| その日、部活がなかった。 は街中を歩いていた。 目的はあったが、どれが良いのか分らず色んな店を梯子していたのだ。 「んー、どうしようか...」 こういうのに詳しい人は知っている。 しかし、今からメールを送っても返事がすぐにあるとは限らないし。 (何で昨日メールして聞いておかなかったんだろう...) 溜息をついて携帯をじっと眺める。 眺めたって何ひとつ状況は変わらないと言うのに... しかし、ここでやはり電話を選択しないあたり、自分は本当に頑固だと少しだけ呆れもした。 「?」 声を掛けられて彼女は振り返る。 「緑間くん!」 が弾んだ声で彼の名を呼ぶ。 呼ばれたほうは少し困惑していたが、彼女に向かって足を進め、彼女は自分に向かって駆けて来る。 「こんなところで会うとは。運命なのだよ」 「今はそれでいいよ!」 肯定されたことが今まで無かったので緑間はちょっと怯んだ。 「何かあったのか?困っているのだな」 至った結論がそれになるくらい、珍しい。 「うん、緑間くんに教えてもらいたいの」 そういった後にキョロキョロと周囲を見渡す。 「どうした?」 「や、高尾くんは?置いてったら拙いよね」 が言うと緑間は溜息を吐いた。 「毎日毎日一緒というわけではないのだよ」 「そうなの?じゃあ、お願いがあるんだけど...」 が申し訳なさそうに教えてもらいたい内容を口にした。 緑間はの利き手を手に取る。 「ああ、本当だな。爪が割れているのだよ」 「うん。ちょっと最近忙しくてねー」 苦笑してが返した。 昨日、部活中に爪が割れた。 剥げたのではないから、と思ったが意外と不便で何とかしたいと思っていた。 爪といえば緑間と思ったのだが、そのまま部活を続行して今朝になって緑間に聞こうと思っていたことを思い出した。 しかし、お店に入って話を聞けば分かるだろうと思って連絡を取らずに街中に出たはいいけど、意外といろんな種類があり困惑する一方だった。 「結構種類があってどれがいいのかわかんなくて...」 ネイルリペアを買おうと思ったが、たくさんありすぎて何がどう違ってどれがいいのかさっぱり分からなかったのだ。 パッケージの裏の説明を読んでも分かりにくいとはこれ如何に! 「そうか。俺が選んでもいいのか?」 「緑間くんが選んだのなら間違いなさそうだし」 が言うと、緑間は少し得意げに笑った。 「中学のときはそうでもなかっただろう」 薬局に向かいながらそう言う。 中学時代に爪が割れたとかそういう話は聞いた覚えがない。 「若さかしら?」 「そういくつも変わらないのだよ」 緑間は少し呆れたように言う。 店に入って緑間が真剣に選び始める。 「緑間くんが使っているのはどれ?」 に問われて緑間は陳列してある商品の中からひとつ取り出す。 「これなのだよ」 「じゃあ、これじゃダメなの?」 緑間が愛用しているそれを手にとってが彼を見上げる。 「ダメじゃないが...が普段こういうのをしないのは、料理をするからなのだろう?」 そう問われて彼女は頷く。 「だから、一応成分を確認しているところなのだよ。そこまで詳しいわけではないが、気にしたほうがいいのだろう?」 「わ、ありがとう」 礼を口にしてはじっと彼を見上げて待った。 首が痛くなった頃 「これがいいだろうな」 とひとつ渡された。 会計を済ませて店を後にする。 「ありがとう。凄く助かった」 緑間を見上げて礼を言うと 「大したことではないのだよ」 と彼は返す。 緑間の提案でひとまず塗り方も教えてもらうことにした。 テラスのあるカフェに入り、テラスで手入れをしてもらう。 は見て覚える。だから、実践して見せてもらえるのがいちばんなのだ。 「上手だね、さすが...」 「人のをするのは初めてなのだよ」 丁寧に、丁寧に手入れをしてくれる。 「そうなの?」 首を傾げて問うと「ああ」と彼は頷いた。 「そっかー。初めましてか」 暫くして「終わったぞ」と言われた。結局割れた爪以外も含め、両手全ての指の爪の手入れをしてもらった。 「わ、凄い。わたしの爪じゃないみたい」 「洗剤とか良く使うならやはり、最初からコーティングをしてやっていた方がいいとは思うのだよ。あと、乾くまで少し時間が掛かるから触らないようにするのだよ」 「はーい」 「誠凛は、今日は部活はないのか?」 の爪が乾くまでそのままカフェで過ごすことにした。 「うん、オフ。緑間くんは?」 「ウチもだな」 「そっかー。あ、じゃあ。ここまで出て来てたって事は、用事があったんじゃ...」 覗うようにが言うと 「ああ、バッシュを買いに来ていたのだよ」 と言う。 「わ、ごめん」 が慌てると 「いや、大丈夫だ。...、時間はあるか?」 と緑間が問う。 「うん、大丈夫」 「それなら、一緒に選んでほしいのだよ」 緑間に言われて「あんまり詳しくないよ」とが返す。 「それでいいのだよ」 「なら、お付き合いします。このお礼に」 はにこりと微笑んだ。 緑間がの爪を見て、「そろそろ大丈夫だろう」と言い、2人はカフェを後にして近くのデパートに入っているスポーツ用品店へと向かった。 |
桜風
12.9.15
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