| 「おお〜!」 少し先の人だかりの唸り声が空気の振動で伝わってくる。 「なに、あれ」 どうやら、緑間を中心にして先輩達が集まっているようだった。 「ああ、あいつじゃんけん負けなしなんだって」 そばにいた青峰がいう。 「へえ、凄いね」 あまり興味を持っていないようにが呟く。 「もじゃんけんして来いって」 「なんで」 「勝てたらすげーじゃん」 「凄いかもしれないけど、面倒くさい」 そう言って体育館の外に出る。 マネージャーは暇ではないのだ。帝光中学バスケ部には、のほかにマネージャーはいる。 しかし基本、情報収集に長けている桃井が外で情報収集をして、中での所謂『マネージャー業』はが行っている。適材適所だ。 体育館外の流しでボトルを洗っていると人が近付いてきた。 「あら、ありがとう」 先ほど先輩に囲まれていたため、ボトルを返せなかった緑間が態々持ってきてくれたのだ。 「いや」 そう言ってボトルを置いて緑間が回れ右をした。 「ね、緑間くん」 「何なのだ?」 振り返った彼に 「じゃんけんぽん」 と彼女がじゃんけんを仕掛けた。 「な..なんなのだ!」 結果を目にして緑間は驚愕の表情を浮かべる。 咄嗟のことでも手を出せば必ず勝っていた緑間が負けた。がグーで、緑間がチョキ。 緑間はじっとを見た。 「わたしも、じゃんけんで負けたことないの」 笑って彼女が言う。 「今日のかに座は、運勢最高だった」 「...ん?」 突然の緑間の言葉にが首を傾げる。 「は何座だ!」 その切羽詰っている様子が不思議で、だから余計に「秘密」と答えた。 楽しそうだったから。 「な..なんだと?!」 その驚きようがあまりにも大げさではまた笑う。 「緑間くんは占いが好きなの?」 「毎朝、『おは朝占い』を見ている」 「ああ、12星座の...へー。ラッキーアイテムとか気にする方?」 「持っている」 そう言っておもむろに出したのはバンダナ。しかも、ピンク。 「...今日のかに座のラッキーアイテムはピンクのバンダナってこと?」 「そうだ」 うむ、と頷く緑間には苦笑する。 (緑間くんにピンクって似合わないわ...まあ、装備していないだけマシかな?) 「そっか。いいコトあるといいね!」 そう言ってが笑う。 ズキンと胸が痛んだ。 (何だ、これは...) そして、ふと、今日のおは朝のかに座の運勢を思い出す。 『身近にいるあの人が運命の人』 よみがえったその言葉を受けて緑間は改めてを見た。 「運命の人」 「...はい?」 「今日のかに座は身近にいるあの人が運命の人なのだ」 「世の中に、かに座の人がどれだけいると思っているの?第一、緑間くんの身近な人ってもっとたくさんいるでしょう」 少しだけ呆れたようにが言った。 「それなら、もう少し検証してみよう」 彼はそう言って、その日は引き下がった。 その後、桃井から聞き出したらしいのプロフィールでなにやらマイナーな占いをしてみるとそれこそ運命の相手と言う結果が出たらしい。 「」 「はい?」 いつの間にか名前を呼び捨てにされている。 「俺はあれから検証を重ねた」 「検証って、運命の相手の?」 「そうだ。やはり、が俺の運命の相手だ」 「えーと、検証結果よりも過程を教えてくれる?」 が言うと心得た、という風に緑間が色々と取り出した。 「な、何それ」 「これまでの検証に使った占いの結果なのだよ」 「す、凄いね...」 緑間がひとつひとつ説明する。中には、昔廃れたという占いを緑間が今の世に甦らせたものすらあった。 それはそれで興味深く、は感心しながらその説明を聞いた。 「と、いうわけなのだよ」 全てを説明しきった緑間は何かひとつのことをやり遂げたという清々しい表情を浮かべていた。 「凄いね。緑間くんの将来は、歴史学者とかでもいいかもね」 「歴史学者?」 「昔の人、支配者層になればなるほど、そういう占いとか気にしていたでしょう?だから、占いを知れば歴史も分かるんじゃないのかしら?」 首を傾げてが言う。 「そうか...」 何だか緑間は納得した。 そして、話が途中だと言うことを思い出す。 「ということで、は俺の運命の相手と言うことだ」 「んー、百万歩譲って緑間くんにとっての運命の相手だったとして」 「かなり譲らないと認めてくれないのだな」 ちょっと傷ついた。 「わたしにとっても、果たしてそうかしら?」 が言う。 「二人のデータを合わせてこうなったんだ。だったら、これが二人の運命なのだよ」 そういった緑間に 「桃井の情報、ホントにあってるの?わたしが桃井を買収してるかもよ?」 とが言う。 「な..そ、そんなことは...」 「それに、例えば血液型とか、変わることがあるんですって」 「こ、今回のは血液型は関係ないものばかりだ。説明しただろう」 緑間が返してはふふふと笑う。 「さあ、どうなるかしら?」 「...だったら」 低く緑間が呟く。 「ん?」 首を傾げてが言う。 「だったら、俺はお前と言う運命を掴んでやる」 「...はい?!」 「人事を尽くして天命を待つ。まだ、人事を尽くしていない」 緑間は強い意志の籠もった瞳でのそれを見つめてそう言い、に背を向けて去っていった。 |
桜風
12.6.22
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