| 今朝、青峰が桃井の伝手でNBAで幻のゲームといわれている過去の試合の映像が手に入ったといったため、放課後、自主練を少し早めに切り上げて部室に戻った。 とはいえ、彼らは遅くまで残っている方で、もしかしたら一番遅いのではないだろうか。 部員数が100を超えるバスケ部は、他の者の動向なんて全く分からない。 シャワーを浴びて着替え、パイプ椅子を持ってテレビの前に陣取った。 「んじゃ、見ようぜー」 と言いながらデッキの電源を入れるとどうやらディスクが既に入っているようだった。 「あ?」 「何スかね」 (...嫌な予感しかないんですけど) 黒子は何だか嫌な予感しかしなかった。 「見てみよー」 紫原の言葉に頷いた青峰は取り敢えずそのまま再生ボタンを押す。 テレビに映された映像に唯一「おお〜」と声を漏らしたのは青峰だ。残りの5人には緊張が走った。 「は、早く止めるのだよ!」 と緑間が声を上げる。 入っていたディスクは、所謂アダルトビデオと呼ばれる18歳未満は見てはいけない設定の映像だ。 「結構マニアックなのな、これ」 そう言いながらも青峰はテレビをじっと見ている。 「誰のっスかね。満員電車痴漢ものって...しかも、女子高生設定スか」 「...青峰」 赤司が窘めるように名を呼ぶ。時間がもったいない。 「ちょっとだけだって。いいじゃねーか」 「ねえねえ、この女の子って、おっぱい大きいけどちんに似てない?」 爆弾を投下したバカがいた。 しかし、そのバカは自分が爆弾を投下したことに全く気付いていない。斜め前の赤司が放つ殺気が肌に刺さるようでかなり痛い思いをしながら緑間は「いいから消すのだよ」と促す。 「や、ちゃんのほうが断然可愛いっスよ!てか、この女優さん、下手っスねー。何スか、このわざとらしさ」 「あー、確かにちょっと萎えるなー。『演技』って感じだもんなー」 「けど、おっぱい大きいっスよ。青峰っちの好みじゃないんスか?」 「まあ、おっぱいは合格だけど、設定と顔が合ってねーだろ。女優と設定は合わせろって感じだな」 「うーん、そーだねー」 「確かに。普通にOL設定だったらまだ良かったかもっスね」 「そういや、緑間って普段どんなの見んだ?」 青峰によりふいに水を向けられて 「見ないのだよ!」 と緑間はムキになって返す。 「うへぇ、不健全...んじゃ、テツは?」 「青峰君、そろそろ赤司君が怒ると思いますよ。まあ、僕もいい加減にしてほしいと思ってますけど」 と青峰の質問を無視した黒子がちらりと赤司を見る。 盛大な溜息をついて赤司が立ち上がった。 「あれ、赤司。便所?はえーな」 「帰る。時間の無駄だ」 そう言って自分のロッカーからバッグを取り出してドアを開けようとしたところで勝手にドアが開いた。 勿論、部室のドアは自動ドアではない。 「あ、いたいた。青峰君、さっきコーチが...」 入ってきたのは桃井だった。 そして、間の悪いことに、映像は勿論流しっぱなしで、この作品で最も盛り上がるべきシーンが流れている。 彼女はテレビに映されているそんな映像が視界に入り、言葉を失った。 「コーチがどうしたって?」 気にせず青峰は問い返したが、 「サイッテー!サイテーサイテーサイテー!テツ君のばかー!」 そう言って桃井はダッシュしていなくなった。 「何で、僕がばかって言われなくちゃいけないんですか...」 そう言って腹を立てた黒子は青峰のわき腹にチョップを食らわせた。 「あー、鍵掛けるの忘れてたっスねー」 ガリガリと頭を掻きながら黄瀬が言う。 「そういうこっちゃないのだよ!」 緑間が言い、赤司は振り返って青峰を見た。 「青峰...」 「や、もー仕方ねーじゃん」 全く反省する素振りを見せない彼に赤司は溜息を吐いた。 翌日、朝練が終わって教室に入り、「おはよう」とに声をかけた。 彼女は「おはよ」とどこか素っ気なく言う。緑間は嫌な予感しかしなかった。 放課後の部活中もやはりよそよそしい。 「君」 全体練習が終わって赤司が声をかけた。 は振り返り、彼の肩をポンポンと叩きながらうんうんと頷く。 ちなみに、こんなことが出来るマネージャーは彼女しかいない。 不思議そうに赤司はを見下ろした。 「赤司くんと黒子くんは想像できなかったなー。緑間くんはギリ納得できなくもないけど」 彼女は腕組みをして頷く。 「何のことだ?」 「えーぶい」 赤司が息を飲んだ。近くにいた黒子も驚く。 「さん、それはどこで..って」 思い当たるのはただひとり。 「昨日、桃井が半泣きでウチに来てねー...ウチの両親は大爆笑。部室で見るのは勇者だって。ただねー、女子への配慮は要るでしょー」 の言葉に「待ってくれ、君」と赤司が言う。 「いやいや、いいから」 「待て」 赤司は、話を切り上げようとするの頬を両手で挟んで逃げないようにした。 「俺達は、NBAで幻のゲームといわれている過去の試合の映像が手に入ったと聞いて、それを見るために部室にいたんだ。デッキに元々あったディスクを再生したら、それだったんだ」 「けど、すぐに止めなかったんでしょ?」 痛い所をつかれた。 「おー、。赤司怒らせたのか?」 逃げられないように捕獲されているを見つけて青峰がからかいに来た。 「青峰」 底冷えする赤司の声に、青峰は、何だか自分は酷い目に合うような気がしてきた。 「今から校庭50周ランニングして来い」 「はあ?ごじゅうって...!!」 「誰のせいで、俺が今こんなに苦労していると思っているんだ」 静かに言う赤司の背中には反論を許さないと書いてある。 「あー、くそっ!」 青峰は観念して校庭に向かっていく。 「えーと...」 顔の角度を固定されたままが呟く。 「つまり、青峰が全面的に悪いんだ」 「...はあ」 (正直どうでもいい) 「どうでも良くない」 「わあ!」 言葉に出していたのかと悩んでいると「顔に出ていたよ」と赤司が指摘する。 「いいかい、君。少なくとも、俺と黒子、緑間は見たくて見ていたわけじゃない」 (これは、納得したことにしなきゃ離してくれないねー...) そう思ったは「はい」と言う。 やっと顔を解放されて首を動かした。少し窮屈だった。 その後、赤司は自分の名誉のためにも、桃井に対して全面的に青峰が悪いということを懇々と説明した。 彼女は「そうよね、テツ君がそんなわけないもんね!」とすぐに納得してくれたため、非常に助かったのだった。 |
桜風
12.9.30
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