| 5日目は、通常練習のみで、明日が今回の合宿の最後の練習試合となる。 午前の練習が終わり、数時間の休憩が入る。 今日からが作った野菜ジュースを作ったドリンクサーバーがお目見えした。 早速材料が調達してこられたのだ。 選手達には好評で、そのサーバーのドリンクが最初になくなった。 休憩の間は皆は何をして過ごしても自由だ。ただし、休憩なので、練習は禁じられている。 近くに小川が流れていると聞いて、後にキセキの世代と呼ばれるようになる彼らは、そちらに向かった。 「わー、峰ちん。すごーい」 バケツの中を覗き込んで紫原が言う。 「おう、こういうの結構得意なんだぜ」 「正しい夏休みって感じですね」 バケツの中で蠢いているアメリカザリガニを見ながら黒子が呟く。 「中2男子として正しいかどうかは別のような気がするのだよ」 溜息混じりに緑間が言うと 「何だよ、悔しいのか?」 となぜか挑発的に言われた。 羨ましくないので、悔しいという気持ちは起きない。 緑間は肩を竦めた。 「てか、そのスルメいかってどうやって手に入れたんスか?」 ザリガニの餌はおつまみ用のスルメいかのようで、紐の先には随分水でふやけてしまったスルメいかが括りつけられている。 「あ?コーチのパクって来たに決まってんだろ?」 しれっと言う。 「それって、見つかったらペナルティとか...」 「確実にそうだろうな」 溜息混じりに赤司が言う。 「え、オレたち巻き込まれてるんスか?」 「ばーか。見つかんなきゃ良いんだろう?」 青峰の言葉に嘆息吐いて赤司は林の中に消えていった。 「ねえねえ、黒ちん。コレ食べれるのかな?」 ザリガニ釣りに飽きたらしい青峰も林の中に消えていった。残されたバケツの中を覗き込みながら紫原が言う。 「え、どうでしょう...」 黒子は困った。 「食べない方が良いと思うんスけど...」 「やめとけ。腹を壊すぞ」 しかし、紫原は興味があるらしくバケツの取っ手に手をかけた。 「ちんに聞いてみるー!」 そう言ってバケツを持って宿泊棟へと向かっていった。 「ちん!」 マネージャーも少し休憩しても良いといわれて日陰で涼んでいるとバケツを持った大男が駆けて来た。 「なにー?」 「これ、食べれる?」 そう言ってバケツの中を見せた。 「うわ、うじゃうじゃいるね」 「峰ちんが釣った。食べれる?」 「タンクトップに短パンという、正しい夏休みのアウトドア的な服装だったよね。満喫してるねー」 「ねえ食べれる?」 紫原の問いに答えずに独り言を呟いているに紫原はなおも問う。 「これって、たぶんアメリカザリガニでしょ?アメリカだと食べられているらしいからたぶん、食べることはできるだろうけど。そこらの小川のを釣ったんだったら寄生虫だとかもあるだろうし、なにより、日本人の口に合わないから食べられていないみたいだからやめたほうがいいよ」 が言うと紫原はしょんぼりとした。 「伊勢えびみたいかなって思ったのに...」 「紫原くんは、お菓子じゃなくても好きなんだねぇ」 が言うと 「うん。ちんのご飯好きだし」 と返された。 どうやら作る人が限定されているらしい。は苦笑して「ありがとう」と返し、「それ、返しておいで」とバケツを指差した。 「そーだねー。食べらんないならもういらなーい」 そう言って紫原はゆっくりと、元来た道を戻っていった。 「きゃー!」と悲鳴が上がった。 そろそろ休憩時間が終わる頃のことだった。 が足を向けると桃井が黒子の背後に隠れている。 「お、。見てみろよ」 「うわ、キモッ」 虫かごがどうしてあるのかも疑問だが、かご一杯に蝉が詰めこまれている。 「さっき、全部手で取ったんだぜ」 「ふーん。離してあげなよ」 「えー、せっかく掴まえたんだぜ」 「想像してください。15名の定員のエレベーターに青峰くんクラスのでっかい人が30人くらいぎゅうぎゅうに押し込められている。ど?」 「すげー窮屈」 の言いたいことは青峰に伝わり、彼は虫かごの蓋を外した。 蝉が一斉に飛び立つ。 「やっぱキモイね」 迫力はあるが、積極的に見たい光景でもない。できれば、もう二度と見たくないかも... 「で、青峰くんは、桃井に今のを見せびらかして嫌われたの?」 「つーか、さつきはビビリすぎだろ」 「や、フツーにキモかったよ」 が返すと「そーかー?」と少し納得いかないように青峰は呟いた。 「そういえば、赤司くんは?そろそろ時間でしょ?」 青峰を見て言うと「知らね」と言う。 黄瀬と緑間、紫原は結構前に戻ってきていた。 黒子を見ると「林の方へいったのは見たんですけど...」と返された。 探しに行って行き違いになるのも、とが悩んでいると「君」と声を掛けられる。 振り返ると赤司で口の中に何かを放り込まれた。 「え、何..ラズベリー」 「ああ、林の中にあったから」 「わー、美味しい」 「じゃあ、残りの全部あげるよ」 そう言ってラズベリーを包んでいるタオルを渡す。 「ありがとう」 「どうしたしまして。行くぞ、青峰、黒子」 赤司はの礼に軽く返して2人を連れて体育館へと向かった。 「桃井、桃井。これ、美味しいよ」 弾んだ声で言うにお裾分けをもらった桃井も「美味しい!」と声を上げる。 少し離れたところからきゃっきゃと2人が「美味しい」を繰り返して口にしているのが聞こえてくる。 (なんか、負けた気分になるのは何でだ...?!) 青峰が首を傾げる。 黒子がそっと赤司の顔を覗きこんでみると彼はどこか満足げだった。 |
桜風
12.8.22
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