僕たちの夏休み 4 −緑間編−





自分の引いたくじを持ってはキョロキョロと周囲を見渡す。

まだパートナーを組んでいない人を探しているのだ。最初から探すと当たる人が多くなって効率が良くないので大体の人がパートナーを見つけてから探し始めた。

か」

背後から声がして振り返ると緑間がの手元のくじを背後から覗き込んでいた。

「緑間君くんが、パートナーってこと?」

「ああ。運命なのだよ」

緑間は自分の引いたくじをに見せた後、眼鏡のブリッジに指を当てた。


暫くしてと緑間の順番が回ってきた。

「では、行こう」

テクテクと歩き出した緑間は若干早足だった。

「待ってよ」

そう言ってが手を取る。

「な...ッ!」

ビクリと緑間が反応した。

(あれ?もしかして...)

「苦手?」

「そ、そんなことはないのだよ。だが、そうだな。歩く速度を合わせるために、手を繋いで歩くのは効率的だな」

(はいはい、苦手なのね...)

「今回、おどかす役の人たちがいないらしいから普通に暗い道を歩いていれば良いんだし。大丈夫なんじゃない?」

がそう言って緑間を見上げる。

だが、彼はまっすぐ前を向いたまま口を閉ざしている。

ガサッと茂みから音がする。

の手を握る緑間の手に力が籠もる。

「痛いよ」

「あ、ああ。すまない」

にゃーと猫が出てきた。

「猫..だと?」

「あ、可愛い」

が膝を折って「ちちち」と呼んでみた。

しかし、猫はふいとそっぽを向いていなくなる。

「うーん、振られてしまった」

は立ち上がって苦笑いを浮かべる。

「これだから猫は嫌いなのだよ」

「あれ?緑間くんって犬派?」

「というか、猫が嫌いなのだよ。言うことを聞かないし、気侭だし」

「そう?」

首を傾げて言うに「は、猫派なのか?」と緑間が問う。

「んー、どっちだろう。どっちも可愛いけど、猫って構わなくてもいいってイメージがあるからねー。楽そうじゃない?」

そう言って歩き始める。

今度は緑間から彼女の手を取る。

それに対しては特に反発しなかった。

だって、先ほどの緑間はかなり怖がっていたから。仕方ない。自分よりも随分と大きいが、怖いものはきっと怖いのだ。

黙って歩いていると、風で木々の葉の擦れる音とか、他のチームの笑い声が聞こえてそのたびに緑間がビクッとしているのでは話を始める。

ビクッとなるたびに手をぎゅっと握られてちょっと痛いのだ。

同じクラスと言うこともあり、話題には困らない。

課題のこととか、部活のこと。

今度ある全中の大会の模様などを聞きながらゴールを目指す。

「次勝ったら..2連覇?もっと?」

「いや、2連覇になるな」

「緑間くんは、去年も出たの?」

「ああ。黒子はまだあがってきていなかったが、俺と赤司、紫原と青峰はもうスタメンだったからな」

「へー。えっと、前にやめた灰崎くんも?」

「...ああ、スタメンだったな」

「ふーん、1年生だけでスタメン構成って、先輩達も面白くなかっただろうね」

が言う。

「仕方ない。実力がある者がユニフォームを着るのがウチの伝統でもある。そういえば、は前の学校ではどんな生活をしていたんだ?」

不意に聞かれては眉を上げ、そして苦笑する。

「フツー」

「そうか。部活動はしていなかったのか?」

「してないよ」

簡潔に答えられ、とうとう緑間は口を閉ざす。あまり聞かない方良かったのかもしれないと思ったのだ。


沈黙しながら暫く歩いていると「あ、」とが呟く。

「ゴールが見えたよ」

彼女が指差した先が眩しい。

「ゆっくりでいい」

駆け出そうとしたを緑間が制す。

あそこに着いたらこの手を離さなくてはいけなくなる。

「ゆっくりでいいのだよ」

「別にいいけど...」

は首を傾げ、緑間ののんびりした歩調に合わせて歩いた。









桜風
12.8.25


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