夢で逢えたら





青峰が目の下に隈を作って唸っている。

今日は練習試合がある休日だ。

「あー、寝覚めわりぃ...」

彼は、唸るように呟いていた。

「大丈夫?」

とりあえず、が水を渡すと彼はそれを一気飲みした。

「サンキュ」

コップを戻して青峰が礼を言う。

「青峰君でわかる隈って相当ですよね」

黒子が言い、が頷いた。

「昨日、夢見が悪かったんだよ」

「夢見?」

が首を傾げると

「...赤司が出てきて」

と声を潜めて青峰が言う。

「はぁ、それは、それは...赤司くんに好かれているのか、それとも青峰くんが好きなのか。どの道、ラブラブ?」

が言うと

「気持ち悪ぃこというな!」

と怒られた。

肩を竦めるに「どうして、赤司君からっていう説が出るんですか?」と黒子が問う。

「ああ、昔の人。古文の解釈だったら、相手が自分のことを想っているから夢にまで出て会いに来てくれたっていう解釈らしいから。逆に、現代は相手のことを想いすぎて夢に出てきちゃったっていう話になるんじゃないかな?」

が答えると「そうですか」と黒子が言う。

「なに?誰か出てきたの?」

がからかうように言うと

「いえ、僕が思っていたのは、今さんが解説してくれた後者の方だったので」

と黒子が言う。

たちの会話をこっそり聞いていた桃井が突然上機嫌になった。

はちらりと彼女を振り返る。

(ああ、黒子くんが夢に出てきたのね...)

物凄く納得できた。

「...は、そういう夢を見ないのかよ」

青峰が問う。

「夢ってのは、要は起きているうちに収拾した情報の整理だからねぇ...起きてるうちに整理できたら見ないのかもね」

が言う。

「さっきの想ってるのがどうこうってのは...」

黒子が遠慮がちに問う。

「情緒的なものの話でしょ?わたしはあんまり興味ない。ああいうのって、自分に都合のいいように解釈してしまえばいいのよ。思うことは自由だから、凄く平和」

そう言ってはその場を離れていった。




******




「おはよ、黒子くん」

テスト期間中は部活が無い苦痛な日々が続く。

勿論、朝練もない。

いつもよりも随分遅い時間に登校したらに会った。

「おはようございます」

黒子も挨拶を返す。

てくてくと歩いて教室に向かった。

「今日...」

「ん?」

黒子が声を掛け、が首を傾げた。

「夢にさんが出てきました」

「あら。お邪魔しましたー」

は笑う。

「それで、中学のときに話したことを思い出しました」

「何だっけ?」

が首を傾げる。

「青峰君の夢に赤司君が出てきたとか言う話から始まったと思うんですけど。夢に出てきた人の、古典的解釈と現代的解釈の違いについて...」

「ああ。青峰くんの隈の...そうだ、その夢に出てきたさんは、何か持ってなかった?」

に言われて頑張って思い出す。

「クッキーを持っていたような...」

と黒子が呟く。

「正解!それは予知夢だったね」

そう言ってが笑った。

「放課後、教室でみんな勉強するんでしょ?火神くんの試験対策。差し入れに焼いてきたよ」

「それは、楽しみです」

「そうそう、わたしも黒子くんが夢に出てきたよ。奇遇だね。リスみたいにクッキーを頬張ってた。だから、今朝焼いてきたんだ」

そう言っては「じゃあ、放課後ね」と自分の教室へと向かっていった。

(『リスみたい』はともかく...)

「それは、きっと。僕がさんに逢いたいと思ったからですよ」

彼女の背に向かって呟き、黒子は教室のドアを潜る。

部活の無い放課後だが、今日は少しだけ楽しみにだった。









桜風
12.11.7


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