね」 が言う。 ジャンクフードばかりだと思っていた。 「だって、ちん、ジャンクフード好きじゃないでしょ?オレ、好きだけど」 「まあ、あまりね。時々なら食べるけど」 「じゃあ、今度駄菓子屋巡りしよー」 「...いいけど」 「入るぞ」 赤司がそう言って店に入っていく。 は自転車を止めるために駐輪場に向かった。 遅れて店内に入ると、案内されるまでもなく、目立った集団が目に入ったので店員に断って彼らの元に向かう。 「さん、何にしますか」 黒子にメニュー表を渡されて悩んでいると「さっさと決めろよー」と青峰が言う。 暫く悩んで決めたは隣に座っている紫原に言付けて席を立つ。 「?」 「ウチに電話。一応ね。さっき、お店の中に公衆電話見つけたから」 そう言って席を離れて行った。 紫原が呪文のように大量に注文し、黒子と赤司は商品の名前を聞いただけで胸焼けを起こし始める。 「そういえば、ちゃんは携帯持たないっスね」 持てば毎日電話するのに、と思いながら黄瀬が呟く。 「君は、ああいうものはあまり好きではなさそうだからな」 赤司がいう。 が戻ってきたタイミングで注文したものが運ばれてきた。 「うわー...」 紫原の前にはタワーが出来ている。 「これ、全部いけるの?」 「30分以内に食べたらタダだし」 「は?何、そのギャンブル!!」 が声を上げる。 「じゃ、いきますよー」 店員がストップウォッチを持ってやってきた。 「いいよー」 「スタート!」 猛烈な勢いで紫原が皿の上を平らげていく。 「いただきまーす」 は手を合わせて自分の注文したチョコレートワッフルにナイフを入れる。 「そういえば、君は前の学校でも学校帰りに寄り道とかしたのかい?」 赤司が言う。 ワッフルには全く口をつけておらず、注文したオレンジジュースのみが減っている。 「...ううん、普通に帰宅部だったし」 少しだけ間を空けてが言った。 「帰宅部でも寄り道しよーって話にならない?」 ちゃっかり黒子の隣をキープできている桃井が問う。帰宅部のクラスメイトはそういうことしているみたいだし、自分もテスト期間中などで部活がないときは、友人達とちょっと寄り道をしたりしている。 「いや、友達いなかったからね」 「そうなんですか?」 意外だといった感じで黒子が問う。 は結構話し易いし面倒見もいい方だから、友人がたくさんいたのではないかと思うのだが... 「そうなんですよ」 が苦笑して肯定した。 「ごちそうさまー」 紫原はリミットの半分、15分程度で「ごちそうさま」となった。 「紫原の胃はブラックホールなのだよ」 呆れた表情を浮かべて緑間が言う。 「紫原、俺のも食べてくれ」 「やったー」 嬉しそうに赤司から皿を受け取る。黒子もそれに続き、紫原はさらに2つ食べることになった。 「ところで、紫原くん」 「なに?」 「アレだけハチミツ食べたいって言ってたのに、今食べたのにハニーワッフルあった?」 が問うた。 「あ、忘れてた」 「つか、マジバにしよーぜ。何か、この店は落ちつかねーし」 青峰が言う。 「そーだねー。マジバのハニーシェイクにする」 (((まだ入るのか...))) と赤司と緑間が心の中で突っ込む。 「それなら、僕はバニラシェイクです」 参戦する気満々の黒子に、桃井がそわそわしている。彼女も参戦したいようだ。 「...は、どうする?」 に聞いてきた。 彼女の心情を察しているは、 「8時くらいまでなら付き合えるよ」 と腕時計を見ながら言う。 「あ、じゃあオレも行くっスよ」 こうして、なし崩しで全員参加の二次会が始まるのだった。 |
桜風
12.8.21
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