僕たちの夏休み 1





今年の夏合宿では、山の中の大学の施設を借りて行われている。

昨年は別の場所だったらしい。

今年しか知らないと黄瀬、そして黒子はどっちの施設の方が良かったのかと少し悩んだ。


合宿、即ち泊まりがけ。

夏休み前に日程を聞いて家で話をすると、偶然にも、父親の出張が入っていない時期だったので参加することが出来た。

選手はともかく、一応マネージャーは家庭の事情を優先させてくれる。家の都合で欠席も考えていたは少し安心した。

合宿は1週間。ちなみに、1軍、2軍、3軍とある帝光中学バスケ部はそれぞれで合宿を組む。

勿論、1軍の合宿の方が施設が充実しているし、交通も学校側で用意したバスでの移動となる。

予定表を渡されては「長いなぁ」と呟いた。

合宿の間に3試合練習試合が組んであった。合宿先の地元の中学と高校の名前が書いてる。

「ここって強いの?」

帝光中学バスケ部が態々練習試合を組んだ学校なので弱いことはないだろう。

「弱くはないね」

隣に座っていた赤司に問うと簡潔に言われた。

(そうだろうとは思ってたけど...)

「東京予選の何回戦レベル?」

聞き直すと

「まあ、準々決勝くらいか...」

と答えてくれた。

基本的にトーナメントは運にも左右されるから逆に答えにくいのかもしれない。

「全国レベル?」

「今年は逃しているよ、2日目の対戦校は」

つまり、高校は全国に行った学校なのだ。

「へー...」

(凄いんだろうなー...)

そんな学校と練習試合を組んだのだ。

全国区の高校が相手にしても良いと思うようなチームなのだ。

ひとまず、昼休憩を利用しての合宿に関するミーティングは終わった。


会議室を後にして、午後の練習のために体育館に向かう。窓の外のグラウンドでは野球部元気に白球を追いかけていた。

「去年はどうだったんスか?」

黄瀬が隣を歩く青峰に聞いた。

「あー?去年は、海だったなー。練習試合は..3試合だったか?」

「そうね」

桃井が頷く。

「で、今度は山。来年は川かな?」

が言うと

「それもいいっスね!」

と黄瀬が笑う。

黒子は、昨年からバスケ部に所属していたが、1軍の合宿参加は今回が初めてだ。1軍に上がったのは夏が終わってからのことだったので、仕方ない。

「じゃあ、オレと黒子っちとちゃんが1軍合宿デビューっスね」

何だか少し嬉しそうに黄瀬が言う。

「そうですね」

「バスかー」

が合宿の予定表を見ながら言う。

は乗り物が苦手なのか?」

緑間が問うと

「苦手じゃないけど。車って眠くなるから。電車はそうでもないんだけどね。寝ても大丈夫?」

振り返って桃井に問うと

「マネージャーはバスの中でミーティング。無理ね」

と言われた。

「うへぇ...」

変な声を漏らしただったが、それでもどこかこの合宿を楽しみにしているように見えた。



合宿当日の早朝、学校に集合となっている。

は近くまで車で親に送ってもらっていた。学校までではないのは、母親が大騒ぎしそうな気がしたから。

決して、親を見られて恥ずかしいとかいう思春期の恥じらいから来る行動ではない。

バスは既に学校に着いており、は荷物を預けてバスの外に立っていた。

「あれ、入らないんスか?」

今しがたやってきた黄瀬が問う。

「うん、バスの中で座ったら寝ちゃうから」

「オレの肩、貸すっスよ。ちゃんの寝顔、可愛いだろうなー」

「ううん、要らない」

にこりと微笑んでが返す。

「つれないっスねー」

苦笑して黄瀬はバスに乗り込んだ。

「おはよう、

声をかけられた。

「おはよう。そういえば、合宿中のラッキーアイテムってどうするの?」

おは朝占いは見られるかもしれないが、肝心のラッキーアイテムが手に入るとは限らない。

「抜かりはないのだよ」

そう言って肩から掛けているバッグを開けた。

「ねえ、必要なものはちゃんと入ってるの?」

何かごちゃごちゃと色々と入っている。色んなパターンを考えたのだろうが...

「ああ、大丈夫だ」

「そっか」

「ああ」と満足げに頷いた緑間は荷物を預けてバスに乗り込んだ。

ちん。眠いー」

「降ろして」

「抱き枕ー」

を持ち上げた紫原はそのままを抱きしめる。

を離すのだよ!」

「紫原っち!羨ましすぎるっス!」

バスの窓を開けて緑間と黄瀬が声を上げる。

ちん。乗らないの?」

「あーうん。バスの座席に座ると眠くなるからね」

「じゃあ、オレの膝の上に座ればいいよ」

そう言いながら紫原はを小脇に抱えてバスの入り口に向かう。

「紫原」

冷ややかな声音が届いた。

「おはよ」

小脇に抱えられたままは彼に挨拶をする。

「あー、赤ちん。おはよー」

君を降ろせ」

「えー...」

不満そうにしながらも紫原はをそっと降ろした。

「ありがとう」

は赤司に礼を言う。

「ああ」

頷いて赤司は荷物を預け、「いくぞ、紫原」と声をかけてバスに乗り込んだ。

さん。おはようございます。乗らないんですか?」

静かに声をかけられて正直ちょっとだけビックリした。

「うん」

本日何度目になるか分からない理由を黒子にも話す。

「そんなに効果てき面なんですか?」

「うん。だから、わたしは基本バスに乗っても座らない」

苦笑していうに、「今日もバスの中で寝られたら良かったですね」と黒子が言う。

「仕方ないよ。皆が練習中に寝られないのと一緒」とが笑い、「あ、でも。黒子くんはたまに寝てるけよね」と付け足す。

「あれは、休憩中です」

少しムキになって返した黒子には「ごめん、ごめん」と笑った。


やがて、集合時間ギリギリで桃井と青峰がやってくる。

桃井は青峰に盛大に文句を言っていた。

「やー、幼馴染設定。面倒だねー」

「設定って何よ!」

ぷうと膨れて桃井が拗ねた。

「ごめんごめん」

は軽く謝った。









桜風
12.8.22


ブラウザバックでお戻りください