| と赤司、黄瀬、緑間、黒子と桃井で一緒に歩いていると頭2つか3つ高い人物が見えた。 「ムッ君だ」 「目立っていいねー」 笑いながらが言う。 皆で彼の元へと向かってみた。 「紫原くん。わー、不機嫌」 「どうしたんですか?」 黒子が問うと 「アレが欲しいのに当たらないし」 と拗ねている。 「...まだ欲しいの?」 が問う。 彼が指差したのは、まいう棒100本セット。 この屋台の中では、結構高額の景品の部類に入る。 そして、ここは射的の屋台だった。 「緑間っち、行けないんスか?」 「シュートと射的は全然違うのだよ」 そう憮然と返す。 「紫原くん、それ、あと何発?」 が問うと 「2発」 と彼が答える。 「わたしにもさせて」 「いーよー」 かなり飽きても来ているらしい。 あっさりと紫原は射的のライフルもどきをに渡した。 「ちん、ありがとー」 が命中させたまいう棒100本セットを抱きかかえて満面の笑みで紫原が言う。 「お見事」 赤司がぱちぱちと拍手をする。 「ちゃん、凄いっス!」 心底感激したように黄瀬が纏わりつく。 「僕も、やってみたいです」 そう言って黒子が射的に挑戦し始める。 「ちん。はい、お礼にあげるし」 そう言って紫原がにまいう棒を差し出した。 「あー、ありがとう」 受け取ったはちょっと困った。 (これを持ち歩かなきゃ行けないのか...) 食べれば問題解決だが、あんまりしたくない。 「さん。それ、レアですよ」 射的の手を止めて黒子が言う。 「レア?」 「ラー油トマト味。限定品です」 「そうなの?」 紫原を見上げると 「そー。しかも、もう販売終了してるはず」 「そっか。ありがとう」 一応バッグの中に仕舞った。 家に帰ったら粉々になっている可能性は否定できないが、手に持って歩くのは避けたい。 そして、射的の屋台でも勝負が始まった。 「黄瀬君、邪魔をしないでください」 「黒子っち!今、邪魔をしたのは緑間っちっスよ!」 「元々黄瀬は邪魔なのだよ」 「酷いっス!」 射的屋台の周囲には人だかりが出来始めていた。 「黄瀬くんは目立つねぇ」 「きーちゃん、そういう自覚ないから」 「あるでしょう」 「じゃあ、『気にしない』から」 「それなら納得。桃井は何か買わないの?」 少し寂しそうに彼らを眺めていた桃井にが声を掛ける。 「んー、まあ...」 困ったように桃井が笑った。 「絆創膏、持ってるよ」 の言葉に桃井は驚いて彼女を見る。 「桃井って下駄をあんまり履かないんだね」 「は履くの?」 「夏になったら玄関には出す。近所は下駄を突っかけて歩くから」 とりあえず、ここで手当てなんてできるはずもなく、そして、白熱している男子の勝負に水を差すのはどうかと思って誰にも声をかけずに2人は人ごみを避けて屋台から少し離れた場所に向かった。 途中でハンカチを濡らして何とか腰掛けることが出来そうな場所を見つけた。 「わたしのハンカチ濡らしちゃったから、桃井、自分のハンカチお尻の下に敷いたら?」 「うん」 頷いた桃井は巾着からハンカチを取り出し、それの上に腰を下ろした。 はその前に跪き、鼻緒で傷がついた桃井の足の手当てを始める。 「へー、お嬢様とメイドってかー?」 知らない男の声が背後から降ってきた。 は無視をした。 「おい」 不機嫌に声をかけてくる男をやっぱり無視して桃井の手当てを続ける。 手当てをされている桃井は「」と慌てている。 「無視すんな」 そう言って男は結んでいるの髪をグイと引っ張った。 「!」 が思わず尻餅をつくと、男はゲラゲラと笑う。 「オイ、こいつらに何の用だ?」 「大ちゃん!」 男の肩を掴んで振り向かせたのは青峰だった。桃井はほっとしたのか、うっかり昔の呼び名で彼を呼ぶ。 「さん、大丈夫ですか?」 「...うん、ありがとう」 黒子が差し出した手を取っては一度立ち上がり、お尻をはたく。 「オレのちゃんの髪を引っ張るとか、良い度胸っスね」 笑顔で黄瀬が言い 「覚悟するのだよ」 と緑間が低く言った。 「ちん、怪我はない?」 2mを超える巨漢がのっそり出てくると男は慌てて逃げていった。 「君」 赤司が冷えた声で名を呼ぶ。 「はあい?」 振り返ったは引きつった笑顔を浮かべている。 「何故俺達の誰かに声をかけない」 「あー、いや。ちょっと抜けるだけだったし...」 「まったく。黄瀬が気付いたから良かったものを...」 「そうっスよ!」 射的で景品を当てた黄瀬が嬉しくて振り返ったがが居なかった。周囲を見渡すと桃井も居ない。 「赤司っち、ちゃんはどこっスか?」 「は?君..がいない」 トイレかと思って少し待ってみたが、戻ってこない。 「探したほうが良くないですか?」 黒子の提案で探すことにした。 「もしかしたら...」 そう言って黒子が話したのは、慣れない下駄で桃井が鼻緒で擦れて足を痛めているのかもしれないという可能性だった。 「そうだな、少し歩きにくそうにしていた..気がしないでもない」 緑間が納得した。 「ちゃんがそれに気付いて、手当てをしているってことっスか?」 「どーしたのー?」 「君と桃井がいない」 紫原の問いには赤司が答える。 「さっき、2人であっちに行ってたし」 そう言って指差した先は屋台の明かりから外れた場所だった。 慌てて向かうと案の定だった。 ちなみに、青峰とはここで偶々合流しただけだと言う。 「今日の花火はやめておこう」 赤司が言う。 「え!」 桃井が慌てる。自分のせいで皆の楽しみを奪うのはいやだと思ったのだ。 「大丈夫だよ!」 「けど、随分と痛そうに歩いていますよ」 「仕方ねぇな。ほら」 そう言って青峰が片膝をついて桃井に背を向けた。負ぶされと言うのだ。 「だ、大丈夫!ほんとに!!」 「まあまあ、桃井。夏は今日だけじゃないんだし。来年もあるでしょ」 が言うと「けど...」と桃井は納得できない様子だ。 「桃井、今日はお開きだ」 赤司が宣言した。 つまりは、決定事項と言うことだ。 桃井は大人しく青峰に負ぶさった。 「重っ!さつき、太っただろ」 「失礼ね!!」 2人は気の置けない関係ならではの喧嘩をしながら、その場を去っていった。 「じゃ、ちゃん。駅まで送るっス」 「俺も行くのだよ」 「何で邪魔するんスか!」 「お前こそ邪魔なのだよ!!」 賑やかな2人を眺めては肩を竦める。 「じゃあ、また明日ね」 黒子と赤司と紫原に手を振って 「ほら、駅まで送ってくれるんでしょ」 と2人の子供のような口げんかを止めてスタスタと歩いていく。 「ちゃん!」 「待つのだよ...!」 黄瀬と緑間は彼女のあとを追いかけていった。 |
桜風
12.8.1
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