ぼーいずとーく
〜テーマ「何処が好き?」〜





炎天下のロードワークは地獄である。

滝のような汗を流しつつ、いつものコースを走っていた。

帝光中学バスケットボール部は、部員数が100を超えるが、1軍から3軍まで別れている。練習は勿論それぞれで行われてメニューも違う。

そして、1軍は一番人数が少ない。

とはいえ、20人近くがぞろぞろと走るのだ。

その中でも体力や足の速さなどで定位置と言うものが出てくる。

黄瀬がふと振り返る。

遠くに黒子の姿が見える。

彼は体力、足の速さ共に今走っている位置で精一杯だ。

それでも諦めないところを黄瀬は尊敬していた。

「あー、黒ちんあんな後ろだ」

「それでもちゃんと最後まで走ってるだろーが」

青峰がいう。

「そうっスよ」

黄瀬も頷いた。


「そーいえばさー」

紫原がちらと黄瀬を見下ろした。

「何スか?」

「黄瀬ちんってウソツキだよね」

「は?!何スか突然」

「おー、黄瀬はウソツキだ」

「へ?!」

「んで、紫原。何でだ?」

「わかってないのに、乗っかるのやめて!!」

「五月蝿いぞ」

同じ位の位置で走っている緑間が窘める。

「昨日ね、クラスの女子が雑誌見ながらキャーキャー言ってたんだけど」

「あ、もう良い。黄瀬の自慢話が始まる」

青峰が止めて「そうだな」と緑間が頷く。

「あー、あれっスか」

黄瀬は納得したように頷いた。

今発売中の雑誌に載っているのだ。インタビューもされた。

「黄瀬ちんって、好きな女の子のタイプって『笑顔が可愛い子』って言ってたらしいよー。この間と話が違うー」

「おいおい、貧乳の間違いだろう。見たらわかるぜ」

そう言って青峰が笑う。

(青峰、にぶっ飛ばされるぞ...)

(青峰っち、ちゃんにぶっ飛ばされたら良いっスよ...)


****


「はっ!」

突然が声をあげて手を止めた。

そろそろ部員達がロードワークから戻ってくるため、その準備を一緒にしている桃井が眉間に皺を寄せた。

「なに、。どうしたの?」

「今、思いっきり青峰くんをぶん殴りたくなった...」

「は?」

「何か、本当に...なんで?」

が桃井を見た。

「私が知るわけ無いじゃない!」

「それもそうだ...」

は頷いて準備を再開した。


****


「そういえば、そのインタビューの中で『女の子の何処にぐっと来る?』って聞かれたんスけど...」

そう言って黄瀬は青峰を見てスルーして紫原を見上げた。

「おい、黄瀬。何でオレを無視したんだよ!」

ゴツンと叩かれて「痛いっスー」と涙目になる。

「だって、何て答えるか分かってる人に聞いても意味ないじゃないっスか!」

「んだと!お前の想像した答えとオレの答えが一緒だって限らねーだろ」

「じゃあ、一応聞いてみるっスけど...何処っスか」

面倒くさそうに黄瀬が問う。

「おっぱい!」

胸を張って青峰が答えた。

「ほらー!今、紫原っちと緑間っちも分かってた答えっスよ!」

「うん、そーだねー。てか、峰ちん、そのブレなさは凄いと思う」

「しかも、D以上な?」

「というか、こんな往来で声を張りすぎなのだよ」

緑間が若干足を速めた。

「チョイ待て緑間。前に行くんだったらその前に答えろ。って...そうか。緑間だって分かってるよな」

緑間は心外だというように眉間に皺を寄せて「どこだと言うのだよ」と問い返した。

「そりゃ、和服熟女って言えば、うなじだろ、うなじ」

「熟女とかそういう設定は要らないのだよ!」

「みどちんも大概声がでかいよ」

紫原に突っ込まれてぐっと詰まる。

「んで、熟女はともかく。どうなんスか」

「...否定しないのだよ」

「あー、じゃあ。ポニテとか好きなんスねー。夏万歳じゃないっスか」

うんうんと黄瀬が納得する。

「黄瀬ちんは?」

「手っスかねー。綺麗な動きとかあるじゃないスか。がさつじゃないの。あれ、いいっスよ」

「女子みたいなこと言うねー」

紫原が言う。

「そうなんスか?」

「うん。女子がそうやって盛り上がってたの見たことあるよ。『あの少しゴツゴツした指とか、手がいいよねー』て」

「へー...」

そういいながら黄瀬は自分の手を見た。

「で、紫原は?」

「んー、みどちんに近いけど、首筋かなー。噛み付きたくなる」

「ダメっスよ、紫原っち!女の子の体に傷を付けるとか!!」

(そういえば、やたらとちゃんに噛み付いてるっスね...)

赤司が注意してもこれは中々治らない彼のクセとなりつつある。


学校が見えてきた。

体育館に戻るとドリンクが配られる。

そして

「えい!」

青峰がに殴られた。

「おい、こら。テメー...」

「さっき、ロードワーク中にわたしに対して失礼な発言をしなかった?」

が問う。

質問の答えを聞く前に殴ってみたのだ。

「...言ってねー」

そっぽを向いて言う青峰に

「んじゃ、今の謝らないからー」

はそう言って選手達にドリンクを配っていく。

ちん、怖っ!」

紫原がぶるりと震えた。


遅れて黒子が到着した。

「お疲れっス」

そう言って黄瀬はタオルとドリンクを渡した。

「はい、テツ君。お疲れ様」

間を置くことなく桃井がやってきて黒子に冷たいドリンクを渡す。

「あり、がとう..ござい、ます」

黒子がそれを受け取り、水分補給をする。

10分程度の休憩があるので、その間に体力回復を図り、今度は体育館の中での練習となる。

「今日のメニューに変更だ」

赤司が声をかけてきた。彼はキャプテンであるが故に、いつも先頭を走っている。

赤司の話が一通り終わったところで、

「そういえば、さっき走ってるときに話してたんスけど」

と黄瀬が話を変えた。

「...余裕ですね」

恨めしげに黒子が言い、

「どうせお前たちのことだからロクでもない話だろう」

呆れたように赤司が言う。

「あ、んー...で、話してたんスけど。女の子の何処にぐっと来るっスか?まずは、赤司っち」

「...目だな」

赤司が答えた。ロクでもない話題だろうとか言いながら、答えた。

「目っスか」

顔のパーツに来るとは思っていなかった黄瀬は思わず問い返した。

「その人の意思が最も現れる箇所だからな」

「なるほどー...黒子っちは?」

「あ、じゃあ。笑顔で」

「『じゃあ』ってなんスか」

黄瀬が苦笑した。

「だって、惹かれるのはその人の一部ではなくて、全体で惹かれるんだと思うんです。だから、体のパーツとかよりも、表情の方がいいです」

「なるほど...」

(やっぱ、カッコイイっスねー)

黄瀬は益々黒子を尊敬したのだった。








桜風
12.11.30


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